第1章 国民とともにある原子力
3.「国民とともにある原子力」に向けた様々な取組

(2)原子力モニター制度の拡充

 国では,国民の率直な意見を伺い,原子力行政に反映するため,原子力モニターをお願いしています。1996年度からは,従来の都道府県の推薦に加え,広く500人の一般公募を行うこととしました。これにより,1,074人のモニターが委嘱されました。
 原子力モニターから得られた意見は,とりまとめ,原子力政策円卓会議に報告されました。

 科学技術庁は,昭和52年度以来,国民の率直な意見を原子力行政に反映するため,都道府県から毎年約600人の推薦を得て,原子力モニターを委嘱してきた。
1994年度までの成果を踏まえ,「国民とともにある原子力」の一環として,原子力モニター制度の充実強化策について検討した結果,1996年度からは,従来の都道府県からの推薦に加え,一般公募で500人の原子力モニターを募ることとした。また,原子力について十分考えてもらえるよう,任期を従来の1年から2年間に延長した。
 モニターの公募については,500人の定員に対し,15,112人からの応募があり,国民の原子力問題に関する関心の高さがうかがえた。無作為抽選で選ばれた500人と都道府県からの推薦に基づく574人,計1,074人が原子力モニターとして委嘱された。
 国は,原子力モニターに対し,原子力に関する各種の情報を提供するとともに,懇談会,見学会などを行っている。

 円卓会議との関係では,その議論に資するため,1996年7月,原子力モニターに対して意見の募集が行われた。その結果,792通の意見の提出があり,これらはとりまとめの上,原子力政策円卓会議において報告,公表された。*


「原子力モニターから提出のあった意見について」 :入手についての問い合わせ先は,科学技術庁原子力調査室(〒100東京都千代田区霞ケ関2-2-1)。
「原子力モニターから提出のあった意見等の概要」 :資料編357ページ参照。

 原子力モニターの意見は,極めて多岐にわたっているが,大きくその特徴を見てみると次のとおりである。
①エネルギー確保にとって安全確保を大前提とした原子力利用は重要とするもの。
②原子力に関する漠然とした不安を表明するもの。
③原子力に関する十分な知識,情報がないことを訴え,理解のために十分なデータ,適切な情報提供を求めるもの。
④新エネルギー,省エネルギーへの期待を表明するもの。
⑤放射性廃棄物処理処分の見通しへの不安を表明するもの。
 これらのうち,①,②については,国としても,継続される原子力政策円卓会議での議論をはじめとする様々な場において多角的な議論を進め,一人でも多くの国民が原子力について主体的に考える環境を整え,その将来の方向について国民的な合意が得られるよう今後とも努力することとしている。
 また,③については,多くの意見が必ずしも原子力に関する十分な情報に基づくものとは言い難い面があることから,今後とも正確な情報をわかりやすい形で提供することが不可欠である。昨今,急速に発展しているインターネットの活用を含め,関係者ができる限りわかりやすい情報の提供に努めることが重要である。「原子力に関する情報公開及び政策決定過程への国民参加の促進について」(1996年9月25日原子力委員会決定)でも,国民に対する積極的な情報の提供や広報のあり方に関しては,できる限りわかりやすい情報の提供に努めるとの観点から,一層の改善を図ることの重要性を指摘している。
 新エネルギーや省エネルギーの重要性に関する④については,現在,国全体としても新エネルギーの開発や省エネルギーの推進に積極的に取組んでいる。しかしながら,新エネルギーや省エネルギーのみでエネルギー需要をまかなうことは供給力,信頼性などの面で困難であると考えられ,将来にわたるエネルギーの安定確保という立場からも,原子力開発利用を進める必要がある。

 放射性廃棄物処理処分対策への不安を示した⑤については,原子力委員会の原子力バックエンド対策専門部会,高レベル放射性廃棄物処分懇談会の審議において,提出された意見を十分踏まえて,議論が深められることになろう。なお,バックエンド対策専門部会では,前述のとおり報告書案「高レベル放射性廃棄物の地層処分研究開発等の今後の進め方について案」をとりまとめ,11月28日から12月27日まで広く国民の意見を募集している。


目次へ          第1章 第3節(3)へ