原子力委員会参与会

第 9 回

日 時 昭和32年10月24日(木)午後2時〜5時

場 所 東京会館別館

出席者

 稲生、大屋、倉田、瀬藤、伏見、松根、山県、安川、岡野、高橋、大来、石野 各参与
 藤岡、有沢、兼重 各委員
 吉田政務次官、篠原事務次官、佐々木原子力局長、法貴局次長、島村政策課長、
 荒木調査課長 ほか担当官
 日本原子力研究所 駒形理事長、嵯峨根副理事長、久布白理事
 原子燃料公社 原副理事長、 関係省庁 経済企画庁藤井計画官、
 文部省村 上情報室長、通産省宮本物資調整課長

配布資料

1.発電用原子炉開発のための長期計画に対する意見
2.同上(日本原子力産業会議原子動力委員会)
3.同上(経済企画庁)
4.第8回参与会議事録

議事内容

 藤岡委員:本日は前回お約束しておいたように、発電用原子炉開発のための長期計画(案)について御意見をうかがう予定であるが、計画(案)を全部読むのは省略させていただき、まずつくるに至った経緯について原子力局長や担当官から御説明申しあげる。つぎに配布資料によって今までいただいた御意見についてお話しし御意見をお聞きしたい。

 佐々木局長:長期計画は昨年の9月に一応内定したが、石川調査団あるいは産業会議の使節団が欧米視察から帰国すればその後に改訂した長期計画をつくろうという考えであった。その後、受入体制等具体的な問題がクローズアップされ、応用の問題が実際に適用されることになったが、はっきりした目標をたてて実用段階に入った方がよいと考えてこのたび長期計画(案)をつくったものである。これは「発電用原子炉開発のための・・・・・・」とあるように、発電用原子炉の開発を中心として考慮し、アイソトープ、原子力船に関する研究開発も大きな問題といえるが、それらは今回の計画が固まってから考える。

 原子炉の開発計画が今回の長期計画の骨子で、研究炉、実用発電炉の国産化および動力試験炉を通じて増殖炉を完成するという三本立てになっている。燃料需給、所要資金、外貨等の問題は原子炉の開発計画を達成するという前提で考えた。

 本文に入ると、まず、エネルギー需給の問題から割り出して将来原子力発電をどの程度やるべきかを考えた。経済企画庁では原子力発電の計画としてA、B2案を考えており、当分はそのままで考えていかれるのではないかと思われるが、こちらではかりにA案をとればどうなるかを考えてみた。そうすると昭和45年度に315万kW、50年度に705万kWというのが一応の目標になる。この数字がでた理由は、将来のエネルギー需要に対する供給の方法を考え、また石炭や重油による発電に比較して原子力発電は外貨収支、原価の上で有利であるという点を考え、原子力発電をぜひやるべきだとしたものである。

 昭和45年度までに約300万kWというのは一応の目標と考えているが、その場合、原子炉型式をどう考えていくべきかということについては、コールダーホール型が中心で濃縮ウラン型のものはあまり問題としていないような書き方なので、これでよいのかという意見が出されている。長期計画(案)には明らかには出していないが、昭和45年度までの300万kWは、半分は天然ウラン、半分は濃縮ウランという考え方である。これは問題になったところで、カナダや英国のように天然ウランに徹底した方がよいとする案と、濃縮ウランを入れても燃料面から制約をきたすような協定内容でないなら積極的に濃縮ウランを入れるべきだとする考えと両論があった。

 研究炉では材料工学試験炉の設置を考えている。海外でも多くの国が材料工学試験炉を建設している状況で、わが国でも早い方がよいという声もあったが、しばらくはCP−5でまにあうので材料工学試験炉は昭和35年度から建設にとりかかることにしている。動力試験炉計画は動力試験炉を建設して動力炉の生産に備えると同時に、将来はさらに増殖炉を国産するのに資することとする。昭和33年度から濃縮ウラン水冷却型の動力試験炉を米国から輸入したらどうかと考えている。増殖炉としては国産2号炉と3号炉とをまずつくる。これは国産によって熱中性子増殖炉と高速中性子増殖炉とを電気出力5〜10MWという試験的な規模でつくろうというものである。その結果をみて、すぐれた方の型式を採用して、昭和39年度から設計を始めて44年度までに実用規模の増殖炉を完成する。

 燃料問題について従来から研究が不十分であるという批判があったので、今回の長期計画(案)では、燃料の需給をとりあげている。重要な問題であるから今後も研究を続けていきたい。

 以上がだいたいの骨子で、研究開発の分担という項目では、基本法の精神に最近の状況をも考えておりこんだものをつけ加えている。

 藤岡委員:内容についての皆さんの御意見は別にして、ただいまの説明についておたずねくださることがあればそれを最初にうけたまわっておきたい。

 伏見参与:300万kWの原子力発電は濃縮ウラン型とコールダーホール改良型とを半々に開発するということはどこに書いてあるか。

 佐々木局長:表面にはでていないが、そういう考え方をもっている。これがいいかどうか御検討願いたい。

 島村課長:各関係省庁、団体等につき21日までの期限で御意見を求めた結果をまとめて資料としてお配りしてある。企画庁、産業会議の御意見は別紙になっている。学術会議からは検討していただく日数を要するのでまだ御意見がまいっていない。大蔵省、文部省からはまだ御意見をいただいていない。

 配布資料の取扱いに関して各参与の意見を求めた結果全文を朗読することとなり、島村課長が資料1〜3を朗読。

 島村課長:長期計画(案)について、各新聞の社説では計画をつくったことについては賛成しているが、数字については相当批判的である。毎日はもっとコールダーホール改良型に徹底した方がよいといっている。

 藤岡委員:いろいろ御意見があると思うが、どなたかの御意見があったらそれに引き続いた点についての御意見をお願いしたい。

 大来参与:原子力発電が火力発電に代ると設備資金が長期的にみても多くいることになる。昭和50年度までの累計で約8千億円多くいることになっている。また所要外貨も在来火力の場合に比べて約2億ドル多くいることになっている。経済企画庁では目下長期計画の策定中であるが、外貨の不足と資金の調達が問題であり、同様な点から今回の原子力発電の長期計画(案)についても経過年次に問題があると思う。

 わが国は今後も高い成長率を達成せねばならす、6.5%の成長率でもたりないといわれているが、その鍵は外貨バランスにある。その点からみると、この長期計画(案)ではかなり前の方に外貨負担がかかってくるので問題があると思う。

 電源開発計画の決定に当っては電源開発調整審議会にかけることになっているが、発電用原子炉が現在の研究段階をすぎて実用の域に達すれば、発電設備として在来のものと同様に取り扱われると思う。そこで確定的な長期計画の策定手続きについては御相談していかねばならないと思っている。その他の点ではだいたい結構なものと思う。国の計画として確定したものではなく、試案であるということをなんかの形で明らかにしていただければ結構である。

 藤岡委員:外貨の負担が最初に大きくなるということと、電源開発計画の一環として考える必要があるという御意見だが、これに関連して何か御発言はないか。

 石野参与:各方面の意見をまとめたものにもでているが、今の段階で長期にわたる計画を確定的にいうのは困難である。というのは、予算、外貨負担等の点をおりこんで考えると不確定要素が多くて決定しかねる。長期計画の性格をどう了解するかということに結局なってくるが、今回の長期計画(案)の数字は試算であって、実際には具体的にその時々の事情にまって関係方面の了解を得る必要があるという点をつけ加えていただきたい。

 藤岡委員:委員会の一つの案としてそのように了解していると思う。大来氏の御意見は早期に実施するのは外貨の点が問題であるといわれるのか。

 大来参与:経済性が相当改善されればよいが、まだ問題だと思う。

 瀬藤参与:長期計画(案)に所要外貨を比較した図があって昭和45年度にバランスすることになっているが、他の案をやってみてもうすこしバランスする年次をずらしてはどうか。このようにしないと非常に損なのか。何ということなしにこういう案がでてきたというのでは非常に困る。原子力発電の開発規模を昭和45年度に315万kW、50年度に705万kWとした基礎を開きたい。

 島村課長:所要外貨の算定はいろいろな仮定をおいた上でやっている。したがって当然こうなるとはいえないが、それぞれの根拠は参考資料についている。天然ウランだけでやるという大きな仮定もあるが、ただ傾向についてはこういうことがありうると考えられるので算出したものである。

 藤岡委員:開発規模については、将来の電力需要の延びをまかなうのにどうしたらよいかといろいろな仮定をおいてやってみてA〜Eくらいまでだしてみたなかで300万kWが中間の値であった。そういう仮定の上で一応やってみて外貨などはあとから計算したものである。外貨の問題で無理なようならばもうすこしずらした計画を考えてみたい。

 山県参与:所要資金が多額に上るということだが、資金を集めるのは民間でやるわけである。原子力発電をやる必要があるというが、エネルギー事情が迫逼しているからというならば、同じ金で火力を建設して倍の出力を得た方がとくではないか。また、多額の資金が集まるかどうか。ある程度計画の年次をずらしたらどうか。

 松根参与:そういう場合(原子力をやる代りに倍の火力を開発する場合)もあり得るであろう。実際になってみないとわからないが、一応試算してみるのはよいと思う。

 高橋参与:石炭による新鋭水力発電の将来における原価は直線で水平に示してあるが、この点に問題がある。将来は賃銀の低下は考えられないし、7,200万トンも石炭を掘るとなればもっと問題である。実際には火力発電原価は上り坂になり、原子力発電がもっと早く経済的になると思う。

 田宮担当官:石炭や重油による新鋭火力の発電原価は、熱効率が向上することも考えられるので、将来にわたって一定としている。

 通産省宮本物資調整課長:石炭を7,200万トン掘るとコストがあがるのではないかというのはもっともであるが、エネルギー部会で考えていることは炭坑の規模を大きくしてコストをあげないでいこうという前提である。実際にそうなるかどうかは問題であるがそういう方針になっている。

 高橋参与:なかなかそういかないのではないか。石炭業界では資料をもっていると思う。

 倉田参与:原子力発電の長期計画を実施しようとするには資金計画もはっきりさせておかねば民間としては実施していけない。ところが長期計画をその時その時になって考えていかねばならぬというなら無責任である。将来に関しては見通ししかできないとはいっても、大蔵省や通産省も一緒になって計画をたてるべきで、その時その時にグラグラ変るというのではなさけない。

 岡野参与:根本にさかのぼることになるが、このような問題においては、日本全体の考えを一致させることが重要である。実際には予算措置も要するし、各省に関連する問題であって、これをある範囲でまとめていかねばならない。それには立法措置が必要ではないかということとその方がやりよいのではないかという理由から、原子力発電法という立法措置を考え、国会が参加してやるべきではないかと思う。まだきめられない点が多いからといってその時その時にきめるというのではなく、原子力発電はだいたいこういう線を基本方針とするという基本法を作った方がいいしその方が便利である。

 大屋参与:私の考えでは、原子力に関して今から18年先の昭和50年度までの開発計画を役所がこしらえようとするのが無理である。産業会議でも燃料サイクルがきまっていないではないかといっているように、Puの利用法がわからないのに利用することを考えるのは無理で、したがって長期計画も裏づけが困難になる。だいたいこういうものは5ヵ年計画は相当はっきりしたものはつくれるが、18ヵ年計画は無駄ではないか。発電用原子炉開発のための計画とするから問題がでるのであって、今回の長期計画(案)は一つの考え方にすぎないのが実際である。150万kWを開発するまではコールダーホール改良型でいくと書いてあるが、これを英国にもっていけば昭和42年度までコールダーホール改良型を買ってくれると安心する。濃縮ウラン型も平行的にやっていくとするべきである。ユーラトムのように半分ずつやるというのは賢いやり方で、両方の技術の発展のいかんによってはどちらかに重点がおかれる。企画庁や通産省ともよく相談してまず5ヵ年計画を作るべきである。

 資金的な問題を論じているのではいつまでも原子力発電ができないことになる。エネルギーの供給を確保しておくことが重大であるから、ただ外貨や設備資金の問題だけではかたづかない。これは教科書としては非常によくできている。長画計画をこういう点から考えねばならないという指針としては非常によくできている。実施計画としてはもっと確定したものを考えていくべきである。

 燃料公社が主体となって核燃料資源の探査、開発を行い民間の協力を期待するというのはあまり役所の仕事に自信をもちすぎている。政府がやろうとしても年々2千トンもの核燃料を開発できるものではない。探鉱や製錬は民間にやらせても燃料要素としての加工はするというように、公社が民間の協力を得てやるような形にしたい。民間は人間も技術もある程度もっているのだから、あまり公社の主体性を強調しない方がよいのではないか。燃料問題は民間の力を借りねばうまくいかないと思う。

 高橋参与:燃料公社が主体になるというのは、当面の技術の開発、燃料の確保は今のところ政府が主体となっているうえ、将来も国内の鉱石に大きな期待ができないので輸入に多くをまつこととなり、輸入にはオーソライズされた機関が必要だから燃料公社が主となることを考えているが、永久にといっているのではない。公社で技術が開発されたならそれを一般に公開することを考えている。現状では損をしても民間でやれといっても無理なので、当面は公社が開発して安定した事業となれば民間に公開する気である。

 大屋参与:そういう意味で公社が主体になることには異存はないが、製錬加工の技術や設備は民間のものを大いに利用したい。将来は政府が買いあげた燃料を電力会社が使うことも考えられる。沢山掘ってもらうには政府の買上げが必要になるが、そういう意味で政府の助力は必要だと思う。

 藤岡委員:18ヵ年計画はながすぎるかと思うが、原子炉は一つ造るのに5年間かかるという事情もあり、だいたい昭和45年度までを考えていたが、あとがどうなるかということで50年度まで考えてみた。だからその辺は計画というより目途というものである。5ヵ年計画を積みあげるという考え方もあるので、その辺は考えてみたい。

 有沢委員:実行計画は5ヵ年計画程度になると思うが、それより先も考えておかねばその時になってあっちにいったりこっちにいったりして、これは財界人が非常に嫌うところである。石炭の出炭量を6,500万トンとすれば、昭和45年度ごろからはっきりと重油の輸入がふえてくるので、その傾向をみるのに50年度までを対象とした。ところがその後出炭量を7,200万トンとする考えもでてきた。われわれの数字に不正確な点もあろうが、通産省の数字にも不正確な点がないとはいえない。

 大屋参与:こういう非常に長期にわたるものを発表して非常に権威があるということになるのはおかしい。表現をぼかした方がよい。石炭なら7,200万トンといってもだいたいわかっているが、原子力の場合には18年もの長期になるとわからない点が多い。

 瀬藤参与:先のことはあまりはっきり書かぬ方がよい。

 有沢委員:エネルギー問題を検討するには5年以上の期間にわたって考察せねばならない。経済5ヵ年計画でもエネルギーについてはやや長期的にみている。先のこともある程度の目標を示さなければならない。また、たとえば100万kWか200万kWしかコールダーホール改良型をつくらないとするならば、せっかく国産化ができてもあとにあまり続かないことになる。これは日本の場合には特に考えておくべきである。

 大屋参与:日本の工業はそういう問題に適応し、違った注文になれるようにできていると思う。実際問題としてただ一つの型式で原子炉を開発しようとしてもそうはならないので、ウェスティングハウスとかGEとか日本の企業と縁の深い会社もあるので、コールダーホール改良型ばかりでやるというのは問題になる。

 有沢委員:そういう意味なら、開発量さえいえば原子炉の型式を示さなくてもよいということになるが、それではお困りだろうから、ある程度の開発量は一つの型式で示した方が国産化も早くなるしよいという考えである。業界の方で型をきめる必要はないというのなら別である。

 倉田参与:根本の技術ができていればあまり問題はないと思う。

 安川参与:150万kWまではコールダーホール改良型だけでいくようにみえるから問題になる。

 有沢委員:もし国産化した炉が続いて建設されないとすれば、コールダーホール改良型を1基買おうとしているのも意義が薄い。

 稲生参与:一昨日産業会議の意見で、コールダーホール改良型を重視した計画だという批判が多かったが、一人の意見で、「昭和42年度まではコールダーホール改良型が主だが、さらにその後は濃縮ウラン型が多くなることも含んでいるから、天然ウラン型と濃縮ウラン型と半々であると解釈することはできる」という意見があった。もしそうならとんでもないことで、42年度まではコールダーホール改良型が主だというならば、その後も国産化することを考えると結局半々になるのは無理であろう。最初から半々程度と考える方がよい。天然ウラン方式といってもコールダーホール改良型ときまったわけではなく、天然ウラン型、濃縮ウラン型としておくことはかなり融通のきく考えである。42年度まではやや細かに考えるという意味で天然ウラン濃縮ウランを半々にやっていき、その後はその時の条件でどちらもやれることにしておきたい。

 藤岡委員:コールダーホール改良型発電所を導入するならばその後に国産化して建設せねば導入の意義はない。コールダーホール改良型を2基国産すれば(1基30万kWとして)ほぼ100万kWに近くなるので150万kWのうちの大部分をこの型の原子炉が占めることになるのは当然考えられる。その後ははっきりしないが、計画というのにいくつかの方針をならべておくわけにはいかないから、コールダーホール改良型が中心になるという考えを頭にもって試算してみたものである。コールダーホール改良型のみでかりにやるとすれば昭和45年度にPuが2トンたまる。これを日本で平和利用することは当然考えるべきだから他の型式の原子炉も必要になろう。コールダーホール改良型ばかりを考えているのではなく、一応数字をはじくために計算にはコールダーホール改良型のみと仮定してやっている。

 稲生参与:最初の実用発電炉はコールダーホ ール改良型になることは当然考えられるが、それも100%きまったわけではない。かりに導入されたとしても日本で使ってみなければわからないから、42年度まではコールダーホール改良型が主体になるというのはもっと考えねばならないのではないか。

 有沢委員:何でコールダーホール改良型を選んだかと聞かれるとそこまで問題になる。ほかの型式の炉は全然使わないというのではなく、300万kWのうちすくなくとも150万kWVはコールダーホール改良型を主体にするということでそれまでにも濃縮ウラン型が安くなればそれもやることになる。

 稲生参与:42年度までの150万kWを一つの型式を主体にしてやるというのは問題である。

 有沢委員:「最初のうちはよくわからないから両方入れると考えておく、あとはそれから考えていこう」というところに問題がある。濃縮ウラン型をいれないというのでなく、いついれるかが問題だとしてある程度コールダーホール改良型をかかげ需要を示しておくのがよいか、両方ともはっきりいわない方がよいかの問題だ。

 松根参与:実際問題としては、開発の規模を示すだけで型式ははっきりおきめにならない方がよい。

 稲生参与:コールダーホール改良型が実際によいときまっていないのによいときめてかかるのはどうかと思う。

 有沢委員:動力炉を導入しようとしているのは早すぎるということか。ただ動かしてみるために導入するということになる。

 稲生参与:もっといいのがでてこないとは限らないのでまだきめない方がよい。

 有沢委員:まだ2、3年は計画をたてないということを意味するのか。

 大屋参与:42年度までは半分半分というように考えておけばよいのではないか。

 藤岡委員:現在、不確定の度合いは濃縮ウラン型の方が不確定だから、コールダーホール改良型を1基買う方針をとっている。そうすれば国産化しなければ意義が薄いのでコールダーホール改良型でいくつか続けることになる。

 大屋参与:30万kWを導入する。もう1基いれて60万kWにすればかなり満足するだろう。150万kWにはまだ90万kWあるから濃縮ウラン型で残りを全部やることもありうる。濃縮ウラン型を考えておいてもよい。

 藤岡委員:濃縮ウラン型をやらないといっているのではない。

 有沢委員:濃縮ウラン型はいつからどの程度いれるかわからない。わからないことをいう必要はないから、わかる範囲で示しているものである。

 藤岡委員:計画としてだす以上は何か多少はっきりしたものでなければならない。

 大屋参与:42年度ぐらいの将来を考えるのに、炉の型式は半分半分を考えるのが常織だと思う。

 松根参与:核燃料の製錬について、民間で国産できそうかできそうでないのか。

 藤岡委員:燃料公社をつくった時にも、国民の福祉に大きな影響があるので民間企業にはやらせず燃料公社にやらせる考えであったが、それもいきすぎなので指定する工場にはやらせることを考えている。申しでてきたものには誰にでもやらせるかどうかは問題である。アメリカでやっており安全な方法だからと民間からすでに申しでてきたが、燃料公社ではアメリカのさらに改良された製錬法を採用しようとしている。このような問題があるので目下検討中である。

 松根参与:燃料公社が独占的にやるのは進歩の上からも量の上からも問題がある。あまり沢山やらせる必要はないが、少なくとも数社はやらせてもよいのではないか。

 藤岡委員:燃料部会では「今まで多くのメーカーは民間には製錬が許可されないのではないかと思っていた。そこへ、一社だけにやらせるのはよくないから、民間にやらせるときには公社の開発した技術を公開の形にしてほしい。」という意見がでた。また、需要量が確保できるかどうかにも問題がある。

 大屋参与:製錬は軍事目的から秘密にされていたので海外では政府が独占的にやっていた。しかし、燃料要素への加工はGEやウェスティングハウスでやってきた。輸出する燃料要素もこのようなメーカーがつくるものと思う。日本では勝手にやれというのでなく、民間の設備を利用して委託加工をするようにしたいというのが私の考えである。仕事は初めのうちからある程度やらせないとなかなか大きくならないもので、時期の問題はあるが、ある程度最初のうちから民間にもやらせる方がよいのではないか。

 藤岡委員:一方がみすみす安くなるとわかっているのに、3倍ばかりの資金で民間にやらすのがよいだろうか。また、民間にはやらすなという意見もあり決しかねている。

 大屋参与:政府から公表するには、そういう問題があるなら、はっきりきめないで民間にやらせるというゆとりもみせていっておく方がよい。

 伏見参与:私は、コールダーホール改良型だけにきめるなという意見をもっていたが、皆さ んの御意見をきいてみるとむしろ反対の考えになってきた。有沢委員のようなお考えも大切で、あるところでははっきり目標をたてないと現実の問題としては時期を失することにもなる。この辺のところはある程度決断を示し、不確定だから50%、50%というように不定にしておくのはよくない。ある程度ゆとりをとった計画という考えでたてまえとしてはこの長期計画(案)のようでいい。

 稲生参与:不定にしておくのはいけないという御意見だったが、私は不定にしておくというのでなく、42年度までを半分半分にしておいたらという考えである。

 大屋参与:両方やるということにしておかねば安いものはできない。最初はどうしても英国に首をしめられることになると思うし、半分半分が常識だろう。

 原研嵯峨根副理事長:18年間の計画をきめるのは困難だが、5年、10年というように正確度は違ってくるから、だいたいの見当はつけてほしい。増殖炉も考えてほしい。5年ぐらいまではもうすこしソロバンをとってほしい。

 藤岡委員:増殖炉を将来の目標にするのは無理でコンバーターを考えるべきだという原研のお考えをきいたことがあるが。

 原研嵯峨根副理事長:実際はどうなるかは別として、増殖炉を目標にするのは結構である。今度の長期計画(案)は現在の状況判断はこうだということをみんなにあたえるという意味で結構である。

 伏見参与:先へいくほど幅をもって考えるのが本当ではないか。

 藤岡委員:石炭のコストの問題もでたが、あがるとしてもどの程度あげてよいかあげようがない。

 通産省物資調整課長:7,200万トンは具体的につみあげをやり見通しももっている。それに際し1人当りの能率改善でコストダウンを考えているが、賃銀がコストの半分ほどを占めることから問題がある。賃銀があがるとして試算したものもあるが現状程度ではいけそうだと考えている。

 安川参与:出炭量をふやすにも竪坑が必要で資金を要する。資本的にペイするかどうか問題である。

 原研久布白理事:今までのことからみれば石炭のコストがあがらないことは考えられない。通産省から増産して3割さげたいということだったが、私はそうぜいたくなことはいわない。あげない程度でよいと言ってきたが実際には数年間あがってきた。原子炉の型式については、国家的に統一して平等にメーカーが使われるならば結構だが、紐つきの導入になると思われ、PWRまたはBWRをどこがやるかが問題になる。どこがやるかわからないで半分半分といっても問題を残すもので、そういう現実の問題を考えてやってほしい。

 燃料公社原副理事長:原子燃料については別個に5ヵ年計画か10ヵ年計画をたてたらよいのではないか。

 佐々木局長:国内炭7,200万トン、水力3,200万kWという開発目標は経済性よりも資源開発という点から問題にしている。原子力に関しては経済性のみをもっぱらとりあげて問題にしている。不可知要因というがこれはどちらにもあることである。経済企画庁や通産省と話しあった結果、長期計画としてAB2案がでて、その幅ぐらいでということになり、さらに見通しとしてならA案でよいということで今度の長期計画(案)になった。将来の発電設備は開発する会社が水力、火力、原子力のうち安くてよいものを選ぶこととなるので、開発計画は計画というよりも見通しであろう。研究炉は政府が考えてやっていけるので、この方は計画としてはっきり考えていくべきだろう。

 田宮担当官:この長期計画(案)はエネルギーの不足、経済性、外貨負担の軽減という三本立になっている。経済性は大胆な仮定で試算し、外貨収支上の問題は天然ウラン型を急速に国産化するというように無理をして算出した。濃縮ウラン型でやれば外貨収支があやしくなるということを事務的には憂慮している。設備の国産化のテンポが濃縮ウラン型では早くできない。燃料は国内で加工することを考えても、メタルまたは塩類の形で輸入するとしてももともと高い。天然ウランの場合はイエローケーキでの輸入を考えて計算できるが今度はそうはいかないということである。

 原研嵯峨根副理事長:外貨収支も大事だが日本全体の技術の育成も大事で考えてほしい。

 倉田参与:安全性の問題だが、規制法ができているが、放射線の基準もつくらねばならない。コールダーホール改良型を導入した後で基準を考えるのは非常に無理であるから、先に基準を作ってそれにあてはめて導入してほしい。

 藤岡委員:一般的に基準が考えられるかどうか問題であるが検討をかさねている。長期計画(案)は皆さまの御意見を参照して案をねりなおしてまたお考えをききたい。審議会を作ったらというお考えもあったが、参与の皆さんの御意見を十分聞くということで御勘弁願いたい。次回参与会は11月14日(木)を予定しておく。