原子燃料公社法
(昭和31年5月4日公布法律第94号)

  第1章 総  則

(設立の目的)

第1条 原子燃料公社は、原子力基本法(昭和30年法律第186号)に基き、核原料物質の開発及び核燃料物質の生産並びにこれらの物質の管理を総合的かつ効率的に行い、原子力の開発及び利用の促進に寄与することを目的として設立されるものとする。

(法人格)

第2条 原子燃料公社(以下「公社」という。)は、法人とする。

(事務所)

第3条 公社は、主たる事務所を東京都に置く。

2 公社は、内閣総理大臣の認可を受けて、必要な地に従たる事務所を置くことができる。

(資本金)

第4条 公社の資本金は、1,000万円とし、政府がその全額を出資するものとする。

2 政府は、必要があると認めるときは、予算で定める金額の範囲内において、公社に追加して出資することができる。この場合において、公社は、その出資額により資本金を増加するものとする。

(登記)

第5条 公社は、政令で定めるところにより、登記しなければならない。

2 前項の規定により登記しなければならない事項は、登記の後でなければ、これをもって第三者に対抗することができない。

(名称使用の制限)

第6条 公社でない者は、原子燃料公社という名称又はこれに類似する名称を用いてはならない。

(民法の準用)

第7条 民法(明治29年法律第89号)第44条(法人の不法行為能力)及び第50条(法人の住所)の規定は、公社について準用する。

  第2章 役員及び職員

(役員)

第8条 公社に、役員として、理事長1人.、副理事長1人、理事5人以内及び監事2人以内を置く。

(役員の職務及び権限)

第9条 理事長は、公社を代表し、その業務を総理する。

2 副理事長は、理事長の定めるところにより、公社を代表し、理事長を補佐して公社の業務を掌理し、理事長に事故があるときはその職務を代理し、理事長が欠員のときはその職務を行う。

3 理事は、理事長の定めるところにより、公社を代表し、理事長及び副理事長を補佐して公社の業務を掌理し、理事長及び副理事長に事故があるときはその職務を代理し、理事長及び副理事長が欠員のときはその職務を行う。

4 監事は、公社の業務を監査する。

(役員の任命)

第10条 理事長は、原子力委員会の同意を得て、内閣総理大臣が任命する。

2 副理事長及び理事は、理事長及び原子力委員会の意見をきいて、内閣総理大臣が任命する。

3 監事は、原子力委員会の意見をきいて、内閣総理大臣が任命する。

(役員の任期)

第11条 理事長、副理事長及び理事の任期は、4年とし、監事の任期は、2年とする。ただし、補欠の役員の任期は、前任者の残任期間とする。

2 役員は、再任されることができる。

(役員の欠格条項)

第12条 次の各号の一に該当する者は、役員となることができない。

 一 国務大臣、国会議員、政府職員(人事院が指定する非常勤の者を除く。)、地方公共団体の議会の議員又は地方公共団体の長若しくは常勤の職員
 二 政党の役員
 三 物品の製造若しくは販売若しくは工事の請負を業とする者で公社と取引上密接な利害関係を有するもの又はこれらの者が法人であるときはその役員(いかなる名称によるかを問わず、これと同等以上の職権又は支配力を有する者を含む。)
 四 前号に掲げる専業者の団体の役員(いかなる名称によるかを問わず、これと同等以上の職権又は支配力を有する者を含む。)

(役員の解任)

第13条 内閣総理大臣は、役員が前条各号の一に該当するに至ったときは、その役員を解任しなければならない。

2 内閣総理大臣は、役員が次の各号の一に該当するとき、その他役員たるに適しないと認めるときは、理事長にあっては原子力委員会の同意を得て、副理事長及び理事にあっては理事長及び原子力委員会の意見をきいて、監事にあっては原子力委員会の意見をきいて、これらの者を解任することができる。

 一 心身の故障のため職務の執行に堪えないと認められるとき。
 二 職務上の義務違反があるとき。

(役員の兼職禁止)

第14条 役員は、営利を目的とする団体の役員となり、又は自ら営利事業に従事してはならない。

(代表権の制限)

第15条 公社と理事長、副理事長又は理事との利益が相反する事項については、これらの者は、代表権を有しない。この場合には、監事が公社を代表する。

(代理人の選任)

第16条 理事長、副理事長及び理事は、公社の職員のうちから、公社の業務の一部に関し一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する代理人を選任することができる。

(職員の任命)

第17条 公社の職員は、理事長が任命する。

(役員及び職員の公務員たる性質)

第18条 役員及び職員は、刑法(明治40年法律第45号)その他の罰則の適用については、法令により公務に従事する職員とみなす。

  第3章 業  務

(業務の範囲)

第19条 公社は、第1条の目的を達成するため、次の業務を行う。

 一 核原料物質の探鉱、採鉱及び選鉱を行うこと。
 二 核原料物質の輸入並びに買取及び売渡を行うこと。
 三 核燃料物質の生産及び加工を行うこと。
 四 核燃料物質の輸入及び輸出並びに買取、売渡及び貸付を行うこと。
 五 第一号及び第三号に掲げる業務の実施に伴い生ずる副産物の売渡を行うこと。
 六 前各号に掲げるもののほか、第1条の目的を達成するため必要な業務を行うこと。

2 公社は、前項第六号に掲げる業務を行おうとするときは、内閣総理大臣の認可を受けなければならない。

(業務運営の基準)

第20条 公社の業務は、原子力委員会の議決を経て内閣総理大臣が定める核原料物質の開発及び核燃料物質の生産並びにこれらの物質の管理に関する基本計画に基いて行われなければならない。

(業務報告書)

第21条 公社は、毎事業年度、業務報告書を作成し、当該事業年度経過後2月以内に内閣総理大臣に提出しなければならない。

2 内閣総理大臣は、前項の規定により業務報告書の提出を受けたときは、これに意見を附し、内閣を経て国会に報告しなければならない。

3 第1項に規定する業務報告書の記載事項は、総理府令で定める。

  第4章 財務及び会計

(事業年度)

第22条 公社の事業年度は、毎年4月1日に始まり、翌年3月31日に終る。

(予算等の認可等)

第23条 公社は、毎事業年度、予算、事業計画及び資金計画を作成し、事業年度開始前に内閣総理大臣の認可を受けなければならない。

 これを変更しようとするときも、同様とする。

2 公社は、前項の規定により内閣総理大臣の認可を受けたときは、当該認可に係る資金計画を遅滞なく会計検査院に提出しなければならない。

(決算)

第24条 公社は、毎事業年度の決算を翌年度の6月30日までに完結しなければならない。

第25条 公社は、毎事業年度、財産目録、貸借対照表及び損益計算書(以下この条及び次条において「財務諸表」という。)を作成し、決算完結後1月以内に内閣総理大臣に提出し、その承認を受けなければならない。

2 公社は、前項の規定により内閣総理大臣の承認を受けたときは、遅滞なく当該財務諸表を公告しなければならない。

第26条 公社は、毎事業年度、予算の区分に従いその実施の結果を明らかにした説明書を作成し、前条第1項の規定により内閣総理大臣の承認を受けた当該事業年度の財務諸表を添え、遅滞なく内閣総理大臣に提出しなければならない。

2 内閣総理大臣は、前項の規定により説明書及び財務諸表の提出を受けたときは、これを内閣に送付しなければならない。

3 内閣は、前項の規定により送付を受けた説明書及び財務諸表を会計検査院の検査を経て国会に報告しなければならない。

4 第1項に規定する説明書の記載事項は、総理府令で定める。

(利益及び損失の処理)

第27条 公社は、毎事業年度、経営上利益を生じたときは、前事業年度から繰り越した損失をうめ、なお残余があるときは、その残余の額は、積立金として整理しなければならない。

2 公社は、毎事業年度、経営上損失を生じたときは、前項の規定による積立金を減額して整理し、なお不足があるときは、その不足額は、繰越欠損金として整理しなければならない。

(借人金)

第28条 公社は、内閣総理大臣の認可を受けて、短期借入金をすることができる。

2 前項の規定による短期借入金は、当該事業年度内に償還しなければならない。ただし、資金の不足のため償還することができないときは、その償還することができない金額に限り、内閣総理大臣の認可を受けて、これを借り換えることができる。

3 前項ただし書の規定により借り換えた短期借入金は、1年以内に償還しなければならない。

(補助金)

第29条 政府は、予算の範囲内において、公社に対し、その業務に要する経費の一部を補助することができる。

(余裕金の運用)

第30条 公社は、次の方法による場合を除くほか、業務上の余裕金を連用してはならない。

 一 国債の保有
 二 銀行への預金又は郵便貯金

(財産の処分等の制限)

第31条 公社は、総理府令で定める重要な財産を譲渡し、又は担保に供しようとするときは、内閣総理大臣の認可を受けなければならない。

(給与及び退職手当の支給の基準)

第32条 公社は、その役員及び職員に対する給与及び退職手当の支給の基準を定め、又は変更しようとするときは、内閣総理大臣の承認を受けなければならない。

(会計検査)

第33条 公社の会計については、会計検査院が検査する。

(総理府令への委任)

第34条 この法律及びこれに基く命令に規定するもののほか、公社の財務及び会計に関し必要な事項は、総理府令で定める。

  第5章 監  督

(監督)

第35条 公社は、内閣総理大臣が監督する。

2 内閣総理大臣は、この法律を施行するため必要があると認めるときは、公社に対して、その業務に関し監督上必要な命令をすることができる。

(報告及び検査)

第36条 内閣総理大臣は、必要があると認めるときは、公社に対して業務の状況に関し報告をさせ、又はその職員をして公社の事務所その他の事業所に立ち入り、業務の状況若しくは帳簿、書類その他の必要な物件を検査させることができる。

2 前項の規定により職員が立入検査をする場合においては、その身分を示す証明書を携帯し、関係人にこれを提示しなけれぼならない。

3 第1項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。

  第6章 雑  則

(恩給)

第37条 公社の設立の際現に恩給法(大正12年法律第48号)第19条に規定する公務員又は同条に規定する公務員とみなされる者(以下この条において「公務員又は公務員とみなされる者」という。)として在職するものが、引き続いて公社の役員又は職員となり、更に引き続いて公務員又は公務員とみなされる者となったとき(公社の設立の際現に公務員又は公務員とみなされる者として在職するものが引き続いて公務員又は公務員とみなされる者として在職し、更に引き続いて公社の役員又は職員となり、更に引き続いて公務員又は公務員とみなされる者となったときを含む。)は、その公務員又は公務員とみなされる者に給すべき普通恩給については、当該公社の役員又は職員としての在職年月数を公務員又は公務員とみなされる者としての在職年月数に通算する。

2 前項の規定は、公社の役員又は職員となるまでの公務員又は公務員とみなされる者としての在職年が普通恩給についての最短恩給年限に達する者については、適用しないものとする。

3 第1項の規定の適用を受ける者についての恩給法第64条ノ2(再就職の場合の普通恩給)の規定の適用又は準用については、公社の役員又は職員としての就職を再就職とみなす。

第38条 公社は、前条第1項の規定の適用を受ける公社の役員若しくは職員であった者又はその遺族の恩給の支払に充てる金額を、政令で定めるところにより、国庫に納付するものとする。

(大蔵大臣との協議)

第39条 内閣総理大臣は、次の場合には、あらかじめ大蔵大臣と協議しなければならない。

 一 第23条第1項、第28条第1項及び第2項ただし書並びに第31条の規定による認可をしようとするとき。
 二 第25条第1項及び第32条の規定による承認をしようとするとき。

 三 第26条第4項、第31条及び第34条の規定により総理府令を定めようとするとき。

(他の法令の準用)

第40条 不動産登記法(明治32年法律第24号)その他政令で定める法令については、政令で定めるところにより、公社を国の行政機関とみなして、これらの法令を準用する。

  第7章 罰  則

(罰則)

第41条 第36条第1項の規定に違反して報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は検査を拒み、妨げ、若しくは忌避した場合においては、その違反行為をした公社の役員又は職員を5万円以下の罰金に処する。

第42条 次の各号の一に該当する場合においては、その違反行為をした公社の役員又は職員を3万円以下の過料に処する。

 一 この法律により内閣総理大臣の認可又は承認を受けなければならない場合において、その認可又は承認を受けなかったとき。
 二 第5条第1項の規定による政令に違反して登記することを怠ったとき。
 三 第19条第1項に規定する業務以外の業務を行ったとき。
 四 第30条の規定に違反して業務上の余裕金を運用したとき。
 五 第35条第2項の規定による内閣総理大臣の命令に違反したとき。

第43条 第6条の規定に違反した者は、1万円以下の過料に処する。

  附 則

(施行期日)

第1条 この法律は、公布の日から施行する。

(公社の設立)

第2条 内閣総理大臣は、第10条第1項又は第3項の例により、公社の理事長又は監事となるべき者を指名する。

2 前項の規定により指名された理事長又は監事となるべき者は、公社の成立の時において、この法律の規定により、それぞれ理事長又は監事に任命されたものとする。

3 内閣総理大臣は、設立委員を命じて、公社の設立に関する事務を処理させる。

4 設立委員は、公社の設立の準備を完了したときは、その事務を第1項の規定により指名された理事長となるべき者に引き継がなければならない。

5 第1項の規定により指名された理事長となるべき者は、前項の事務の引継を受けた日において、政令で定めるところにより、設立の登記しなければならない。

6 公社は、前項の規定による設立の登記をすることによって成立する。

(経過規定)

第3条 公社の最初の事業年度は、第22条の規定にかかわらず、その成立の日に始まり、昭和32年3月31日に終るものとする。

第4条 公社の最初の事業年度の予算、事業計画及び資金計画については、第23条第1項中「事業年度開始前に」とあるのは、「公社の成立後遅滞なく」と読み替えるものとする。

(登録税法の改正)

第5条 登録税法(明治29年法律第27号)の一部を次のように改正する。

 第19条第一号ノ七の次に次の1号を加える。

 一ノ八 原子燃料公社自己ノ為ニスル登記又ハ登録

(印紙税法の改正)

第6条 印紙税法(明治32年法律第54号)の一部を次のように改正する。

 第5条第六号ノ四の次に次の1号を加える。

 六ノ四ノニ 原子燃料公社ノ発スル証書、帳簿

(所得税法の改正)

第7条 所得税法(昭和22年法律第27阜)の一部を次のように改正する。

 第3条第1項中第四号の五を第四号の六とし、第四号の二から第四号の四までを1号ずつ繰り下げ、第四号の次に次の1号を加える。

 四の二 原子燃料公社

(法人税法の改正)

第8条 法人税法(昭和22年法律第28号)の一部を次のように改正する。

 第4条第二号中「日本電信電話公社」の下に「、原子燃料公社」を加える。

(地方税法の改正)

第9条 地方税法(昭和25年法律第226号)の一部を次のように改正する。

 第72条の4第1項第二号及び第73条の4第1項第一号中「日本電信電話公社」の下に「原子燃料公社」を加える。

 第349条の3に次の1項を加える。

11 原子燃料公社が設置する核燃料物質の生産及び加工の用に供する設備並びにこれらの設備を収容する家屋に対して課する固定資産税の課税標準は、前2条の規定にかかわらず、当該固定資産に対して新たに固定資産税が課されることとなった年度から5年度分の固定資産税については、当該固定資産に係る固定資産税の課税標準となるべき価格の3分の1の額とし、その後5年度分の固定資産税については、当該固定資産に係る固定資産税の課税標準となるべき価格の3分の2の額とする。第489条第1項第九号の三の次に次の1号を加える。

  九の四 ウラン地金及びトリウム地金

(行政管理庁設置法の改正)

第10条 行政管理庁設置法(昭和23年法律第77号)の一部を次のように改正する。第2条第十二号中「公共企業体(公共企体等労働関係法(昭和23年法律第257号)第2条第1項第一号に掲げる公共企業体をいう。)」の下に「、原子燃料公社」を加える。

(国の所有に属する物品の売払代金の納付に関する法律の改正)

第11条 国の所有に属する物品の売払代金の納付に関する法律(昭和24年法律第176号)の一部を次のように改正する。

 第5条中「及び日本電信電話公社」を「、日本電信電話公社及び原子燃料公社」に改める。

(政府契約の支払遅延防止等に関する法律の改正)

第12条 政府契約の支払遅延防止等に関する法律(昭和24年法律第256号)の一部を次のように改正する。

 第14条中「日本電信電話公社」の下に「、原子燃料公社」を加える。

(国庫出納金等端数計算法の改正)

第13条 国庫出納金等端数計算法(昭25年法律第61号)の一部を次のように改正する。

 第1条第1項中「日本電信電話公社」の下に「、原子燃料公社」を加える。

(公職選挙法の改正)

第14条 公職選挙法(昭和25年法律第100号)の一部を次のように改正する。

 第145条第1項及び第166条第一号中「又は日本電信電話公社」を「、日本電信電話公社又は原子燃料公社」に改め、第239条の2第二号中「日本専売公社」の下に「若しくは原子燃料公社」を加える。

(予算執行職員等の責任に関する法律の改正)

第15条 予算執行職員等の責任に関する法律(昭和25年法律第172号)の一部を次のように改正する。

 第9条第1項中「日本電信電話公社」の下に「、原子燃料公社」を加える。

(港湾法の改正)

第16条 港湾法(昭和25年法律第218号)の一部を次のように改正する。

 第37条第3項中「日本電信電話公社」の下に「、原子燃料公社」を加える。

(土地収用法の改正)

第17条 土地収用法(昭和26年法律第219号)の一部を次のように改正する。

 第3条中第三十四号を第三十五号とし、第三十三号の次に次の1号を加える。

 三十四 原子燃料公社が原子燃料公社法(昭和31年法律第94号)第19条第1項各号に掲げる業務の用に供する施設(核原料物質開発促進臨時措置法(昭和31年法律第93号)の規定により土地を使用することができるものを除く。)

(自動車損害賠償保障法の改正)

第18条 自動車損害賠償保障法(昭和30年法律第97号)の一部を次のように改正する。

 第10条、第72条第1項及び第78条第2項中「日本電信電話公社」の下に「、原子燃料公社」を加える。

  理 由

 原子力基本法に基き核原料物質の開発及び核燃料物質の生産並びにこれらの物質の管理を総合的かつ効率的に行うため原子燃料公社を設立し、その組織、業務、財務、会計等に関し規定を設ける必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。