原子力委員会参与会

第 5 回

日 時 昭和32年6月21日(金)牛後2時10分〜5時10分

場 所 人事院ビル236号室(原子力委員会会議室)

出席者

 菊池、三島、中泉、脇村、茅、山県、大屋、倉田(代理駒井)、瀬藤、稲生、田中 各参与
 石川、藤岡、有沢、兼重 各委員
 篠原科学技術庁次長、法貴局次長、島村政策課長、井上調査官、藤波管理課長
 ほか担当官
 日本原子力研究所 駒形副理事長、久布白、嵯峨根、木村 各理事、岡野監事
 原子燃料公社 高橋理事長、佐藤、三沢 各理事

議 題

1.日本原子力研究所および原子燃料公社の事業計画について
2.その他

議事概要

1.参与ならびに専門委具に関する報告
 島村課長から、参与の定員を15名から25名に、原子力委員会の専門委員を30名から50名に、それぞれ増員することに決定した旨の報告があった。さらに、従来、原子力委員会には、動力炉、放射線、材料機器の各専門委員会があったが、これを改めて、動力炉、放射能調査および原子燃料の各専門部会をおくこととなった旨の説明があった。

2.発電用原子炉導入の問題について
 原子力委員会が、4月下旬ないし5月上旬にわたり、発電用原子炉導入の問題に関して、学界、政界、および財界と行った懇談会の内容につき、島村常長から説明があった。つづいてこの問題をめぐって次のごとき発言があった。
 大屋参与:英国型か濃縮ウラン型かという問題は、調査団を派遣した上できめたい。受入体制としては原研と一体の関係にあるものをつくり、設置した動力炉はむやみに止めないで運転の試験を行う。必要な実験は、原研に1〜2万kWのものをおいて、そちらでやる方が経済である。かりに英国型と濃縮ウラン型との両方を入れると、500億円ほどの資金が必要である。電力会社が半分くらい出資し、さらに開銀からの融資を期待するとしても、外資が重要なポイントとなる。技術導入をするか、原子炉を買うだけにするかということも、外資の問題がからんでくるから、産業界もはっきりした結論は出せないところである。

3.原研の32年度事業計画について
 原研の駒形副理事長から、32年度事業計画について説明があった。さらに、原研の事業計画に関して次のことき発言があった。
 駒形副理事長:33年度の予算をそろそろ考えていかねばならないが、これに関しては動力試験炉をどのように考えていくかが大きな問題で、あまり大規模でない原子炉は是非原研が持つようにしたいと考えている。増殖炉に進む前に必要な研究段階を、原研全体として一層組織的に進めていけるようにやっていきたい。放射線利用の面はどの程度重視して行けばよいか問題としている。原子炉工学の開発の面は充実していきたい。33年度においてはいろいろな施設ができ上るので、研究所の設置された目的にそって具体的な研究を行えるように体制を充実していきたい。
 34年度には各種の実験を CP−5で行い、ウォーターボイラーは訓練用としてリアクタースクールを開設する。

 大屋参与:民間でも、リニア・アクセレレータを入れようという考えがあるが、原研はそれらと重複せぬよう、民間では金がかかってできないようなもの−おもに原子炉関係のもの−を主力として入れる方針がよいのではないか。すこしよろずやになりすぎている。燃料公社も採掘から加工までやるというのは、手を拡げすぎていると思う。

 三島参与:燃料の国産化の研究がされているが、捧がないので燃料要素の成型の研究ができない。 天然ウランの棒を入れることも考えた方がよいのではないか。ウランを精錬して成型加工することも、燃料公社では研究の対象としているが、初期の間は多少分担し、研究所はできたウランからキャンニングまで、燃料公社は天然ウランを作ることに力をそそいではどうか。

 嵯峨根理事:天然ウランは、米国としてはまだ外国に出していないので、日本に輸出するとしても、協定をかなり厳格なものとするのが米国の目下の考えである。政府のオーソライズした機関である原研と米側との協定だけで輸入できそうだが、現在ではまだ楽観できない。英国からの輸入も考えられる。研究所における燃料関係の研究は、専任の教授にきていただき、うまく行きそうである。原研で何もかもやることは考えていない。手の足りないところは民間の会社と協同していくことを考えている。34年度ごろからは一層重点主義で研究していきたい。

 茅 参与:民間への委託研究もやらねば日本の工業力は生かせない。

 駒形副理事長:原研の人員も限られているし、何でもやるというのではない。動力炉の地震対策等、各方面とも結びついていくようにするつもりである。外部とは仕事の委託を通じて密接に協力して行きたい。現在はある程度は協同研究を−化学関係、計測装置等−行っている。もうすこし根本的に制度化して協調していきたい。

 大屋参与:原研と、補助金をもらうところと密接な関係を作らねばならなない。それをもっと有効にして行く方法を考えてほしい。

 岡野監事:日本の原研は、米国のようにピラミッド式に研究をやらし、一番よいところに落ちつくような方法は取るべきではない。むしろ英国式に、すなわち中央突破式に国力技術、資本を集中してやっていかねばならい。研究所はペイラインに乗るかどうかわからぬ研究をする。ペイラインに乗ることになれば民間も希望して出てくる。それまでは何もかも手をつけるようだが、原子力に対してはそうやるべき時代なのだと考えている。

 島村課長:問題は二つあると思われる。まず原研の研究対象については、必ずしも何もかもやるという方針ではない。32年度予算の見積りの際も、原子力委員会や局が直接担当するもののほか、各省関係の研究も調整して研究の依頼先を考えている。今後の問題としては、人手は足りないし急に増やせないから、大屋先生の趣旨をたいし、民間、国立機関との関連を考えて、原研は重点的にやっていきたい。
 次に原研と国内の技術との結びつきについては、原研が中心となりその研究上の必要から民間に依頼することは必要である。国立研究所もあってそれぞれの分野における研究をしているので、原研を通じて金を出すことが一概にいいとは限らない。原研自体の研究内省から具体的に考えねばならない。今のところでは原研から研究を他に依頼するような金はついていないが、民間と原研との関連はおっしゃるように密接にしていくべきだと思うので、原研の進展に応じ具体的に考えていきたい。

 嵯峨根理事:原研ができたころは動力試験炉がでてくるのはかなり先と思われていたが、今日のように事態が急に進んでくると、それに間に合わせるには手に合わない部分もでてきている。これから先はあの会社で研究してほしいというような研究題目がある。

 茅 参与:研究題目についてそれをどこでやるべきかという判定を原子力局の役人がするというのはせんえつであろう。できれば原子力委員会で専門委員会を作って事情のよくわかっている人で判定してほしい。最も心配なのは、大学との関係がはっきりしていないことである。

 藤岡委員:今のご意見は前にも金属に関する専門委員会を作ってほしいということがあったが、ご尤もであって、今燃料が急を要する問題なので専門委員会のようなものを作るのが良いか検討している。補助金や委託費は、局からでるものと原研からでるものと分かれており、独立の研究として成り立つようなものは局から補助すれば良いし、原研の仕事に関連するものは原研から委託すれば良い。このように観念的には、区別できるが、実際には、地震対策のごとくどちらにすべきかボーダーラインのものがある。補助金を原研が使って研究を委託するには責任がともなうので局で良く検討してやっていきたい。

4.燃料公社の32年度事業計画について

 燃料公社の高橋理事長から、32年度事業計画について説明があった。その後事業計画に関し、次のごとき発言があった。

 高橋理事長:来年度はまず東北地方に事業場をもう一つおきたい。これは探査関係である。公社は燃料の生産を目的とするのであるが、研究所をもたない生産所はない。そういう意味で、今度東海村に設置が決まったのは鉱石試験所という名前だが燃料全体の研究をやらせていただきたいという構想をもっている。33年度は金属ウランを作るのに必要な精製の研究に重点をおいてやりたい。

 島村課長:企業体として公社は発足しているのだから、公社が研究所を持てないというのは誤解である。原則的には公社が必要な研究をするのは当然と考えている。そうかといって時期的な問題もあり、研究ばかりをやるならば、公社をつくったこと自体に問題がある。したがってそれぞれの事業と関連して具体的に論ぜられねば抽象的に公社がやるべきかどうかば決められない。もっと具体的にいえば、燃料に関する技術は原研にとっても本質的な研究対象であり、燃料の成型の研究にしても原研でやるのか公社でやるのかということが問題になっているが、現在のところでは原研でやるべきだと考えられる。精錬までの関係では、公社に全部の責任がある。問題はそれ以後の事だが一応原研がやるべきだと考える。

 大屋参与:将来の方針までも今からきめることはできないが、今のところは一応精錬で切る。それから後は原研で研究するのがよいと思う。将来化学処理をやって回収することになれば、公社でやればよい。

 駒形副事長:精錬までは公社が研究し、その後は公社と原研とが一緒になって原研で研究することになっている。将来工業化されれば公社にお願いする。実態としては今のところはうまくいっていると思う。