第2章 新長期計画策定の背景としての内外の原子力開発利用の現状
5.軽水炉体系による原子力発電

(3)ウラン濃縮と核燃料成形加工・再転換

①ウラン濃縮
 ウラン濃縮役務については,現在世界的に,供給能力が需要に対して過剰な状況であり,この状況は2010年過ぎにおいてもある程度の期間続くものと推定されているが,我が国としては,濃縮ウランの安定供給の確保の観点ばかりではなく,我が国における核燃料サイクル全体の自主性の確保の観点から,経済性を考慮しつつ,ウラン濃縮の事業化を推進することとしている。
 六ケ所ウラン濃縮工場(事業主体:日本原燃(株))については,1988年10月に建設工事が開始され,1992年3月に150トンSWU/年の規模により操業を開始し,現在は600トンSWU/年の規模で操業中である。本プラントは2000年過ぎごろに,最終的には1,500トンSWU/年の規模とする計画となっている。それ以降の国産化の展開に関しては,国際動向,経済性,技術の継承等を考慮しつつ具体的な事業規模と時期を検討することとしている。
 さらに,今後のウラン濃縮の経済性の向上のために,遠心分離技術の高性能化等を進める一方,次世代の技術と考えられるレーザー法の新濃縮技術の研究開発を着実に進めていくこととしている。
 遠心分離法については,動力炉・核燃料開発事業団において,新素材を用いた遠心分離機の開発を進めており,1992年には民間の協力を得つつ,人形峠事業所において新素材高性能遠心機1,000台規模の実用規模カスケード試験装置を建設し,1993年4月から運転を開始している。さらに,同事業団では,新素材を用いた遠心機の次世代機となる高度化機の開発を,官民共同研究として,1993年から実施するとともに,将来の遠心機技術の開発に必要な基礎的・基盤的な研究として,新材料の物性研究,流体工学,構造力学研究を進めている。
 レーザー法については,従来,原子法及び分子法の研究がそれぞれ進められてきた。原子法については日本原子力研究所において基礎的研究開発,レーザー濃縮技術研究組合において要素技術の開発を行っている。また,分子法については,理化学研究所において基盤的事項についてのブレークスルー研究,動力炉・核燃料開発事業団において工学実証試験を行っている。レーザー濃縮については今後,更に段階的な開発が必要であり,原子法,分子法とも,研究開発を次の段階に進むべきか否かを2000年ごろまでに判断を行うこととしている。

②核燃料成形加工・再転換
 軽水炉用の核燃料として使用できる形にするためには,濃縮されたウラン(六フッ化ウラン)を粉末(二酸化ウラン)にする「再転換」と,これをペレット状に加工し,被覆管の中に収納して燃料集合休とする「成形加工」の工程が必要となる。
 再転換のうち,加圧水型軽水炉(PWR)燃料用のウランの再転換については,ほぼすべてが国内で行われている。また,沸騰水型軽水炉(BWR)燃料用のものについては,一部を海外に委託している。
 成形加工については,PWR用,BWR用ともに全量が国内で加工されている。

③回収ウラン利用に関する技術開発
 再処理により回収されるウランについては,経済性及び利用可能量の観点から最も適切な,再濃縮によるリサイクル利用を図ることとしている。
 国内再処理により回収されたウランについては,これまで民間関係者と動力炉・核燃料開発事業団が協力して,転換,再濃縮,加工及び原子炉での利用に関し,小規模試験,中規模試験を実施してきた。今後は,これまでの成果に基づき,同事業団のウラン濃縮原型プラント(岡山県上斎原村)等を利用して実用規模による再濃縮計画を進めて行く等,将来の本格利用に備えて民間関係者と同事業団が共同して研究を行っていくこととしている。これに伴い,同事業団においては所要の施設整備等を行っており,1994年より製錬・転換パイロットプラントを活用して回収ウラン転換実用化試験を行うための改造工事を行い,1994年8月より試験を開始している。
 また,海外再処理委託からの回収ウランについては,海外で転換,再濃縮を行うべく電気事業者が本格利用に向けて準備を進めていくこととしている。


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