第2章 国内外の原子力開発利用の現状
6.核燃料リサイクルの技術開発

(2)MOX燃料利用

 我が国は,核燃料リサイクルを推進するため,使用済燃料の再処理を行い回収されるプルトニウムを利用するとし,段階的に開発努力を積み重ねている。
 プルトニウムの利用形態に関しては,ウラン資源の利用効率が特に高い高速増殖炉での利用を基本とし,7高速増殖炉の実用化を目指している。また,将来の高速増殖炉の実用化に向けて,実用規模の核燃料リサイクルに必要な技術の確立,体制の整備等を行うため,軽水炉等における一定規模の核燃料リサイクルを進める。

①軽水炉によるMOX燃料利用
 軽水炉におけるウラン プルトニウム混合酸化物(MOX*)燃料の利用は,将来の高速増殖炉の実用化に向けた実用規模の核燃料リサイクルに必要な技術の確立,体制の整備等の観点から重要であり,また,プルトニウムが我が国のエネルギー供給面で一定の役割を果たすことも留意しつつ,軽水炉でのMOX燃料利用を弾力的に運用していくことが重要である。


*MOX : Mixed-Oxide

 軽水炉でのMOX燃料利用は,海外において既に1,200体を超える実績があり,我が国において実施した少数体規模での実証計画において炉心特性,燃料のふるまい等について良好な成果が得られていることから,現在の軽水炉において,MOX燃料を利用することについては特段の技術的問題はなく,着実に計画を進めていく段階にある。
 また,原子力安全委員会において,1995年6月,軽水炉にMOX燃料を装荷することに係る安全審査の際の指標(基本的考え方)が取りまとめられた。この指標では,MOX燃料の特性・挙動はウラン燃料と大きな差はなく,MOX燃料及びその装荷炉心は従来のウラン燃料炉心と同様の設計が可能であると認められるため,安全審査に当たっては,従来のウラン燃料炉心に用いる判断基準並びにMOX燃料の特性を適切に取り込んだ安全設計手法及び安全評価手法が適用できるとされている。
 今後は,1990年代後半からPWR及びBWRそれぞれ少数基において利用を開始し,2000年頃に10基程度,その後は,再処理の状況等を勘案し,2010年までには十数基程度の規模にまで計画的かつ弾力的に拡大することとしている。これらの計画を円滑に実施するため,電気事業者が主体的に取り組むとともに,また,関係省庁において的確な支援を行うことが重要である。さらに,1995年8月の原子力委員会決定において,新型転換炉実証炉建設計画の代替計画として,全炉心にMOX燃料を装荷することが可能な改良型沸騰水軽水炉(フルMOXーABWR)の建設が適切であるとされ,電源開発(株)が実施主体として建設に取組んでいくところであるが,当該計画が円滑かつ確実に実施されるよう国及び電気事業者が適切な支援を行うことが重要である。

②MOX燃料加工
 MOX燃料の原料となる酸化プルトニウムは,海外再処理で回収されたもの及び東海再処理工場から回収された硝酸プルトニウムを動力炉・核燃料開発事業団が独自に開発した「マイクロ波加熱直接脱硝法」によって混合転換したものを使用している。
 本技術の実用化を図るためのプルトニウム転換技術開発施設は,1983年4月からの試験運転以後,1995年3月末までに約9,850キログラムの混合転換粉を製造している。
 我が国のMOX燃料加工の研究開発は,動力炉・核燃料開発事業団を中心として実施されており,その加工実績も1995年3月末までの累積で約138トンMOXに達しており,我が国は世界的にみて高い水準にある。
 現在の製造設備能力は,新型転換炉原型炉「ふげん」用燃料製造施設の10トンMOX/年(プルトニウム燃料第二開発室)及び高速増殖炉燃料製造施設の5トンMOX/年(プルトニウム燃料第三開発室FBRライン)である。
 また,軽水炉によるMOX燃料利用計画及び2000年過ぎに六ケ所村の再処理工場が操業開始予定であることを踏まえ,年間100トン弱程度の国内MOX燃料加工の事業化を図る必要があり,現在,電気事業者を中心とした民間関係者により,加工事業主体の設立に向け,検討が進められている。
 また,海外再処理により回収されるプルトニウムについては,基本的には海外においてMOX燃料に加工し,海上輸送を行い,軽水炉で利用する予定である。


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