第2章 新長期計画策定の背景としての内外の原子力開発利用の現状
8.原子力科学技術の多様な展開と基礎的な研究の強化

(2)原子力利用分野の拡大に関する研究開発等の状況

①新しい型の原子炉の研究
 受動的安全性を具備した中小型炉,モジュール型液体金属炉等の新しい型の原子炉については,幅広く基礎的・基盤的研究を推進し,将来の原子炉技術の飛躍的発展の可能性の検討を行っている。

②高温工学試験研究
 現在我が国を始め世界各国で運転されている軽水炉の炉出口における冷却水の温度は,300°C前後であるが,高温ガス炉は,1,000°C近くの高温の熱を供給でき,高い熱効率及び熱利用率の達成を可能にするのみならず,固有の安全性が極めて高いこと,燃料の燃焼度が高いこと,高温熱供給により発電のみならず幅広い分野でのエネルギー利用の可能性を有していること等の優れた特徴を持っている。

 現在,高温ガス炉の基盤の確立,高度化及び高温工学に関する先端的基礎研究を積極的に進めるための中核的研究施設として高温工学試験研究炉(HTTR)の建設が日本原子力研究所(大洗研究所)において1998年ごろの臨界を目指して進められている。

③原子力船研究開発
 我が国最初の原子力船である「むつ」は,1991年からおおむね1年間の実験航海により,原子力船の設計,建造,運航に必要な基礎的技術基盤が確立されたと考えられる。また「むつ」によって得られたデータ,経験等を内外の新たな知見と合わせて蓄積・整備しつつ舶用炉の改良研究を実施している。
 実験航海終了後,「むつ」は関根浜港において解役が進められており1994年度は,原子炉補機室等の機器類撤去工事等が行われ,今後原子炉室切断準備工事等が行われる予定である。


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