昭和31年度核原料資源調査について

 本資料は、通商産業省地質調査所が作成した昭和31年度の核原料資源調査についての報告書であって、去る8月23日開催の第34回原子力委員会定例会議において提出され、報告了承を得たものである。さきに紹介した原子燃料公社の昭和31年度業務報告書(本誌Vol.2No.8 57ページ参照)とあわせて、わが国の核原料資源の昭和31年度における調査開発の概要を知ることができる。

昭和31年度核原料資源調査について

             昭和32.8.9
        通商産業省地質調査所

1. 要旨

(1)当所は、昭和29年度以来、わが国内におけるウラン、トリウム等放射性鉱物鉱床に対する調査を行っているが、昭和31年度から全国的、組織的な調査を関係機関と連絡協力のもとに推進し、これに必要な各種の基礎研究を行っている。

(2)当所の担当する調査は、放射性鉱物鉱床についてのいわば基礎的調査であって、企業化を目的とした開発調査の範ちゅうには属さぬものである。

(3)組織的調査は、現在、適用しうるあらゆる調査方法によって、かつ、一定の順序のもとに、国内の放射性鉱物鉱床の既存可能地域−主として花崗岩質岩地域約200,000km2−につき早急に実態把握を行おうとするものである。おもな調査方法は次のようなものである。

2.昭和31年度調査とその成果概要

(1)31年度の調査は、東北および中国地方にその重点がおかれたが、主要調査地につき各種調査を約89,894千円の経費をもって実施した。その概況は第1表のとおりである。

第1表 昭和31年度調査概況

(2)第1表に示した調査地に関する野外調査の主要成果を第2表に示すが、これら野外調査の結果を検討整理するための室内作業も多岐にわたり精力的に実施されている。

(イ)鉱物分離・同定作業
 放射性鉱物の単体分離を行い、あるいは鉱石を研磨して、放射能強度の測定、顕微鏡観察、オートラジオグラフィー等を実施し、鉱物の決定と鉱石の品位の決定等が行われた。これらの作業に必要な器材としては、分離用のアイソダイナミックセパレーター(1台)、磁選器(1台)、スーパーパソナー(1台)等が整備され、鉱物検鏡同定用としてグリーノ双眼顕微鏡・X線螢光分析装置(付属品)、万能投影機等が購入使用されている。

(ロ)化学分析試験
 鉱石の化学分析は約2,000箇が処理され、その他各種の試験が行われた。これらに用いられる器具として整備された主要なものは、デンシトメーター(1式)、大型分光器(1台)、微量・直示天秤(各1台)、試料粉砕(1台)等である。

(ハ)物理測定・試験
 鉱石、鉱物の物理的特性を明らかにし、放射能強度と地質との関連性、放射性鉱物の物理分析等に関する各種試験が行われた。
 これらの試験はエアボーン、カーボーンならびに検層の調査技術の向上、確立および基礎研究の発展に資している。
 整備したおもな器材としては、顕微鏡写受装置(1台)、シンクロスコープ(1台)、簡易検層機(1台、外業にも使用)等が挙げられる。

 以上の作業、試験は確立された作業方法によって系統的・流れ作業的に行われていると同時に、不十分な業務に対する試験方法の確立等についての研究、また、野外調査の技術に関する基礎研究もあわせて実施された。

第2表  調査の主要成果一覧表





昭和31年度核原料物質調査地一覧図