2.原子力委員会の決定等

(2)原子力委員会決定


低レベル放射性廃棄物処分の今後の考え方について
(第16回ロンドン条約締約国協議会議に向けて)
平成5年11月2日
原子力委員会決定

 我が国は,これまで低レベル放射性廃棄物の処分の方法としては,地中埋設及び海洋投棄を基本的な方針としできた。今般,ロンドン条約締約国協議会議において低レベル放射性廃棄物の海洋投棄に関する議論が行われるに当たり,原子力委員会として,科学的技術的観点のみならず,政治的,社会的な見地をも加えた広範な観点から低レベル放射性廃棄物の海洋投棄の取扱いを検討した。
 低レベル放射性廃棄物の海洋投棄は,国際原子力機関の基準等に則って行えば,公衆の健康に特段の影響を与えるものではないと考える。しかし,海洋投棄については,国際協調の観点から,関係国の懸念を無視して強行はしないとの考えの下に,その実施については慎重に対処することとしており,現実には行われていない。また,地球環境問題への国際的な関心を背景とした関係諸国の懸念の高まりに加え,旧ソ連及びロシアにより国際的合意に反して行われた一連の海洋投棄による内外への影響等を考慮すれば,我が国の低レベル放射性廃棄物の海洋投棄の実施は,政治的,社会的見地から今や極めて困難と言わざるを得ない。
 一方,地中埋設については,民間事業者による廃棄物埋設事業が開始されるなど総じて順調な進展を見ていることから,低レベル放射性廃棄物については,今後,地中埋設を進めるものとし,そのための諸施策の充実を図ることが重要であると考える。
 以上の現状認識を踏まえ,我が国としては,今後,低レベル放射性廃棄物の処分の方針として,海洋投棄は選択肢としないものとする。
 なお,原子力委員会としては,将来,政治的,社会的な情勢等が大きく変化した場合には,上記政策の再検討も考慮する。


ガラス固化体の核物質防護措置について

平成6年3月11日
原子力委員会決定

 我が国の核物質防護については,核物質防護に関する国際的な勧告であるIAEAガイドラインINFCIRC/225を参考としてとりまとめられた「原子力委員会核物質防護専門部会報告書(昭和55年)」及び,同報告書に沿った核物質防護施策を進めること等を定めた昭和56年の原子力委員会決定に基づき,適切に措置されてきているところである。
 使用済燃料を再処理することにより発生する高レベル放射性廃液をガラスにより固形化したもの(以下「ガラス固化体」という。)に含まれる核燃料物質の核物質防護措置については,従来その位置づけに関する規定はなかった。今般,IAEAガイドラインが改訂されたことにより,ガラス固化体に含まれる核燃料物質の防護措置が新たに規定され,それを慎重に検討した結果その内容は妥当なものと判断されるため,以下により所要の措置がとられることが必要であると考えられる。
 改訂されたIAEAガイドラインの規定に従い,ガラス固化体の核物質防護措置については,慣行による慎重な管理に従って防護するものとし,このための所要の法令整備等を図ること。


原子力の研究,開発及び利用に関する長期計画について

平成6年6月24日
原子力委員会決定

1.原子力委員会は,昭和31年の長期計画策定以降,数次にわたる改定を行い,現在,昭和62年6月に決定した「原子力開発利用長期計画」に基づき,原子力の研究,開発及び利用の推進を図っている。
 近時,内外の情勢は大きく変化しており,これを踏まえ,21世紀を展望して,長期的,地球的視点に立って,新しい時代環境に適応した原子力開発利用に関する指針の大綱と基本的な施策の推進方策を内外に明らかにすることとした。
2.原子力委員会は,平成4年7月,原子力開発利用長期計画の改定を行うことを決定し,長期計画専門部会を設置して,国民一般からの意見募集等を含め,広く各界から意見を聴取するとともに海外の原子力関係者からの意見も求め,新しい長期計画について審議を進めてきた。
 同専門部会における審議結果を踏まえて,別添*のとおり新たに「原子力の研究,開発及び利用に関する長期計画」を決定する。
3.今後,我が国の原子力の研究,開発及び利用については,本長期計画に基づき,内外の情勢に的確に対応し,国民並びに諸外国の理解を得つつ,着実な推進を図っていくこととする。
 なお各分野の具体的な施策については,今後の進展及び諸情勢の変化に適切に対応していくため,適時,検討を行っていくこととする。
4.長期計画専門部会は,本日をもって廃止する。


* 「(4)専門部会報告書等」参照


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