第2章 国内外の原子力開発利用の現状
9.原子力分野の国際協力

(3)旧ソ連諸国に対する核不拡散協力

(i)非核化支援

 冷戦の終了後,旧ソ連等における核兵器の廃棄等を進めることは,今後の国際社会の平和と安定にとって極めて重要かつ喫緊の課題である。このため,1993年5月の原子力委員会委員長談話にもあるとおり,第一義的には当事国が責任を持って対処すべきではあるものの,我が国が,これまで培ってきた原子力平和利用の技術と経験をいかし,旧ソ連の核兵器の廃棄等平和に向けた国際的努力に積極的に協力することは,核軍縮と核兵器の拡散防止に貢献する上で重要である。
1993年10月には核兵器廃棄の支援に係る我が国とロシアとの二国間取極が署名された。その後核兵器廃棄後発生する核分裂性物質貯蔵や原子力潜水艦の解体に伴い発生する液体放射性廃棄物貯蔵・処理等を優先分野とすることに合意し,現在プロジェクトの具体化,実施に努めている。
 同様の核兵器廃棄の支援に係る協定は,同年11月にベラルーシ,1994年3月にウクライナ及びカザフスタンとの間で署名が行われ,核物質管理制度の確立等について協力していくこととなっている。
 核軍縮を不可逆的なものとするためには,特に核兵器の解体により生じるプルトニウム等の核物質が再び核兵器に利用されないための国際的な計量管理体制を早急に確立する必要があり,我が国としても国際機関や二国間取極等を通じて積極的に協力していく必要がある。

(ii)国際科学技術センター
 旧ソ連の大量破壊兵器関連の科学者,技術者等の能力を平和的活動に向ける機会を提供することを主目的として,日本,米国,EC及びロシアの四者は,1992年11月に「国際科学技術センター (ISTC)を設立する協定」に署名し,1993年12月に本協定を暫定的に適用する議定書への署名を経て1994年3月に本センターが設立された。我が国は,この目的のため,2,000万ドルの支援を行うことほか幾つかのプロジェクトに対し支援を表明しており,また,本センターに事務局次長等の人材の派遣を行っている。


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