第2章 新長期計画策定の背景としての内外の原子力開発利用の現状
5.軽水炉体系による原子力発電

(1)軽水炉技術の向上

 我が国では,政府,電気事業者,原子力機器メーカー等が協力して,自主技術による軽水炉の信頼性,稼動率の向上及び従業員の被ばく低減を目指し,軽水炉の改良標準化計画を第1次から第3次まで実施してきた。
 これらの成果は,現在運転中又は建設中の在来型軽水炉(LWR)の一層の改良に反映されるとともに,特に第3次計画においては,日本型軽水炉を確立するために,改良型軽水炉(ALWR:改良型沸騰水型原子炉(ABWR)及び改良型加圧水型原子炉(APWR))の開発が進められた。現在建設中の東京電力(株)柏崎刈羽原子力発電所6号炉(1996年運転開始予定)及び7号炉(1997年運転開始予定)は,最初のABWRであり,原子炉圧力容器内蔵型冷却材再循環ポンプ,改良型制御棒駆動機構等の新技術が採用されている。
 今後の軽水炉技術の開発に当たっては,一層の安全の確保に積極的に取り組むとともに,設計,運用の両面から技術の高度化を図ることが必要である。具体的には,故障やトラブル等の再発防止対策,定期安全レビュー,高経年原子炉対策,シビアアクシデント対策等の総合的な予防保全対策等の一層の充実に努めつつ,システムの簡素化や操作の自動化等によるヒューマンファクターに係る対策,確率論的安全評価手法等最新の知見を活用した安全設計・安全評価,作業員の被ばく低減等を図るための自動化技術の高度化,さらに安全の確保を大前提とした運転管理の高度化等に取り組むほか,プラント全運転期間中の効率的な運転・保守を行なうための総合的な設備管理方策に関する検討が必要である。
 また,長期的な視点を踏まえ,高燃焼度化燃料,MOX燃料への対応等を考慮した燃料・炉心機能の高度化,受動的安全性の概念等を取り入れた将来型軽水炉や中小型炉についての調査・研究等を行なうことも重要である。


目次へ          第2章 第5節(2)へ