第2章 国内外の原子力開発利用の現状
5.軽水炉体系による原子力発電

(参考)世界のウラン濃縮の状況

 IAEA等によると,1994年現在,世界のウラン濃縮設備容量は,米国が約19,200トンSWU/年(ガス拡散法),フランスが約10,800トンSWU/年(ガス拡散法),ドイツ,オランダ及び英国が約3,300トンSWU/年(遠心分離法),日本が800トンSWU/年(遠心分離法),旧ソ連が約10,000トンSWU/年(遠心分離法),中国が約600トンSWU/年(ガス拡散法),南アフリカが約300トンSWU/年(ヘリコン・プロセス)となっており,濃縮設備容量の合計は約45,000トンSWU/年である。その他,アルゼンチン,ブラジルにも小規模の施設があるが,現在は運転を停止している。
1994年の需要は,約30,000トンSWU/年で,供給能力が需要を大幅に上回っている。この傾向は2010年以降も続くものと見られている。

①米国
 ウラン濃縮事業はエネルギー省の所管であったが,1992年10月に成立したエネルギー政策法により公社化されることとなり,1993年7月に合衆国濃縮公社(USEC*)が発足した。濃縮業務に関する諸業務は基本的にすべて公社に移管され,DOEには公社との間のリース契約を管理する機能のみが残ることとなる。我が国の濃縮役務の大部分を委託している,ポーツマス,パデューカのガス拡散法による2工場も,引き続き公社がDOEよりリースして操業を継続する。なお,USECについては,1995年6月に民営化プランが大統領及び議会に提出され,1996年には民営化される予定である。


*USEC : United States Enrichment Corporation

 また,商業化の判断をUSECに委ねられていた原子レーザー濃縮法は,1994年7月,USEC理事会において承認され,商業化するために必要な措置を採り始める方針を決定した。
1994年1月,USECは,ロシアとウクライナの核兵器解体から取り出される500MTU*の高濃縮ウランをロシア国内で低濃縮ウランに転換された形で購入する契約を,ロシア原子力省との間で取り交わした。契約期間は20年で,最初の5年間は高濃縮ウラン換算で毎年10MTU分を,それ以降については,高濃縮ウラン換算で毎年30MTU分を購入することとしている。この契約に基づき,1995年5月に最初のウラン24MTU(高濃縮ウラン換算で0.8MTU)がロシアより米国に向けて出荷された。

②フランス
 フランス,イタリア,スペイン,ベルギー及びイランの合弁会社であるユーロディフ社が,トリカスタンにおいてガス拡散法による工場を操業しており,我が国の濃縮役務の一部を受託している。また,原子レーザー濃縮法を中心とする研究開発が進められている。

③その他
 英国,ドイツ及びオランダの合弁会社であるウレンコ社が,カーペンハースト(英国),アルメロ(オランダ),グロナウ(ドイツ)において遠心分離法による濃縮工場の操業を行っている。
 なお,フランス核燃料会社(COGEMA),ユーロディフ社,ウレンコ社の3社は,トリカスタンに遠心分離法による再処理回収ウラン濃縮施設を共同建設するための企画可能性調査を実施した結果,技術的には可能であるものの,市場等を考慮すると現時点においては,建設に着手することは妥当でないとの結論を得ている。


*MTU : Mctric Tons Uranium


目次へ          第2章 第6節(1)へ