第2章 国内外の原子力開発利用の状況
5.軽水炉体系による原子力発電

(4)諸外国のウラン濃縮の状況

 IAEAなどによると,1996年現在,世界のウラン濃縮設備容量の合計は約54,000トンSWU/年である。一方,1995年の需要は,約34,000トンSWU/年で,供給能力が需要を大幅に上回っている。この傾向は2010年以降も続くものと見られている。主要国の状況を以下に示す。
①米国
 ウラン濃縮事業はエネルギー省(DOE*)の所管であったが,1992年10月に成立したエネルギー政策法により公社化されることとなり,1993年7月に合衆国濃縮公社(USEC*)が発足し,我が国の濃縮役務需要の大部分を賄っているポーツマス,パデューカのガス拡散法による2工場も,引き続き公社がDOEよりリースして操業を継続している。なお,USECについては,1997年中に民営化される予定である。


* DOE: Department of Energy
* USEC: United States Enrichment Corporation

 また,原子レーザー濃縮法の商業化の判断はUSECに委ねられていたが,1994年7月,USEC理事会において承認され,商業化するために必要な措置を採り始める方針が決定された。
②フランス
 フランス,イタリア,スペイン,ベルギー及びイランの合弁会社であるユーロディフ社が,トリカスタンにおいてガス拡散法による工場を操業しており,我が国の濃縮役務需要の一部を賄っている。また,原子レーザー濃縮法を中心とする研究開発が進められている。
③その他
 英国,ドイツ及びオランダの合弁会社であるウレンコ社が,カーペンハースト(英国),アルメロ(オランダ),グロナウ(ドイツ)において濃縮工場の操業を行い,また,ロシアでは,ロシア原子力省(MINATOM)が,遠心分離法による濃縮工場の操業を行っている。


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