第1章 国民とともにある原子力
4.「国民とともにある原子力」を目指して

 「国民とともにある原子力」という原子力開発利用長期計画の方針達成に向けての努力は,いずれかの段階で「これで終わり」となる性格のものではありません。今後とも各種の手段を通じて一層の積極的な対話や情報公開を進めるとともに,政策を決定する過程での国民の声の反映など,不断の努力を継続していきます。
 原子力委員会は,1994年に策定した原子力開発利用長期計画で,「国民とともにある原子力」という目標を掲げた。このための努力は,いずれかの段階で「これで終わり」となるものではなく,国民との一層積極的な対話,情報公開など,今後とも不断に努力を行っていくことが大切である。
 しかしながら,真の国民的合意を目指す,その道のりは,決して簡単ではない。原子力の持つ技術的な複雑さ,放射線・放射能に対する不安,巨大技術システムを地域として受け入れることへのためらい,NIMBY*の問題,技術的安全と社会的安心の乖離,新エネルギーの見通し,省エネルギーを徹底する生活様式はどこまで可能なのか,世界規模でのエネルギー需要とその中での日本の果たすべき役割と使命等々,議論すべきことは多い。その際に重要なのは,国民全体が現代の文明社会を歴史的,空間的な広がりを持ってとらえ,共通の土俵で十分議論し,認識を深めていくこと自体にある。
 このため,原子力委員会は,関係行政機関とともに,原子力に係る様々な課題を国民一人一人が自らの問題として議論できるような場の設定と,それに必要な適切な情報の公開に努めるとともに,政策決定過程に国民の声を十分に反映していくなど,「国民とともにある原子力」に向けてさらに努力していくこととしている。


* NIMBY:42ページ参照。


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