原子力委員会月報発刊にあたって

 昭和31年の年明けとともに原子力委員会および総理府原子力局が設置されてから、はやくも3ヵ月余がすぎた。昨年の第23臨時国会において原子力行政機構の新体制の決定をみてから、わずか半月の間に委員会および局が設立され、しかも設置早々第24通常国会に提出すべきいくつかの原子力関係法案の審議と、いわゆる原子力予算の査定等いずれも緊急を要する問題の処理をまかされたため、この1月から3月の中旬までは、時間的に非常に制約を受けなければならなかった。幸いにして正力委員長はじめ、石川、藤岡、湯川、有沢の各委員の熱意と、国会における原子力合同委員会の絶大なる御努力によって、これら緊急問題もそれぞれ適切に措置され、そのあるものはすでに着々実施されるに至ったことは御同慶にたえないところである。

 この間、わが国の原子力問題については、新聞あるいはラジオを通じ他の一般的問題より比較的詳細に報道されたけれども、原子力委員会および総理府原子力局の仕事を、具体的にまとめた形で発表されることはこれまでなかった。しかしながら原子力基本法に明示するとおり、わが国における原子力の開発、利用については、これを民主的に運営し自主的に推進し、その成果をひろく国民に公開することが大方針とされている。原子力委員会においてもはやくから、わが国における原子力開発利用の推進状況を適当な形で国民の眼にひろくふれるようにする必要があると説かれていた。

 ただ原子力局設置は忽々の期に行われ、本年3月末までの定員は極めて僅少であったため、必要な広報措置をとることができなかった次第である。

 4月から新年度に入るにおよび、原子力委員会の仕事も軌道にのり、原子力局の職員も増強され、一方民間においては、正力委員長の提唱と産業界の総意にもとづき3月1日から日本原子力産業会議が新たに発足するにいたった。ここにおいて、われわれは当初よりの念願であった原子力開発、利用に関する広報の具体的な手段の一つとして、”原子力委員会月報”を毎月発行することとしたのである。

 原子力委員会月報は、その名のごとく毎月のわが国における原子力開発利用状況を、主として原子力委員会の審議および決定事項を通じて記録し編集したもので、その発刊にあたっては、日本原子力産業会議の緊密な協力をえており、民間一般に対する月報の頒布は同会議の手により行われることとなっている。

 この原子力委員会月報は、わが国の原子力開発に関する政策、およびその実施状況をできるだけ正確かつ詳細に伝えることを本旨としているので、その意味で今後各方面にひろく活用されることを心より希望する。

昭和31年4月20日
総理府原子力局長
佐々木 義武

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