第1章 原子力開発利用の推進をめぐる諸課題

 エネルギー資源に恵まれずエネルギーの8割以上を海外に依存する我が国は,1956年の我が国最初の原子力開発利用長期計画策定当時より,原子力の研究,開発及び利用は,厳に平和目的に限り,核燃料サイクルを確立し,エネルギーの安定確保を図ることを,原子力政策の基本としている。その結果,現在,我が国では総発電電力量に占める原子力発電の割合が約3割となり,他方,世界では1995年6月末現在30ヶ国(地域)で428基(設備容量3億5823.5万キロワット)の原子力発電所が稼働し,1994年の世界の全発電量に占める割合は約17%に達した。
 特に,我が国では,ウラン資源から燃料を作り,それを1回だけ原子炉で使用するだけではなく,原子炉で使用した使用済燃料を再処理して,原子炉内で新たに生み出されたプルトニウムや燃え残りのウランを回収し,再度核燃料として有効に利用する(核燃料リサイクル)ことを目指している。
 そのため,使用済燃料再処理の技術開発,回収したプルトニウムを軽水炉等で利用するための技術開発,消費した以上の核燃料を生成する高速増殖炉の技術開発等を進めている。また,再処理に伴って発生する高レベル放射性廃棄物の処理,処分の技術開発も積極的に行っている。
 冒頭述べたとおり,我が国の原子力開発利用は,その開発当初より平和目的に限って進めている。このこと自体大方の理解は得られているものと考えられるが,核燃料リサイクルの過程でプルトニウムという機微な物質をも取り扱うことから,近年特に,核不拡散等に関する国際的な動向を十分踏まえた政策の推進が不可欠となっている。

 このような認識から,本白書では,まず過去1年の我が国の原子力開発利用をめぐる
 ①核不拡散等を中心とする国際動向
 ②核燃料リサイクルを中心とする国内動向
について概観するとともに,核燃料リサイクルを確立するに当たって,避けて通ることのできない課題である
 ③高レベル放射性廃棄物の処理処分問題
について,我が国の今後の取り組み方等について考察する。


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