原水爆実験影響調査について

 本年4月20日以降8月末日までの期間内にエニウェトック環礁付近において、アメリカの原水爆実験が行われることが本年3月1日米国原子力委員会から発表された。

 なお、米側は実験終了後その影響の科学的海洋調査を行う計画の趣で、これに関し日本側としての調査希望事項を非公式に問合わせてきた。

 3月9日開催のわが原子力委員会の席上、本件について藤岡委員から発言があり、日本においても、将来原子力平和利用に対する参考ともなるので、今回の原爆実験に対し国家的規模で科学的調査を行うことが適当である旨決定した。

 よって藤岡委員を世話人として関係各省及び学識経験者を集めて数回会議を開催した結果、次の事項を申合せた。

原爆実験影響調査に関する打合せ事項

1.原爆実験影響調査のため調査船をおおむね第1回の実験後とその後の海洋汚染のピーク時の2回に派遣するものとする
  なお調査船の派遣について今年の夏にエクア・パックの海洋調査を行うため派遣する船舶を利用するものとする
2.調査船の派遣にあたって前回と同様に技術顧問団を編成するものとする
3.測定方法の統一については、日本学術会議放射線影響調査特別委員会の基礎班において行うものとする
4.汚染物件の最大許容量の基準については厚生省が定めるものとする
5.外来放射能汚染のサンプルの採取については、運輸省および水産庁がそれぞれ行うものとする
6.空気、雨水等の汚染調査については、中央気象台において行うものとする
7.食品、飲料水等の試験的衛生検査については厚生省において行うものとする
8.農作物等の汚染調査については、農林省において行うものとする
9.今回の調査に要する経費については関係各省庁がそれぞれ要求することとし、原子力委員会は、原爆被害対策に関する調査研究連絡協議会と協力して経費の調整および推進を図るものとする

 また調査船の派遣に伴なう技術顧問団も第9表のように決定し、団長に藤岡委員、副団長に檜山東大教授が決定した。

 なおこの顧問団は厚生省において世話することになり、目下派遣すべき調査船、調査員、及び調査事項等について審議中である。