参考資料

1.エネルギー事情

(1)長期エネルギー供給見通し
 新長期経済計画によれば、わが国将来の長期的エネルギー供給見通しは、付表1のごとくである。

(2)長期電力需給見通し
 新長期経済計画に関する経済審議会答申書のエネルギー部会報告書によればわが国の長期的電力需給の見通しは付表2のごとくである。

付表1 一次エネルギー供給(試算)


付表2 電力需給表

2.原子力発電の意義

(1)発電原価

(イ)原子力発電と新鋭火力発電の原価比較
 初期段階におけるコールダーホール改良型の発電原価を、新鋭の火力発電所(比較の対象としては石炭だきおよび最新鋭の重油専焼のものをとる。)とならべて試算すると、付表3のとおりである。

付表3 原子力発電所および新鋭火力発電所の発電原価

 すなわち、新鋭火力の燃料単価がカロリー当り1円ないし1円20銭の場合、石炭だき発電所では3円85銭ないし4円35銭、重油専焼発電所では3円50銭ないし4円であるので、初期の段階においても原子力発電は原価的にみて、新鋭火力発電に拮抗し得るものとみられる。

(ロ)将来の原子力発電原価の低下傾向
 原子力発電の場合、一般的にみて将来の技術水準の向上、量産化等により、発電原価低減の余地が大きい。今後予想される原子力発電原価低減の要因としては

 i .建設費の低下ならびに耐用年数延長にともなう資本費の低下
 ii.核燃料価格の低下ならびに比出力、熱効率および燃焼率の向上による燃料費の低下
 iii.使用済燃料の再処理およびプルトニウム利用技術の進展にともなうプルトニウム・クレジットの発電原価への折込み等があげられよう。
 ここでは上記諸要因を付表4ならびに付図1、付図2および付図3のごとく予測し将来の原子力発電原価の計算を行った。
 その結果は、付表5のとおりで37年度4.40〜4.75円/kWh,40年度3.89〜4.20円/kWh, 45年度3.23〜3.49円/kWh, 50年度2.77〜2.99円/kWhとなる。



付図1 コールダーホール改良型原子力発電所総建設費
(単位:千円/kW、送電端出力)

付図2 コールダーホール改良型原子力発電所燃料関係諸元


付図3 コールダーホール改良型原子力発電所経費関係諸元


付表4 コールダーホール改良型原子力発電所総建設費 (単位:千円/kW)


(2)所要外貨
 原子力発電所と重油専焼の火力発電所について、その建設および運転に要する外貨を比較すれば、原子力発電所においては建設費および初期装荷燃料費として建設の完成までに要する外貨は多額であるけれども、運転費として要する外貨は核燃料を精鉱の形で輸入するならば、輸入原油を精製して燃料とする重油専焼の火力発電所におけるよりも少額にとどまると考えられる。付表7は原子力発電を実施することの意義を所要外貨の節約という点から示したもので、原子力発電所と重油専焼火力発電所が昭和45年度に建設されるものとして、その建設および運転に要する外貨を試算したものである。試算にあたって前提とした事項は、つぎのごとくである。

付表5 コールダーホール改良型原子力発電所発電原価


 発電所の建設費所要外貨はその建設期間にわたって各年均等に調達し、原子力発電所の初期装荷燃料所要外貨は完成の前年に調達するものとして試算すれば、原子力発電所が運転開始の第1年度までに要する外貨は累計約35億円で、重

付表6 所要外貨の試算のための前提条件

付表7 原子力発電、重油専焼火力発電所要外貨比較

油専焼火力発電所では約11億円となる。その後毎年度の運転にともなって必要となる外貨は原子力発電所の方が少ないために、運転開始後第4年度までの累計では原子力発電所の所要外貨は約44億円、火力発電所の所要外貨は約51億円となり、原子力発電所の方が外貨を節約し得る結果となる。
 前述のごとく、原子力発電所は火力発電所に比して建設完了までに設備資金として要する外貨の量が大きいので、これに関しては金利を考慮する方がより妥当であろう。この考えに従って金利をも加えて試算した結果は同じく付表7に示されている。すなわち、金利を考慮しても運転開始後第4年度までの累計において原子力発電所の所要外貨は約52億円、火力発電所の所要外貨は約51億円とほぼ同一の水準となり、その後は毎年の消耗燃料費において原子力発電の方が大幅に外貨を節約しうるので、耐用年数の全期間にわたって累計すれば、原子力発電所の所要外貨は約122億円(年平均5.1億円)であるのに対し、火力発電所においては約331億円(年平均13.2億円)の外貨を要することとなる。

3.国産化の見通し
 コールダーホール改良型発電所を建設するに当って、初期の昭和37〜40年度では、その国内製作と輸入との比率は付表8のごとくであると想定する。この場合、原子力発電所の各部分の構成比率はJukes(アトム1957年5月号)の想定値を参照した。
 表中、原子炉、熱交換器の部分には黒鉛、セメント等を含むので、この分は国産化するものとし、これを見込み、輸入依存度を約40%とする。
 さらに、新鋭火力発電設備の国産化の実績と関連企業の見解等を参照して、輸入依存度が昭和41,42年度には15%、昭和43年度以降では7%に低下するものとする。新鋭火力発電設備の国産化では最終的には5%程度の輸入依存度になるものと一応考えられているが、原子力発電所に必要な制御装置等の国産化は困難な点もあるので、原子力発電所の場合には輸入依存度は7%程度以下に低下するのはむずかしいと考えられる。

付表8 コールダーホール改良型原子力発電所の国内製作の比率


4.核燃料

(1)核燃料の需給量の試算

(イ) 需要量試算のための前提条件
 発電炉は天然ウラン黒鉛型とし、初期装荷量は送電端出力150MWあたり天然ウランで250トンとし、将来の熱効率と比出力の向上等によってこの量は200トンに低下するものとする。その年度別の推移は付表9に示すとおりとする。

付表9 初期装荷量


 取替量は送電端出力150MWに対しその設備利用率80%の場合、1年間に天然ウラン54トンである。将来熱効率と燃焼率(MWD/トン)の向上等によってこの量は150MW当り42トンに低下するものとする。その年度別の推移は付表10に示すとおりとする。
 また、初期装荷燃料は発電炉の運転を開始する前年に必要なものとし、取替燃料は運転の翌年から必要なものとする。さらに各年度における開発量をIの(3)において述べたところに準じて、付表11によるものと仮定した。

付表10 取替燃料


付表11 開発規模
(試算のための想定値をしめす)

(ロ) 需要量の試算
 以上の前提条件にもとづき、36〜50年度中の年度別核燃料需要量を試算すれば、付表12のとおりとなる。

(ハ) 供給量の試算
 核燃料の需要量は国内産出鉱石、輸入精鉱および輸入燃料要素によってまかなうものとし、輸入燃料要素は国内の製錬加工部門等の生産体制が整備されるまで、すなわち第1号機、第2号機の発電炉に必要な初期装荷燃料は燃料要素の形で輸入するものとする。
 国内産出鉱石は昭和39年度金属ウラン換算150トンと推定するが、それ以後の産出量は現段階では推定が困難であるため便宜上150トンとし、46年度以降200トンとする。国内産出鉱石以外は全部輸入精鉱に依存するものとして供給の内訳を示すと付表13のとおりとなる。

付表12 核燃料需要量

付表13 核燃料供給量


付表14 動力試験炉の燃料所要量


(2)動力試験炉および研究炉の燃料所要量の算定
 動力試験炉および研究炉に必要な核燃料を付表14および付表15に示す。

 付表15  研究炉の燃料所要量

5.所要資金

(1)原子力発電所建設費

 コールダーホール改良型原子力発電所の建設単価(送電端)は付図1に示すように年度の経過とともに漸減し、昭和37年度150〜170千円/kW、昭和45年度118〜133千円/kW、昭和50年度103〜117千円/kWと低下するものと想定する。このうち上限の建設単価により開発規模に対応して算出される原子力発電所の総建設費は付表19に示すごとくに試算される。すなわち国内資金による調達は昭和37年度における約160億円から45年度約860億円、50年度約990億円と増加していき、他方外資による調達は昭和37年度に約80億円を要するが、以後は国産化の進捗による輸入比率の低下が見込まれるため、開発規模の拡大にもかかわらず昭和45年度ならびに50年度にそれぞれ約60億円となる。
 なお、原子力発電所の建設所要資金は建設期間たる4年度間において各年度均等に調達し、建設利息は国内資金によってみるものと仮定した。

(2)初期装荷燃料に要する資金
 原子力発電所の初期装荷燃料にみあって必要と思われる資金を試算すれば付表19のごとくである。すなわち国内産鉱石代と製錬加工費とをふくむ国内資金は昭和40年度に約60億円、45〜50の各年度にはほぼ120〜140億円程度を要するが核燃料需給量の試算に示したごとく、国内のウラン鉱石の供給には多くを見込み得ない結果、精鉱の輸入が増大し、そのため外資もかなり増加し国内資金とほぼ同程度となって、昭和40年度に約40億円、45〜50の各年度にはほぼ100〜120億円程度に達すると思われる。

(3)関連設備投資
 コールダーホール改良型原子力発電所の設備は在来設備によって製造される面が多く、このため、ここでは減速材としての黒鉛製造設備、核燃料製造設備および重電機部門の所要投資額について考えた。

(イ)核燃料製造設備
 核燃料製造設備については、核燃料の項に述べたとおり、国内鉱石からの抽出設備、精鉱からの精製還元設備、精製還元を経たものの燃料要素への加工設備の3種類にわけて、それぞれ必要と思われる設備投資額を試算した。この結果は付表16に示すとおりである。
 すなわち核燃料製造設備の投資額として昭和50年度までに抽出設備約20億円、精製設備約450億円、加工設備約190億円計約660億円が必要であると思われる。
 なお、初期装荷燃料は原子力発電所完成の1年前に必要となり、核燃料の抽出、精製および加工設備は核燃料を必要とする年度より1年前に建設を完了し、その設備資金はさらにその1年前に調達するものとした。
 また昭和34年度末までに完成する設備は中間試験規模のものである。


付表16 核燃料製造設備所要資金

(ロ) 黒鉛製造設備
 黒鉛の年次別製造計画ならびにその製造設備投資額は付表17のとおりである。
 なお、算定の基礎としては、黒鉛製品所要量2,000トン/150MWとし、黒鉛素材1.7トンより黒鉛製品1トンが製造されるものとして想定した。黒鉛製品は着工後2年目に、素材は着工した年度内に準備し、投資はさらに1年前に必要なものとしている。
 付表17によれば黒鉛製造設備としては46年度までに素材で21,000トンの規模のものが必要で、その設備投資額は、製造すなわち石油コークスから黒鉛素材までの設備に対して約60億円、加工すなわち黒鉛素材から原子炉用黒鉛製品までの設備に約10億円、計約70億円に達する。

付表17 黒鉛製造設備所要資金

(ハ) 重電機部門設備
 コールダーホール型原子力発電所を国産化していく場合には、国内の重電機製造部門において、工業化の各種研究および工業生産のために投資が必要となる。昭和43年度までに93%の国産化比率を達成し前記のごときテンポで原子力発電所を開発することを仮定して所要投資額を推定してみると付表18に示すごとく工業化研究設備には昭和31〜41年度間に約30億円、製造設備には昭和34〜44年度に約20億円、合計約50億円の資金を要するものと思われる。なお原子力発電所の建設が昭和50年度以降においてもなだらかなテンポで行われるかぎり、工業生産のための投資は昭和45年度以降では特に必要としないものと想定している。

(4)原子力発電所開発の総所要資金
 発電所建設費、核燃料所要資金および関連設備投資額を合計した総所要設備資金を年度別にみると付表19のとおりで、昭和40年度約590億円、45年度約1,250億円、50年度約1,290億円となり、50年度までの累計は約1兆4,030億円である。国内資金に関してみれば40年度約500億円、45年度約1,090億円、50年度約1,115億円のテンポで進み、累計では約1兆1,950億円で全体のほぼ85%を占めている。外資は昭和50年度までに累計約2,080億円を必要とする。

付表18 重電機部門設備投資額

(イ)火力発電所開発の総所要資金との比較
 火力発電所の建設単価は重油専焼のプラントを考えて63千円/kW(送電端)とし、4−(1)付表11に示した原子力発電の開発規模に見合う火力の所要建設費ならびに関連設備に要する設備資金を算出すると付表20のごとくである。すなわち、昭和50年度までに必要となる設備資金の累計は、石油精製設備を除いた試算において約6,200億円となる。外資は発電所建設費の5%程度をみこむと、累計約250億円になり、全体の4%にすぎない。
 以上の試算の結果にもとづいて、原子力発電と火力発電の所要設備資金とを比較すると付表21のごとくである。すなわち昭和50年度までの所要設備資金の累計額を比較すると原子力発電の所要資金は火力発電に比較して約2.3倍の金額に達するものと試算される。また、各年度における所要設備資金を比較すれば付表22のごとく、昭和45年度では原子力発電が火力発電に比較し740億円だけ多くを必要とし、原子力発電の建設費がより低下した昭和50年度ではこの差額は586億円に低下するものと思われる。

付表19 原子力発電所要資金

付表20 火力発電所要設備資金

付表21 原子力発電と火力発電の所要
設備資金比較−(1)

付表22 原子力発電と火力発電の所要
設備資金比較−(2)

(ロ) 国民総生産との比較
 付表23は昭和26年度から31年度までにおける国民総生産と電気事業者の投下した総工事資金および全産業の設備資金の推移を示している。表によれば、最近の数年間において全産業の設備投資額は国民総生産に対しておおむね18%の額に相当し、電力総工事資金は国民総生産に対し約1.7%、全産業設備投資に対して約8%前後に当っている。
 新長期経済計画によれば、昭和31〜37年度における国民総生産の延びは年率6.5%で、37年度の国民総生産は13兆440億円に達するとみこまれている。その後の国民総生産の年平均増加率を38〜40年度6.5%、41〜45年度5.0%、46〜50年度4.0%とかりに考えるならば、各年度の国民総生産は40年度に約15兆8千億円、45年度に約20兆1千億円、50年度に約24兆5千億円程度の水準に達することと思われる。
 上記のごとく、昭和26〜31年度における全産業設備投資額は国民総生産に対しおおむね18%の安定せる比率を維持しているが、このような関係が今後も全産業設備投資額と国民総生産との間にみられるという仮定をおくならば、将来の各年度における全産業設備投資額は、昭和37年度に約2兆3千億円、40年度に約2兆8千億円、45年度に約3兆6千億円、50年度に約4兆4千億円にのぼることとなる。
 他方火力発電に代って原子力発電を開発することによって所要設備資金の増加する額は前掲の付表22のごとくであるが、以上のような推論からこれを検討すれば、昭和40、45、50の各年度において国民総生産の0.2〜0.3%程度に相当し、全産業設備投資の1.3〜2.0%に相当する。この比率は付表23に示される最近までの実績に比較すればかなり低い数値であるということができる。

付表23 電気事業における総工事資金の現状


6.外貨収支

(1)原子力発電所要外貨
 原子力発電所の正味建設費のうち外貨によって支払う割合、すなわち輸入比率はIIの(2)第2表で述べたところにより、付表24のごとく想定し、また正味建設単価は付図1の建設単価から用地費を差し引き、耐震費を加え輸送費を考慮して付表25による。
 外貨の支払方法は、建設期間の4年間にわたって1/4ずつ均等に支払うものとする。
 核燃料は輸入燃料要素および輸入精鉱を考えその支払方法は入着ベースとする。

付表24 建設費輸入比率の傾向

付表25 正味建設単価の傾向


(イ) 37年度および38年度に完成する2基分の初期装荷のみは燃料要素の形で全量を輸入するものとし、その単価は2,000万円/天然ウラントンとする。

(ロ)第3号機以降の初期装荷燃料および第1号機以降に要する取替燃料は輸入精鉱ならびに国内産出鉱によってまかなうこととし、その価格は金属ウランに換算してトン当り980万円とする。

(ハ)なお、黒鉛の原料であるオイルコークスを全量輸入するとすれば、その外貨負担は黒鉛製品トン当り84ドル、すなわち150MW当り16.8万ドルになるが、建設費外貨、燃料費外貨に比較して1%程度であるので省略した。

 以上の諸条件にもとづき、原子力発電の各年度の開発量は4付表11に示すものをとって建設費のうち外貨の占める部分および核燃料の所要外貨を算出し、これを加えたものを原子力発電所要外貨とする。その内訳は付表26(a)に示すとおりである。

(2)原子力発電と火力発電の所要外貨の比較

(イ)火力発電所要外貨

 本計画の開発規模を火力発電に置き換えた場合の所要外貨として、発電機器と燃料重油の所要外貨を次の前提によって算出した。その結果が付表26の(b)である。

(i)重油専焼火力発電所の建設単価は63千円/kW(送電端)、輸入比率は5%とする。支払方法は建設期間3年にわたって1/3ずつ均等に支払う。

(ii)重油については、全量原油で輸入し国内精製するものと考え、重油1kl当りの外貨所要額を15ドルとし、入着ベースで支払う。消費量は熱効率39%、所内電力5%、発熱量10,000kcal/lとして0.232l/kWhとする。

 原子力、火力のいずれの場合も年設備利用率は完成年度に40%、それ以降は80%とする。

(ロ) 所要外貨の比較
 上に算定した原子力発電の所要外貨と火力発電の所要外貨を比較するとその傾向は付表26のごとくになる。

付表26 原子力発電と火力発電の外貨所要量の比較

訂正とおことわり

訂正とおことわり

 先月号(第2巻第12号)において紹介した核原料物質又は核燃料物質の製錬の事業に関する規則(昭和32年12月9日公布総理府通商産業省令第1号)ならびに核燃料物質の加工の事業に関する規則(昭和32年12月9日公布総理府令第82号)中において次のようなあやまりがありましたので、訂正します。

                 誤      正
58ページ右下から5行目  副本5通  副本6通
59ページ右上から8行目 開始後3年後 開始後3年間

 なおこれらと同じく12月9日公布された原子炉の設置、運転等に関する規則(昭和32年12月9日公布総理府令第83号)および核燃料物質の使用等に関する規則(昭和32年12月9日公布総理府令第84号)は本号に掲載する予定でしたが、記事輻湊につき来月号に回すことにしました。御了承願います。