第2章 国内外の原子力開発利用の状況
7.バックエンド対策

(1)放射性廃棄物の処理処分対策

 放射性廃棄物は,放射能レベルの高低,含まれる放射性物質の種類等により多種多様です。このため,この多様性を十分踏まえた適切な区分管理と,区分に応じた合理的な処理処分を行うとともに,資源の有効利用の観点から再利用についての検討も進めることとしています。
①高レベル放射性廃棄物の処理処分
 使用済燃料の再処理に伴い発生する高レベル放射性廃棄物の処分は,とくに重要な課題であり,処分の手順,スケジュール,関係各機関の責任と役割等を明確に示しつつ,国民の理解と納得を得て円滑に実施していくこととしている。

(ア)処理処分の基本方針
 原子力開発利用長期計画において示したとおり,我が国では,使用済燃料の再処理の結果生ずる高レベル放射性廃液を
 a)安定な形態に固化(ガラス固化)し
 b)30年から50年間程度冷却のため貯蔵した後
 c)地下深い地層中に処分する
 ことを基本的な方針としている。

(イ)高レベル放射性廃棄物の発生及び管理の状況
 現在,我が国の使用済燃料の再処理は,動力炉・核燃料開発事業団の東海再処理工場並びに英国核燃料会社(BNFL*)及びフランス核燃料会社(C0GEMA*)の専処理工場において実施されている。
 これら再処理工場のうち,東海再処理工場で生じた高レベル放射性廃液は,同工場内の貯蔵タンクに厳重な安全管理の下に保管されている。1996年3月末現在,この高レベル放射性廃液量は,約526立方メートルである。


* BNH,: British Nuclear Fuels plc
* COGEMA: Compagnie Generale des Matieres Nucleaires

 さらに,当該放射性廃液をガラス固化する技術の開発を目的としたガラス固化技術開発施設(TVF*)が,1995年12月に施設の使用前検査に合格し,現在開発運転を実施している。なお,1996年11月末現在の同施設におけるガラス固化体の保管量は62本である。
 一方,我が国の電気事業者は,BMFL及びCOGEMAと再処理委託契約を結んでいる。その契約量はこれまで,軽水炉使用済燃料約5,600トンU,ガス炉使用済燃料約1,500トンUであり,これらの契約に基づく再処理に伴い発生する高レベル放射性廃棄物は,ガラス固化して安定な形態とされた後,我が国の電気事業者に返還されることとなっており,1995年4月にフランスより返還された28本をはじめ,今後10数年間にわたり年1~2回の割合で合計3千数百本が返還される予定である。
(ウ)責任分担
 高レベル放射性廃棄物の処理処分を円滑に進めるためには,関係者がそれぞれの立場から,主体的にその責任を果たしていかなくてはならないが,その際,国は処分方策を総合的に策定し,また,処分の安全性の確認を行うとともに,処分の責任を長期的に担保するために必要な法制度等を整備するなど,最終的な安全確保に必要な所要の措置を講じなければならない。
 また,動力炉・核燃料開発事業団は,地層処分の研究開発の中核的な推進機関として処分研究開発を実施するほか,地層処分研究開発の基盤となる深部地質環境の科学的研究を着実に進める。
 他方,事業活動等に伴って生じた放射性廃棄物の処理処分の責任については,各事業者等が自らの責任において処理処分することが基本である。実際に処分の責任を有する者は,その具体的実施計画を整備し,処分費用を負担するなど,処分を適切かつ確実に行う責務を果たす必要があることから,電気事業者は処分に必要な資金の確保のみならず,研究開発段階においても高レベル放射性廃棄物の発生に密接に関連する者としての責任を十分踏まえた役割を果たすべきことが,原子力開発利用長期計画にも示されている。


* TVF: Tokai Vitrification Facility

 以上の責任分担に関する考え方を踏まえ,高レベル放射性廃棄物の処分対策に係る,当面の具体的な推進方策の検討等を官民の協力の下に行うため,1991年10月より,国,電気事業者,動力炉・核燃料開発事業団の3者により「高レベル放射性廃棄物対策推進協議会」が組織されている。
 さらに,高レベル放射性廃棄物処分事業の準備の推進を図るため,1993年5月には同協議会の下に「高レベル事業推進準備会(SHP*)」が設置された。高レベル事業推進準備会では,2000年を目安とした実施主体の設立を目指し,実施主体に係る諸環境の整備に必要な事項について調査・研究を進めてきており,本年5月には「中間取りまとめ」として,その基礎的検討の成果を事業計画,実施主体,事業資金,地域との共生,国民的理解の促進等の項目に沿って取りまとめた。本取りまとめは,関係各方面において幅広く検討の資料として活用されるとともに,国民の理解の促進,処分事業の円滑な推進にも役立てることとしている。今後,同準備会は,さらに調査・研究を進め,具体的方策について取りまとめを行うこととしている。
(エ)高レベル放射性廃棄物処理処分対策への取組
 原子力委員会は昨年9月,委員会決定において,高レベル放射性廃棄物の処分方策を進めるに当たっては,研究開発を計画的に進めることのみならず,私たち国民一人一人が自らの問題として高レベル放射性廃棄物処分をとらえ,開かれた議論に基づく国民的合意を形成していくことが重要であるとし,その上で,原子力委員会は次の2つの組織を設置し,現在鋭意検討を進めている。


* SHP :Steering Committee on High-Level-Radioactive-Waste Project

(a)高レベル放射性廃棄物処分懇談会
 原子力委員会は,高レベル放射性廃棄物の処分の円滑な実施に当たっては,国民の合意形成が重要であることから,社会的・経済的側面を含めた幅広い検討を行う場として「高レベル放射性廃棄物処分懇談会」を設置した。
 この懇談会においては,環境,倫理,法律,経済等の専門家や消費者及び一般廃棄物等様々な分野,立場の皆様に参加を頂いて,処分の円滑な実施への具体的取組に向けた国民の理解と納得が得られるよう実施主体の在り方,処分に必要な資金の確保,サイト選定プロセス等高レベル放射性廃棄物処分の進め方についての検討を進めている。
 今後は,更に議論を深め,懇談会の進捗状況を取りまとめて公表し,国民の意見を聞くこととしており,更に,これらを踏まえた検討の後,懇談会としての意見を取りまとめる予定である。
(b)原子力バックエンド対策専門部会における技術的検討
 原子力委員会は,上記懇談会と同時に,処分に関する研究開発計画等の技術的事項等について調査審議を行う「原子力バックエンド対策専門部会」を設置した。
 原子力開発利用長期計画では,動力炉・核燃料開発事業団は2000年前までに予定している研究開発の成果の取りまとめを行い,国はその報告を受けて,我が国における地層処分の技術的信頼性等を評価することとしている。このため,専門部会においては,高レベル放射性廃棄物の地層処分研究開発等の今後のあり方について,設置以来鋭意検討を進めてきたところであり,11月15日に開催された第7回会合において報告書案「高レベル放射性廃棄物の地層処分研究開発等の今後の進め方について案」が取りまとめられ,原子力委員会の決定に基づきこれを公表するとともに,現在,広く国民の意見を募っている。今後,国民から集まった意見は同専門部会において検討されることとなっている。

 高レベル放射性廃棄物の処分は,原子力開発利用を着実に推進する上で避けて通れない重要な課題であり,原子力委員会は,高レベル放射性廃棄物の処分方策に関し,これらの場における検討を有機的に連携しつつ,着実にその具体化を進め,これを国民の前に分かりやすい形で明らかにしていくこととしている。
(オ)高レベル放射性廃棄物処理処分の研究開発
 高レベル放射性廃棄物の処理処分に関する研究開発については,固化処理技術の実証が着実に進められている一方,国の重要プロジェクトとして,地層処分技術の確立を目指した地層処分研究開発及び地層処分研究開発の基盤となる深部地質環境の科学研究等が,動力炉・核燃料開発事業団を中核推進機関として関係機関の協力のもと強力に推進されている。
 このうち,地層処分研究開発については,多重バリアシステムの長期にわたる性能の評価研究,人工バリア技術及びこれを基にした処分場の設計,建設,操業に関する処分技術の研究開発,我が国の地質環境に係る調査研究(地質環境条件の調査研究)が進められている。
 また,動力炉・核燃料開発事業団は,1991年度までの成果を「高レベル放射性廃棄物地層処分研究開発の技術報告書-平成3年度-」として取りまとめ,1992年9月に公表した。さらに,原子力委員会放射性廃棄物対策専門部会は,同報告書について検討を行い,1993年7月に報告書「高レベル放射性廃棄物地層処分研究開発の進捗状況について」を取りまとめた。その中で,我が国における地層処分の安全確保を図っていく上での技術的可能性が明らかにされている。今後,動力炉・核燃料開発事業団が2000年前までに予定している第2次取りまとめについても,これを公表するとともに,国が評価を行うこととしている。
 現在,動力炉・核燃料開発事業団では,地層処分基盤研究施設等において,多重バリアシステムによる長期安定性を科学的,技術的に証明する性能評価研究等の研究を強力に進めている。また,動力炉・核燃料開発事業団等においては,カナダ原子力公社(AECL*)等との国際共同研究等の国際協力を積極的に進めている。
 一方,地層処分研究開発の基盤となる深部地質環境の科学的研究を
 行う深地層研究施設については,原子力開発利用長期計画において,地層処分研究に共通の基盤となる施設であるとともに,我が国における深地層についての学術研究にも寄与できる総合的な研究の場として整備していくことが重要とされており,また,我が国の地質の特性等を考慮して複数の設置が望まれるとされている。さらに,深地層の研究施設の計画は,深部地質環境の科学的研究の成果を基盤として進めることが重要であり,その計画は,処分場の計画とは明確に区別して進めることとしている。


* AECL:Atomic Energy of Canada Ltd.

 このため,動力炉・核燃料開発事業団の東濃地科学センター(岐阜県土岐市)において,地下数百メートルから千メートル程度に至る地下研究施設及び地上施設から構成される超深地層研究所を隣接の瑞浪市に設置することとして,1995年12月28日,同研究施設に放射性廃棄物を持ち込むことや使用することは一切しないし,将来においても放射性廃棄物の処分場とはしないこと等を定めた協定を岐阜県,瑞浪市及び土岐市との間で締結した。この施設では,地下深部における地下水や岩石の性質等に関する知見を得る地層科学研究を実施し,その成果は地層処分研究開発のみならず,地球科学等幅広い分野へ反映されるとともに,当該施設の特徴を生かした地震研究なども行われる予定である。
 また,動力炉・核燃料開発事業団が北海道幌延町で計画している貯蔵工学センターは,深地層研究を始めとする研究開発と併せて高レベル放射性廃棄物等の貯蔵を行う総合研究センターを目指すものであり,処分場の計画と明確に区別し,地元及び北海道の理解を得てその着実な推進を図っていくこととしており,今後も幅広く各方面との対話を図ることにより理解と協力を得つつ進めることとしている。
 このほか,高レベル放射性廃棄物に関する技術として,高レベル放射性廃棄物中に含まれる核種を,その半減期や利用目的に応じて分離し,有効利用を図るとともに,超ウラン元素などの長寿命核種を短寿命核種または非放射性核種に変換する,核種分離技術及び消滅処理技術は,最終処分の負担の軽減化とともに,資源を有効利用できる可能性があり,将来の技術として注目されている。現在,原子力委員会放射性廃棄物対策専門部会が1988年10月に示した核種分離・消滅処理技術の研究開発計画に基づいて,日本原子力研究所,動力炉・核燃料開発事業団を中心に長期的観点から基礎的研究開発が進められているほか,OECD/NEA*において,核種分離・消滅処理技術に関する情報交換の国際協力計画を行っている。
(カ)高レベル放射性廃棄物の返還輸送
 高レベル放射性廃棄物の我が国への最初の返還輸送が1995年2月から4月にかけて行われた。輸送容器に入れられた28本のガラス固化体を積み込んだ輸送船パシフィック・ピンテール号が,2月23日フランスのシェルブール港を出港し,4月26日に青森県むつ小川原港に無事入港,積み降ろされた輸送容器は,日本原燃(株)の青森県六ヶ所村廃棄物管理施設に搬入された。


* OECD/NEA:  Organization for Economic Cooperation& Development/Nuclear Energy Agency
* IMO: International Maritime Organization

 本輸送については,IAEA及び国際海事機関(IMO*)の定める国際基準を満たす等,十分な安全確保策を講じたものであるが,なお一層の安全性確保の観点から日英仏三国の関係者間の緊密な連携の下十分な準備を行うとともに,本輸送に関する国内外からの安全性への懸念を払拭するため,出入港日や輸送船名,個々の固化体の放射能量等の輸送の安全性に係わる情報の公開が行なわれた。
 次回輸送については,1997年1月から3月の間にガラス固化体40本を青森県に受け入れる予定として,現在日英仏3国の関係者間で調整が行われている。
 なお,同施設に搬入されたガラス固化体については,事業者が保安規定に基づく検査を青森県,六ヶ所村の職員の立会いの下に行い,また,国の確認を得て,貯蔵管理施設のピットに収納され,今後30年から50年間冷却のために同施設において安全に貯蔵管理される。

②低レベル放射性廃棄物処理処分
 低レベル廃棄物は,原子力発電所,再処理施設,MOX燃料加工施設,ウラン燃料加工施設,医療機関や研究所等から発生する廃棄物で,放射能濃度が低い廃棄物をいい,これらの廃棄物は,各事業所等において焼却や圧縮等の処理を行った後,安全に保管されている。また,原子力発電所から発生する低レベル廃棄物の一部は,固化処理の後に浅地中への埋設処分を実施しており,他の廃棄物についても,現在,具体的な処分方法を検討している。
(ア)発電所廃棄物
(a)発生の現状
 原子力発電所の運転及び定期点検において,低レベル放射性廃棄物(以下,「発電所廃棄物」という)が発生する。これら発電所廃棄物の処理については,各事業者が各発電所内で行っており,このうち液体の放射性廃棄物は蒸発濃縮した後,セメント等を用いてドラム缶に固化している。また,紙・布等の可燃物は焼却した後,ドラム缶に保管している。さらに,プラスチック・金属等の難燃物及び不燃物は,圧縮減容等した後,ドラム缶に保管している。これらの発電所廃棄物は,発電所敷地内の貯蔵庫に安全に保管されており,1996年3月末現在の発電所廃棄物の累積保管量は,200リットルドラム缶換算で約51万本である。
 発電所廃棄物のうち,気体状の放射性廃棄物及び放射能レベルの極めて低い液体放射性廃棄物は,適切な処理を施し,厳重な管理の下,法令で定められた基準を下回ることを確認した後,施設の外に放出されており,安全に管理されているが,今後とも放出量の低減化に努めていくことが重要である。
(b)処理・処分の考え方
 発電所廃棄物については,直接の廃棄物の発生者である電気事業者等原子炉設置者に,処分を適切かつ確実に行う責任がある。
 発電所廃棄物のうち,セメント等を用いてドラム缶に固化された発電所廃棄物で,放射能濃度の低いものについては,浅地中の埋設処分を進めることとしており,その一部について,青森県六ヶ所村の日本原燃(株)低レベル放射性廃棄物埋設センターにおいて埋設事業が1992年12月から開始されている。
 六ヶ所低レベル放射性廃棄物埋設センターでは第1号工事分として,濃縮廃液等を均一に固化した廃棄物約4万立方メートル(200リットルドラム缶で約20万本)を埋設する予定であり,1996年11月末の累積受け入れ本数は,81,280本である。また,本年9月に金属等の個体状の廃棄物を固化した廃棄物を対象とした埋設施設(200リットルドラム缶約20万本)の増設を青森県及び六ヶ所村に申し入れている。なお,最終的な埋設能力は約60万立方メートル(200リットルドラム缶で約300万本)となる計画である。

 また,低レベル放射性廃棄物の浅地中処分の安全性評価をより確かなものとするため,放射性核種の浅地中における移行挙動に関する研究等を進めている。
 放射能レベルの比較的高いものについては,合理的な処理処分が行われるよう引き続き検討を進める。

(イ)TRU*核種を含む放射性廃棄物の処理処分
(a)発生の現状
 再処理工場やMOX燃料加工工場で発生し,現在我が国では,動力炉・核燃料開発事業団において発生している。1996年3月末までの発生量は,200リットルドラム缶換算で約75,000本である。
(b)処分の考え方
 当該廃棄物の責任分担については,廃棄物を直接発生する事業者と発生に密接に関連する電気事業者が,廃棄物の帰属や処分に関する責任を当事者間で明確にし,処分の責任を有する者は,実施スケジュール,実施体制,資金の確保等について検討を進める。


* TRU:超ウラン元素。ウランより原子番号の大きい元素の総称(Transuranic)

 廃棄物に含まれる全アルファ核種の区分目安値として,約1ギガベクレル/トンを設定し,廃棄物に含まれるアルファ核種の放射能濃度が区分目安値よりも低く,かつベータ・ガンマ核種の濃度も比較的低いものは,浅地中処分が可能と考えられるため,その具体化を図る。
 アルファ核種の放射能濃度が区分目安値よりも高く,浅地中処分以外の地下埋設処分が適切と考えられるものについては,高レベル放射性廃棄物の処分方策との整合性を図りつつ,1990年代末を目途に具体的な処分概念の見通しが得られるよう技術的検討を進める。

(c)研究開発の現状
 TRU核種を含む放射性廃棄物の処理処分に関する研究開発については,動力炉・核燃料開発事業団,日本原子力研究所等において,廃棄物中の放射能濃度を測定するための技術開発や,合理的な処分のための概念の検討,TRU核種を含む放射性廃棄物の種々の固化体の特性把握等のための研究開発を実施している。
(ウ)ウラン廃棄物の処理処分
(a)発生の現状
 民間のウラン燃料加工事業所,動力炉・核燃料開発事業団のウラン濃縮施設等から発生するウラン廃棄物については,現在,各事業所において安全に貯蔵されている。1996年3月末までで200リットルドラム缶換算で,動力炉・核燃料開発事業団においては約37,000本,民間加工事業者においては約35,200本発生している。
(b)処理・処分の考え方
 ウラン廃棄物については,廃棄物の直接の発生者(ウラン転換・成型加工事業者,濃縮事業者)とその発生に密に関連する電気事業者が,廃棄物の帰属や処分に関する責任を当事者間で明確にした上で,処分の責任を有する者は,実施スケジュール,実施体制,資金確保等について検討を進める。
 ウラン廃棄物については,動力炉・核燃料開発事業団においてウラン廃棄物技術開発施設を建設し,処理方法についての研究開発を進める。
 ウラン濃度が比較的低い大部分の廃棄物は,簡易な方法による浅地中処分を行うことが可能と考えられ,今後具体的な方法の検討を行った上で,基準の整備等を図っていく。

(エ)RI廃棄物処理処分
(a)発生の現状
 医療機関及び研究機関等の放射性同位元素(RI)の使用施設等がら発生する放射性廃棄物(以下,「RI廃棄物」という)のうち,可燃物,不燃物,無機液体等のRI廃棄物は,(社)日本アイソトープ協会および日本原子力研究所で焼却処理や圧縮減容処理を行った後,施設内の貯蔵庫に安全に保管されている。(社)日本アイソトープ協会が保管しているRI廃棄物の1996年3月末の累積保管量は,約70,400本である。
(b)処理・処分の考え方
 日本原子力研究所等の研究機関や大学,企業等のRI使用者等は直接の廃棄物発生者として処分を適切かつ確実に行うことについて責任を有している。一方,(社)日本アイソトープ協会等は,廃棄業者としてRI使用者等からRI廃棄物を譲渡され,自ら保管廃棄していることから,これらの保管廃棄している廃棄物について処分を適切かつ確実に行う責任を有している。したがって,日本原子力研究所,(社)日本アイソトープ協会等の主要な責任主体が協力して,実施スケジュール,実施体制及び資金確保等について,早急に検討を始めることとしている。

 処分方法については,比較的半減期が短いベータ・ガンマ核種が主要核種である廃棄物のうち,放射能レベルの比較的低いものは浅地中処分または簡易な方法による浅地中処分が可能と考えられる。半減期が極めて短い核種のみを含むものについては,段階管理を伴わない簡易な方法による浅地中処分が可能と考えられている。現在,原子力委員会の原子力バックエンド対策専門部会の下にRI・研究所等廃棄物分科会を設置し,処分の技術的事項についての検討を鋭意進めている。
 今後,これらの場における議論を通して処分の具体的な方法を検討し,基準の整備等を図っていく。


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