第2章 新長期計画策定の背景としての内外の原子力開発利用の現状
4.原子力発電の現状と見通し

(2)原子力発電の将来見通しと原子力施設の立地の促進

①原子力発電規模の見通し
 今後の原子力発電の開発規模については,新長期計画に見通しを示しているが,具体的には,2000年において約4,560万キロワット,2010年において約7,050万キロワットの設備容量を達成することを目標とし,さらに長期的展望として,2030年の原子力発電の設備容量は約1億キロワットに達することが期待されるとしている。

②原子力施設の立地促進
 今後,上記の原子力発電設備容量を確保するには,既存サイトでの増設に加えて新規サイトの確保が必要であるが,原子力発電所の立地には計画から運転開始までのリードタイムが長期に及ぶことを考慮すると,早急に新規サイトの確保に向けて対策を充実していくことが必要である。
 原子力施設の立地促進については,これまで国,地方公共団体,事業者等の積極的な立地促進活動が一定の成果を挙げてきたものの,国民の意識の中から原子力に対する不信感,不安感が依然として払拭されていないことも一因となり,立地は年々困難になってきており,また,立地に伴う地域振興効果を期待する地元の声も,ますます多様化してきている。原子力施設の立地による波及効果を地域の長期的発展に結びつけることが重要であるが,その際,既存立地地点における地域の発展状況が,新規立地予定地点の理解を深める上で意義が大きいことにも留意する必要がある。

 原子力施設の立地促進の主体は事業者,地元の地域振興の主体は地方公共団体であるが,国としても立地円滑化の観点から地元と原子力施設が共生できるよう,関係省庁が一体となって地元の地域振興に一層きめ細かな支援を進めることとする。また,立地地域において,マスメディアを通じた積極的な広報などの理解促進策を展開していくほか,用地取得の円滑化を図る必要がある。

 立地地域の振興対策の拡充を図るためには,電源三法(発電用施設周辺地域整備法,電源開発促進税法及び電源開発促進対策特別会計法)の活用等が逐次図られているが,1994年度には,新たに,立地都道府県等が実施する原子力関連の業務従事者等への研修事業に対する補助金制度及び要対策重要電源が存在し,環境影響調査の実施が具体化している市町村が行う公共用施設の整備等を行うための交付金制度が追加された。また,電源開発調整審議会では,電源立地を「国をあげて支援すべきプロジェクト」と位置付けるとともに,電源開発調整審議会に上程される前の段階(初期段階)における取組が重要であるとし,1993年3月,同審議会の下に電源立地部会を設置し,関係省庁の協力を得て,初期段階地点の状況の把握,地域振興計画に関する助言,協力等を継続的に行っている。

 立地に関する最近の動向としては,1994年度の電力施設計画において,新たに中部電力(株)浜岡原子力発電所5号炉(BWR,電気出力135万キロワット)の立地計画が盛り込まれた。これは,1995年度に電源開発調整審議会に上程予定である。
 また,1994年9月,総合エネルギー対策推進閣僚会議において,要対策重要電源として,新たに中国電力(株)上関原子力発電所1・2号(135万キロワット級×2基)を指定するとともに,中部電力(株)浜岡原子力発電所については,号機の追加(5号,135万キロワット)が行われた。また,中国電力(株)豊北原子力発電所1・2号(110万キロワット×2基)については,電源開発の計画が取消しになったことにより,指定を解除された。本指定を受けた地点に対しては,電源開発促進対策特別会計電源立地勘定による重要電源等立地推進対策補助金の交付等の諸施策が重点的に講じられることとなる。

 新型転換炉実証炉については,1994年度に電源開発調整審議会に上程予定であり,2000年代初頭の運転開始を目指して,電源開発(株)が青森県大間町にて準備を進めでいる。


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