第2章 国内外の原子力開発利用の状況
7.バックエンド対策

(2)原子力施設の廃止措置対策

 原子力施設の廃止措置は,原子力施設設置者の責任の下,安全確保を大前提に地域社会との協調を図りつつ実施することが重要であり,このために必要な技術開発を進めていきます。
①原子力施設の廃止措置
 本年6月,日本原子力発電(株)は東海発電所を1998年3月末に運転を停止することを決定し,公表した。今後4~5年かけて燃料を取り出し,その後安全貯蔵した後,解体撤去することとしているが,具体的なスケジュール等については,現在検討がなされている。この様な状況を受け,原子力施設の廃止措置に対する国民の関心が高まっており,早期確立が求められている。
 原子力施設の廃止措置の基本方針としては,原子力施設設置者の責任の下,安全確保を大前提として,地域社会との協調を図りつつ進めることが重要であり,このために必要な技術を開発を進めるとしている。とくに,商業用発電炉の廃止措置については,原子炉の運転終了後できるだけ早い時期に解体撤去することを原則とし,解体撤去後の敷地利用については,地域社会との協調を図りつつ,原子力発電炉用地として,引き続き利用することとしている。
 廃止措置に係る技術開発については,1986年度から日本原子力研究所において我が国で初めて原子力発電に成功した動力試験炉(JPDR*)の解体実地試験を実施し,本年3月には全ての地上構造物が撤去され,試験が終了した。
 これにより,解体前に各部分の放射能量を測定・評価する技術,解体作業従事者の被ばくを防ぐ遠隔ロボットによる解体技術,安全に解体作業を行う最適な手順を評価するシステムの開発,実証などの大きな成果が得られており,これら開発された技術については,今後の原子炉の解体にも活用されることとなる。


* JPDR: Japan Power Demonstration Reacter

 また,一括撤去・遮蔽隔離方式による廃止措置としては,日本原子力研究所の研究用原子炉JRR-3において原子炉を生体遮蔽とともに撤去して大型廃棄物保管庫に密閉した例,原子力船「むつ」の原子炉を原子炉室ごと船体から切り離して保管建屋((むつ科学技術館,図2-8-8参照))内で安全に保管して,一般に公開・展示されている例がある。
 このような原子力施設の廃止措置作業は,既存技術またはその改良により対応できるものと考えられるが,作業者の安全の一層の向上,経済性を図る等の観点から,日本原子力研究所及び(財)原子力施設デコミッショニング研究協会において,除染技術,測定・評価技術,解体技術,解体システムエンジニアリング技術及び安全技術に関する技術の高度化が進められている。また,(財)原子力発電技術機構では,解体技術の安全性及び信頼性を確かめるための確証試験を実施している。

 一方,再処理施設,燃料加工施設等の原子炉以外の原子力施設の廃止措置に際しては,放射化についてはほとんど考慮する必要がないが,TRU核種及び核分裂生成物による汚染に対応するため,原子炉の廃止措置とは異なった観点からの技術開発が必要である。そのため,1990年度から日本原子力研究所の再処理試験施設(JRTF*)をモデルとして再処理施設の解体技術開発が進められている。また,動力炉・核燃料開発事業団においても施設の更新,解体等のための技術開発が行われている。


*JRTF: JAERI's Reprocessing Test Facility

 また,廃止措置に係る国際協力については,経済協力開発機構原子力機関(OECD/NEA)の「原子力施設デコミッショニングプロジェクトに関する科学技術情報交換協力計画」に参加しており,日本原子力研究所を中心として廃止措置に関する情報交換を行っている。
②廃止措置により発生する廃棄物
 原子力施設の廃止措置により発生する廃棄物については,原子力施設設置者に,その処理処分を適切かつ確実に行う責任がある。当該廃棄物は,その大部分が放射性廃棄物ではないが,発生する放射性廃棄物は,その対象施設により,発電所廃棄物,サイクル廃棄物等に分類可能であり,基本的には,各々の処理処分方策に従って対処できると考えられるが,放射能レベルの比較的高いものから低いものまで幅広く分布していること,比較的短期間に大量に発生すること等の特徴を考慮した合理的な処理処分方策の検討を進めていくことが重要である。

 日本原子力研究所においては,JPDRの解体実地試験により発生した極めて放射能レベルが低い解体コンクリート廃棄物の廃棄物埋設実地試験を実施している。
 また,廃棄物の減量,資源の有効利用の観点から,廃棄物を再利用することも重要である。日本原子力研究所及び(財)原子力施設デコミッショニング研究協会では,金属廃棄物の再利用に関する技術開発が行われている。


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