特殊核物質の貸貸借に関する日本国政府とアメリカ合衆国
政府を代表して行動する合衆国原子力委員会との間の協定

 日本国政府及びアメリカ合衆国政府を代表して行動する合衆国原子力委員会(以下「合衆国委員会」という。)は、1955年11月14日に署名された原子力の非軍事的利用に関する協力のための日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定(将来改正され又はこれに代るものを含む。)に基く特殊核物質の賃貸借に関し、同協定に含まれるすべての条件、規定及び保証に従って、次のとおり協定する。

    第 1 条

 合衆国委員会は、日本国茨城県那珂郡東海村日本原子力研究所に設置されるノース・アメリカン航空会社製の溶液型研究用原子炉の操作における使用のため、同位元素U−235を19.5パーセントから20パーセントまでの間に濃縮した約10キログラムのウラン、すなわち、2キログラムのU−235を含むウランであって原子炉用物質を製造するため日本国政府が雇用する契約者がアメリカ合衆国において製造する同物質に含まれるものを同政府に賃貸することにここに同意する。

合衆国委員会は、さらに、たまたま喪失され又は破壊された相当の量の原子炉用物質の代替に必要な追加量の同位元素U−235を19.5パーセントから20パーセントまでの間に濃縮したウランを日本国政府の要請に基き同政府に賃貸することにここに同意する。

    第 2 条

 合衆国委員会は、前記の原子炉のための原子炉用物質をアメリカ合衆国において製造するため日本国政府が雇用した契約者から同政府が確認した要請を受理した日の後120日以内に、同物質を製造するために必要な量の同位元素U−235を19.5パーセントから20パーセントまでの    ふつ 間に濃縮したウランを、六弗化ウランの形状で、同委員会の施設において同契約者に引き渡すものとする。契約者に対する引渡は、合衆国委員会が同契約者について要求する料金及び条件(原子炉用物質を受領し、かつ、アメリカ合衆国において製造作業を行うために必要な許可を含む。)に従わなければならない。

 日本国政府及び合衆国委員会は、同政府が雇用する契約者が原子炉用物質を製造する過程において、同政府及び同委員会が選定する分析者によるアメリカ合衆国における分析のため試料を取り出す時点について合意するものとする。その製造された物質の濃縮度は、その分析の結果によって定められる。分析の費用は、日本国政府及び合衆国委員会が均等に分担するものとする。その原子炉用物質の量については、同物質を製造した契約者が日本国政府及び合衆国委員会に証明するものとする。

 日本国政府が雇用した契約者が前記の原子炉のための原子炉用物質の製造を完了したときは、同契約者は、同政府及び合衆国委員会に対する30日の予告の後、同物質を同委員会が同政府と協議の上指定するアメリカ合衆国内の積出港に送付しなければならない。その場合、合衆 国委員会は、指定港におけるその原子炉用物質の日本国政府への引渡のたゆ及び輸出の実施のため必要な措置を執るものとする。合衆国委員会は、その原子炉用物質をその契約者から日本国へ積み出す費用については、責任を負わない。

 前記の原子炉用物質に含まれる濃縮ウランの輸出地における日本国政府による受領は、適当な受領証によって証明されるものとする。日本国政府は、その後は、前記の協力のための協定の規定に基くその濃縮ウランの保全並びに同濃縮ウランのあらゆる喪失及び破壊(原因のいかんを問わない。)について並びに健康及び安全の危険に対する保護措置について全責任を負うものとする。

 日本国政府は、1960年9月30日までに(別段の合意がある場合を除く。)、かつ、いかなる場合にもこの協定が終了した時に、この協定に基いて同政府が賃借した濃縮ウランを含むすべての原子炉用物質を、適当な放射能的冷却の後、合衆国委員会が受諾する健康及び安全の危険に対する適当な保護措置に従って、同委員会が同政府と協議の上指定するアメリカ合衆国内の到着港に同政府の負担において送付するものとする。その場合、合衆国委員会は、その原子炉用物質を再処理するため受領することに同意しないときは(同意したときは、日本国政府は、合衆国委員会に対しその原子炉用物質を同委員会の仕様に合致する六弗化ウラン又は合意される他の形状に再処理するための料金を支払い、かつ、同物質を再処理する同委員会の施設への同物質の輸送の費用を支払うことに同意する。)、同委員会の仕様に合致する六弗化ウラン又は合意される他の形状にアメリカ合衆国において再処理するため日本国政府が雇用する契約者への指定港における同物質の輸入及び引渡に必要な措置を執るものとする。契約者に対する引渡は、合衆国委員会が同契約者について要求する料金及び条件(原子炉用物質を受領し、かつ、アメリカ合衆国において再処理作業を行うために必要な許可を含む。)に従わなければならない。合衆国委員会は、その原子炉用物質を日本国からその契約者へ積み出す費用については、責任を負わない。

    第 3 条

 日本国政府は、同政府が原子炉用物質を製造するため雇用する契約者が製造する同物質に含まれる同位元素U−235を19.5パーセントから20パーセントまでの間に濃縮したウランの賃借に対し、次に定める料金の合計金額を次に定める時に合衆国通貨で合衆国委員会に支払うものとする。

(a)この協定に基いて賃借される濃縮ウランであって日本国政府が雇用する契約者が製造した原子炉用物質に含まれるものにつき、同物質に最初に含まれている濃縮ウランの価額の年率4パーセントの使用料。その使用料は、その原子炉用物質が日本国政府に引き渡された日から、

(1)同と物質が、アメリカ合衆国に返還され、かつ、合衆国委員会の仕様に合致する六弗化ウラン又は合意される他の形状への同物質の再処理及び再処理され潅同物質の同委員会への送付のため同政府が雇用する契約者に引き渡される日又は
(2)同委員会がアメリカ合衆国に返還された同物質を再処理のため受領することに同意した場合は、その再処理が完了した時若しくは同委員会がその再処理のため妥当であると決定する期間が満了した時のいずれか早い時までのものとする。

(b)(1)原子炉用物質に最初に含まれ、かつ、この協定に基いて賃借される濃縮ウランの量及び 濃縮度から決定される価額と(2)アメリカ合衆国に返還される同物質に含まれるウランの量及び濃縮度から決定される価額との差に等しい消耗及び濃縮度低下補償の料金。返還される原子炉用物質に含まれるウランの量及び濃縮度は、同物質がアメリカ合衆国に返還された後妥当な期間内に、日本国政府及び合衆国委員会が選定する分析者がアメリカ合衆国において行う同物質の証明された分析の結果又は合意される他の方法によって決定される。その分析の費用は、日本国政府及び合衆国委員会が均等に分担するものとする。

(c)この条の規定の適用上、日本国政府に引き渡されるそれぞれの量の原子炉用物質に含まれる濃縮ウランの価額は、合衆国委員会が設定した各種の濃縮度の同位元素U−235を含むウランの価額の表であって当該物質が同政府に引き渡された時に実施されているものに従って決定されるものとする。アメリカ合衆国に返還されるそれぞれの量の原子炉用物質に含まれる濃縮ウランの価額は、当該物質が日本国政府に引き渡された時に同物質に含まれる濃縮ウランに適用された価額の表に従って決定されるものとする。引き渡され又は返還された原子炉用物質に含まれるウランの濃縮度が価額の表中の二の連続した濃縮度の間にあるときは、当該濃縮度に対する価額は、それらの二の濃縮度の間の直線内挿法によって決定されるものとする。

(d)使用料は、年払いとする。消耗料及び濃縮度低下補償料は、日本国政府が前記の証明された分析の結果を受領した日から30日以内に支払われるものとする。合衆国委員会が返還された原子炉用物質を同委員会の仕様に合致する六弗化ウラン又は合意される他の形状に再処理することに同意したときは、同委員会の再処理料及び同物質の到着港から再処理施設への輸送のため生じた同委員会の費用は、同委員会からそれらの料金及び費用の請求書を日本国政府が受領した日の後30日以内に支払われるものとする。

    第 4 条

日本国政府は、この協定に基いて賃借する原子炉用物質に含まれる濃縮ウランの生産若しくは製造、所有、賃借又は占有及び使用から生ずる原因のいかんを問わないすべての責任(第三者に対する責任を含む。)について、その濃縮ウランが合衆国委員会から同政府に引き渡された後は、アメリカ合衆国政府及び同委員会に対しその責任を免かれさせ、かつ、損害を与えないようにするものとする。

    第 5 条

 アメリカ合衆国議会の議員若しくは準州代表又は同国の属領代表は、同国の法律に従い、この協定のいかなる部分にも、また、それから生ずるいかなる利益にも関与し又は参加することができないものと了解される。

    第 6 条

 この協定は、日本国がその国内法上の手続に従ってこの協定を承認したことを通知する日本国政府の公文を合衆国委員会が受領した日に効力を生じ、1955年11月14日に署名された原子力の非軍事的利用に関する協力のための日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定(将来改正され又はこれに代るものを含む。)の期間が満了し、又は同協定が廃棄されるまで効力を存続する。

 以上の証拠として、この協定の当事者は、正当な権限によりこの協定に署名させた。

 1956年11月23日にワシントンで、日本語及び英語により本書2通を作成した。

                        日本国政府のために
                                   谷 正之

                        アメリカ合衆国政府を代表して行動する
                        合衆国原子力委員会のために
                                   ハロルド・S・ヴァンス