第2章 国内外の原子力開発利用の現状
1.核不拡散へ向けての国際的信頼の確立

(2)核燃料リサイクル計画の透明性の向上

 我が国のプルトニウムについては,そのすべてが平和目的に限り利用されるものとしてIAEAによる保障措置の適用を受けており,これにより,核兵器への転用等平和目的以外に使用されていないことが常に確認されている。
 我が国は核燃料リサイクルを推進するに当たって,計画遂行に必要な量以上のプルトニウムを持たない,すなわち余剰のプルトニウムを持たないとの原則の下,プルトニウム利用計画の透明性をより向上させるために,我が国のプルトニウム利用の計画とその現状を具体的に国内外に明らかにしていくよう努めている。
 原子力委員会が策定した我が国のプルトニウム需給見通しによると,国内再処理によって回収されるプルトニウムは,六ケ所再処理工場の操業前は,単年毎には国内的に需要が供給を上回る状態が続き,2000年代後半の再処理工場の本格操業以降は需給はバランスする。
 一方,海外再処理によって回収されるプルトニウムは,基本的には海外で軽水炉MOX燃料に加工された後,我が国に返還され軽水炉で利用される。
 我が国の分離プルトニウムは,再処理工場で分離された硝酸プルトニウム,これを転換した酸化プルトニウム,燃料加工工程中のプルトニウム及び原子炉に装荷される前の新燃料中のプルトニウム並びに研究開発の目的に供されているプルトニウム(使用済燃料中に含まれるものを除く。)で構成される。現状としては,1994年12月末において,再処理施設(プルトニウム転換施設を含む。)に約836キログラム*燃料加工施設に約3,018キログラム,原子炉施設内の新燃料等として約498キログラムの分離プルトニウムが管理されている。
 また,燃料加工に当たって直接の原料となる酸化プルトニウム(主として粉末の形状)については,1994年1年間における供給量として,国内の東海再処理施設から回収された約111キログラムであり,一方,同期間中の酸化プルトニウムの使用量は,「もんじゅ」等の燃料を製造するために燃料加工工程に移転された約323キログラムである。
 なお,1994年12月末における酸化プルトニウムの量は再処理施設に約126キログラム,燃料加工施設に約2,032キログラムである。これらは貯蔵容器に封入され専用の貯蔵庫において厳重に保管されており,順次「もんじゅ」の取替燃料等に加工され利用されることになっている。


*ここで言うプルトニウム量は,全て核分裂性及び非核分裂性の同位体を合計したプルトニウム元素重量

 また,核兵器の解体等に伴うプルトニウム等及び平和利用のプルトニウムに対する国際的な関心の高まりを背景として,関係9ヶ国によりプルトニウム利用の透明性向上等のための国際的枠組みに係る検討が進められている。我が国としては,核燃料リサイクル計画を国際的信頼を得つつ実施していくためには,その透明性の向上が重要であるとの観点から,関係国及びIAEAとも緊密に協議しながら,国際的枠組みの策定に向けて積極的に貢献している。


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