資料

原子力基本法
(昭和30年12月19日法律第186号)

第1章 総則

(目的)
第1条 この法律は、原子力の研究、開発及び利用を推進することによって、将来におけるエネルギー資源を確保し、学術の進歩と産業の振興とを図り、もって人類社会の福祉と国民生活の水準向上とに寄与することを目的とする。

(基本方針)
第2条 原子力の研究、開発及び利用は、平和の目的に限り、民主的な運営の下に、自主的にこれを行うものとし、その成果を公開し、進んで国際協力に資するものとする。

(定義)
第3条 この法律において次に掲げる用語は、次の定義に従うものとする。

 1「原子力」とは、原子核変換の過程において原子核から放出されるすべての種類のエネルギーをいう。
 2「核燃料物質」とは、ウラン、トリウム等原子核分裂の過程において高エネルギーを放出する物質であって、政令で定めるものをいう。
 3「核原料物質」とは、ウラン鉱、トリウム鉱その他核燃料物質の原料となる物質であって、政令で定めるものをいう。
 4「原子炉」とは、核燃料物質を燃料として使用する装置をいう。ただし、政令で定めるものを除く。
 5「放射線」とは、電磁波又は粒子線のうち直接又は間接に空気を電離する能力をもつもので、政令で定めるものをいう。

第2章 原子力委員会

(設置)
第4条 原子力の研究、開発及び利用に関する国の施策を計画的に遂行し、原子力行政の民主的な運営を図るため、総理府に原子力委員会を置く。

(任務)
第5条 原子力委員会は、原子力の研究、開発及び利用に関する事項について企画し、審議し、及び決定する。

(組織、運営及び権限)
第6条 原子力委員会の組織、運営及び権限については、別に法律で定める。

第3章 原子力の開発機関

(原子力研究所及び原子燃料公社)
第7条 政府の監督の下に、原子力の開発に関する研究及び実験、その他原子力の開発促進に必要な事項を行わしめるため原子力研究所を、核原料物質及び核燃料物質の探鉱、採鉱、精錬、管理等を行わしめるため原子燃料公社を置く。

2 原子力研究所及び原子燃料公社に関する規定は、別に法律で定める。

第4章 原子力に関する鉱物の開発取得

(鉱業法の特例)
第8条 核原料物質に関する鉱業権又は租鉱権に関しては、別に法律をもって、鉱業法(昭和25年法律第289号)の特例を定めるものとする。

(買取命令及び譲渡命令)
第9条 政府は、別に法律で定めるところにより、その指定する者に対し、核原料物質を買い取るべきことを命じ、又は核原料物質の生産者又は所有者若しくは管理者に対し、政府の指定する者に核原料物質を譲渡すべきことを命ずることができる。

(核原料物質の管理)
第10条 核原料物質の輸入、輸出、譲渡、譲受及び精錬は、別に法律で定めるところにより、政府の指定する者に限ってこれを行わしめるものとする。

(奨励金等)
第11条 政府は、核原料物質の開発に寄与する者に対し、予算の範囲内において奨励金又は賞金を交付することができる。

第5章 核燃料物質の管理

(核燃料物質に関する規制)
第12条 核燃料物質を生産し、輸入し、輸出し、所有し、所持し、譲渡し、譲り受け、使用し、又は輸送しようとする者は、別に法律で定めるところにより政府の行う規制に従わなければならない。

(核燃料物質の譲渡命令)
第13条 政府は、前条に規定する規制を行う場合において、別に法律で定めるところにより、核燃料物質を所有し、又は所持する者に対し、譲渡先及び価格を指示してこれを譲渡すべきことを命ずることができる。

第6章 原子炉の管理

(原子炉の建設等の規制)
第14条 原子炉を建設しようとする者は、別に法律で定めるところにより政府の行う規制に従わなければならない。これを改造し、又は移動しようとする者も、同様とする。

第15条 原子炉を譲渡し、又は譲り受けようとする者は、別に法律で定めるところにより政府の行う規制に従わなければならない。

第16条 前2条に規定する規制に従って原子炉を建設し、改造し、移動し、又は譲り受けた者は、別に法律で定めるところにより、操作開始前に運転計画を定めて、政府の認可を受けなければならない。

第7章 特許発明等に対する措置

(特許法による措置)
第17条 政府は、原子力に関する特許出願に係る発明又は特許発明につき、公益上必要があると認めるときは、特許法(大正10年法律第96号)第15条及び第40条の規定により措置するものとする。

(譲渡制限)
第18条 原子力に関する特許発明、技術等の国外流出に係る契約の締結は、別に法律で定めるところにより政府の行う規制に従わなければならない。

(奨励金等)
第19条 政府は、原子力に関する特許出願に係る発明又は特許発明に関し、予算の範囲内において奨励金又は賞金を交付することができる。

第8章 放射線による障害の防止

(放射線による障害の防止措置)
第20条 放射線による障害を防止し、公共の安全を確保するため、放射性物質及び放射線発生装置に係る製造、販売、使用、測定等に対する規制その他保安及び保健上の措置に関しては、別に法律で定める。

第9章 補 償

(補償〉
第21条 政府又は政府の指定する者は、この法律及びこの法律を施行する法律に基き、核原料物質の開発のためその権限を行う場合において、土地に関する権利、鉱業権又は租鉱権その他の権利に関し、権利者及び関係人に損失を与えた場合においては、それぞれ法律で定めるところにより、正当な補償を行わなければならない。

 附  則

 この法律は、昭和31年1月1日から施行する。

 理  由

 原子力の研究、開発及び利用を推進することによって、将来におけるエネルギー資源を確保し、学術の進歩と産業の振興とを図る必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。

 附帯決議(30.12.16 参議院商工委員会)

 本法の改廃及び附属法、関係法の制定、運用に当っては、本法の趣旨並びに提案の経過に鑑み、あくまで超党派性を堅持し、国民的協力態勢を確立すべきである。

右決議する。