2.原子力委員会の決定等

(3)原子力委員会委員長談話


核兵器の廃棄等に係る協力に当たって

平成5年5月14日
原子力委員会委員長談話

 本日,政府は,旧ソ連における核兵器の廃棄等を中心とする軍縮努力の支援策を決定した。
 冷戦の終了,ソ連の崩壊等に伴い第二次大戦後の体制が激変する中で,旧ソ連等における核兵器の廃棄等を進め,核軍縮を中心とする軍縮の大幅な進展を図ることが,今後の国際社会の平和と安定にとって重要かつ喫緊の課題となっている。
 我が国は歴史上唯一の被爆国であり,究極的な核廃絶への国民の願いは極めて強い。我が国の原子力平和利用を推進していくに当たり,核兵器の拡散防止に積極的に貢献していくことは我が国の基本政策である。旧ソ連における核軍縮を進展させることは,第一義的には当事国が責任を持って対処すべきものであるが,現下の国際情勢と我が国に求められる役割に鑑みれば,我が国が,これまで培ってきた原子力平和利用の技術と経験を活かし,旧ソ連の核兵器の廃棄等平和に向けた国際的努力に積極的に協力することは,核軍縮と核兵器の拡散防止に貢献する上で重要な意義を持つのとして評価されるべきである。
 もとより,我が国は,原子力基本法に基づき平和の目的に限り原子力の研究開発利用を推進するとの基本原則を堅持し,また,原子力に係る国際協力においても平和の目的に限って実施してきたところである。原子力委員会としては,核兵器の廃棄等に係る支援策の実施に当たっても,原子力に係る我が国の国際協力が,今後とも,この基本原則に則って適切に遂行されるべきと認識しており,その立場から本委員会の責務を果たしていく所存であるが,関係省庁等においても,我が国の原子力政策が益々国際的に展開する中で,その平和に向けた協力が,国内外の理解を得つつ推進されるよう一層配慮されることを期待する。


核兵器の不拡散に関する条約の延長について

平成5年8月23日
原子力委員会委員長談話

 本日,細川内閣総理大臣の第127回国会における所信表明演説において,核兵器の不拡散に関する条約に関して,無期限延長を支持していくことが表明された。
 本条約が,原子力平和利用と核不拡散を両立させる枢要な国際的枠組みであり,原子力平和利用の円滑な推進のためには核不拡散体制の維持・強化が不可欠であることを考えれば,本委員会としても本条約の無期限延長を支持することが妥当と考える。
 同時に本委員会としては,1995年に開催される本条約の延長を検討する会議に向けて,以下の点を主張していくことにより,本条約の普遍性をより高めることが重要であると考える。
 第一に,本条約がこれまで締約国の原子力平和利用を円滑に推進する上で果たしてきた重要な役割に鑑み,今後とも,本条約が締約国に対し原子力平和利用による利益の享受を最大限保障するものであることが再認識されるべきである。
 第二に,人類の核兵器廃絶への願いを考えれば,本条約の無期限延長が核兵器国による核兵器の保有を無期限とするものではなく,全ての核兵器国が自らに課された核軍縮努力の責務をより一層重いものとして受けとめ,具体的かつ早期に核兵器削減を実行することを強く望むものである。
 また,本条約の延長をより有意義なものとするため,本条約の下での核不拡散体制の強化を図ることが必要であり,関係国と協調して,我が国として積極的に貢献していくべきである。


高速増殖原型炉「もんじゅ」の臨界について

平成6年4月5日
原子力委員会委員長談話

 動力炉・核燃料開発事業団が福井県敦賀市において建設を進めてきた高速増殖原型炉「もんじゅ」は本日(10時01分),初臨界に達した。
 高速増殖炉は,ウラン資源の利用効率を飛躍的に高めることができ,エネルギー資源に乏しい我が国において,将来の原子力発電の主流となるべきものとして,その開発は極めて重要である。
 「もんじゅ」は,ナショナル・プロジェクトとして,昭和60年に本格着工し,自主技術による開発を進めてきたが,この「もんじゅ」の臨界は,核燃料リサイクルの中核をなす高速増殖炉の開発が新たな段階に入ったことを示すものである。今後は,炉物理試験等の試験を慎重に進めた後,平成7年12月に本格運転を開始し,高速増殖炉技術の確立を図っていく予定である。
 「もんじゅ」の開発に当たっては,幾多の技術的な困難もあったが,これを克服し,臨界に達したことに対し,これまでその開発に当たってきた動力炉・核燃料開発事業団をはじめとする関係者の多大な御努力に深く敬意を表するとともに,福井県,茨城県及びそれぞれの関係自治体各位,電力界,産業界,学界等の関係の各位の御理解,御協力に対し深く感謝の意を表するものである。
 今回の臨界を新たなステップとし,なお一層気を引き締め,安全の確保に最大限留意しつつ,高速増殖炉開発を着実に展開してまいる所存であるので,国民の皆様方の格段の御理解,御支援を賜るようお願いする。


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