在外公館長から外務大臣あてによせられた報告のうち、国際協力局を通じて原子力局に通報された海外における原子力関係情報のうちから下記のものをえらんで紹介する。(なお以下はすべて在英西大使からのもので、前項「英国ウインドスケール原子炉の事故について」は本来ならばここに入れられるべきものであるが、分量の都合上特に別項としたものである。 ウインドスケール原子炉の事故に関する英国政府の白書発表について 1.英国政府は今般ウインドスケール原子炉の事故に関する白書を発表したが、同白書は原子力担当たるマクミラン総理のメモランダム、事故調査委員会の報告中事故原因および事故影響処理に関する事項、ならびに本件に関する医学研究会議(Medical Research Council)の調査報告等を収録している。 2.原因調査の結果は大要次のとおりである。
ウインドスケール原子炉の事故に関する英国議会の討論ぶり ウインドスケール原子炉の事故に関し、10月29日英議会において労働党ゲイッケル党首およびF・アンダーソン議員らとマクミラン首相との間に討論が行われたが、その要旨は次のとおりである。 1. 28日ペニー委員長からプラウデン原子力公社総裁へ報告され、29日「マ」首相のもとに提出された事故原因調査委員会の調査報告書内容を説明されたいとの要請に対しては、当然詳細な報告を行う考えであるが、まだ内容を十分に咀嚼する暇がないので次期国会早々行いたい旨を表明した。(次期国会は11月5日開会の予定) 2. ペニー卿は公社にあまりにも近い人物であるから、たとい機密保持上の問題はあるにせよ、公社と直接関係を持たないしかも十分な科学技術知識を有する人物による独自の調査委員会を設ける意向はないかとの質問に対しては、ペニー卿は事故が発生したウインドスケール炉と直接関係を有せず、しかも今回の調査に最も通した人物と信ずる旨答えた。 3. これに対し、労働党側から、ウインドスケール周辺の住民はペニー委員会の調査に十分な信頼をおいておらず、機密保持の問題もさることながら国民の信頼感を保持する方がより大切ではないかと述べ、繰り返し独自の調査委員会設置方を要求したところ、「マ」首相は、公衆の保健への影響についてはペニー委員会とは別個に医学研究会議(Medical Research Council)をして調査せしめることとしたと発言し、これこそ独自の調査と考えてよいのではないかと述べた。 4. 今回と同様の事故がコールダーホール炉ないし電力公社用の炉において発生するおそれはないかとの問に対しては、一般的にいってそういうおそれはないと思う(“I think broadly speaking thatis the case”)と答えた。 5. これに関連し、さらにウインドスケール事故が電力公社の原子炉では発生し得ないことを断言(Categorical assurance)できないかと迫ったのに対し、この点については次回に詳細な報告を行う際、留意して答えたいと述べた。 英、伊原子炉購入契約に関する新聞報道について 11月20日付タイムズはイタリアの英国型原子力発電所購入に関し、次の趣旨の記事を掲げている。 1.イタリアは本年2月以来英国と原子力発電所購入に関し交渉を行っていたが、最近イタリア AGIP Nuclear(Ente Nazionale Idrocarburi の子会社として設立された公社)と英 Nnclear Power Plant Co.との間に契約が成立し近く公表の見込である。 2.契約内容の詳細は不明であるが、購入原子炉は出力20万kWのもの1基、価格約2千万ポンドで、型式はNPPCがブラッドウェルに建設中のものと同様であるが、改良により1基出力が15万キロワットから20万キロワットに増加している。 3.NPPCとAGIPとの協力は7年間有効とされ、原子力公社は使用済燃料の化学処理を担当するほか、本契約交渉のディスカッションにも参加し技術的アドヴァイスを行った模様である。 なお、この問題に関し、11月21日付各紙はさらに詳細な報道を掲げており、以上に付加すべき点として次の報告がよせられている。 1. 20日公表されたのはエニ総裁と NPPC会長との間の交換書簡であり、正式の購入契約は来年6月30日までに調印すべきことを表明している。 2. この契約は原子炉建設に必要な設計技術知識、科学データの供与を主として、できるだけ多くの部分をイタリア国内で調達する趣旨とされ、総価格2,500万ないし3,000万ポンド中、英国内で製造されるべきhardwareは約1,000万ポンドと見られている。 3. 購入契約発効上必要な政府間協定およびAEA との間の燃料供給契約は未成立であり、公社ピアソン事務総長は協定交渉のため24日ローマ向け出発、両3日同地に滞在の趣である。 |