第2章 国内外の原子力開発利用の現状
10.原子力開発利用の推進基盤

(1)人材の養成と確保

 近年,我が国の社会においても大学においても過去に比べて,「原子力」に対する魅力が薄れ,大学ばかりでなく産業界や研究機関の人材確保に困難を生じるようになっている。しかし将来にわたるエネルギーの安定的な確保のためには,原子力の開発利用はますます拡大すると予想され,また高い安全性が求められることから,人材の量的確保のみならず,質の高い優秀な人材の確保・養成が重要である。
 1994年3月現在,原子力産業における技術系従業員数は約35,700人,主な政府関係研究開発機関*における研究者・技術者の数は約5,500人となっている。原子力関係の研究者,技術者については,大学等が人材養成の中核機関として果たす役割が大きく,原子力発電所等の技術者,技能者については,基本的には民間における養成訓練が主体となっている。国による人材養成訓練として,日本原子力研究所,放射線医学総合研究所などにおいで研究者,技術者,医療関係者等を対象として,様々なニーズに対応した種々の研修を実施している。また,公的研修機関として(社)日本アイソトープ協会,(財)原子力安全技術センター等においても同様の研修や,放射線取扱主任者資格指定講習などの資格取得に関する講習会等が実施されている。これらの研修では,原子力研究開発機関はもとより,地方公共団体,大学関係者や民間企業等からの幅広い参加者も受け入れている。


*主な政府関係研究開発機関は,日本原子力研究所,動力炉・核燃料開発事業団,理化学研究所の3つの特殊法人,放射線医学総合研究所,金属材料技術研究所の2つの国立試験研究機関,(財)原子力発電技術機構,(財)電力中央研究所,(財)核物質管理センター,(財)原子力環境整備センターの4つの公益法人である。

 一方,原子力開発利用に関係する人材の裾野を拡大するという観点からは,特に多くの若者が原子力に対しての正しい知識,客観的な判断力を持ち,またその将来性に対して理解するようになることが望まれる。このような観点から,科学館における展示物の整備,教師を対象としたセミナーの実施,教職員向けの副読本の作成配布,青少年に対する参加型のイベントの開催,研究開発機関での体験学習など青少年の原子力に関する学習機会を提供し,正しい原子力知識の普及に取り組んでいる。さらに,大学,大学院等の学生及び研究者に対しては,政府関係研究開発機関の研究設備・機器を利用する機会や研修学生の受け入れの拡大など,人材養成面での関係機関の連携を強化している。
 また,原子力研究開発の国際化の進展に対応するため,各種国際協力への我が国関係者の積極的参加,国際機関への幅広い人材の派遣等を行うとともに,諸外国の研究者・技術者の我が国での研修,研究等への受入れ及び招へいをさらに積極的に進めている。


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