第2章 新長期計画策定の背景としての内外の原子力開発利用の現状
3.情報公開と国民の理解の増進

(2)国民の理解の増進と情報の公開の基本的考え方

 新長期計画においては,上記のような世論の状況をも踏まえて原子力開発利用を円滑に進めていくためには,「国民とともにある原子力」との認識の下,まず国,原子力事業者に対する国民の信頼感,安心感を得ることが重要であるとし,国民参加型の行政運営の重要性,情報公開,情報の提供への一層の配慮と方策の充実,さらに青少年に対する正確な知識の普及について強調している。

①国民参加型の行政運営への展開
 最近においては,国が主催する原子力に係る国際シンポジウム等において一般からの参加,発言ができるような運営も一部採り入れられてきているが,今後ともこのような取組について充実を図っていく必要がある。
 第1章にも示したように今回の長期計画の策定過程では国民からの意見の募集や「ご意見をきく会」の開催により,この国民参加型の意見交換の場の設定とも言える方策を採ったところであるが,このような経験も踏まえ,今後とも広く国民の意見に耳を傾けつつ,様々な視点や考え方を考慮しながら行政運営を図ることが重要である。

②情報公開の推進
 国民が判断する際の基礎となる情報の公開,提供については,国,原子力事業者はより一層努める必要がある。情報の中にも,核物質防護,核不拡散,財産権の保護に関する情報など非公開とすべきものもあるが,原子力の安全性に関する情報,プルトニウムの管理状況など国民的に関心の深いものに重点をおきつつ,国,原子力事業者にとって都合の良い情報のみを選択的に提供しているとの非難を受けることのないよう一層配慮していくことが重要である。また,国民が十分に情報を提供されているとの実感が得られるよう,提供手段の充実,特に情報ネットワークなど新しい媒体を活用した情報提供への展開や,「草の根」的な広報,体験型の広報など実効性のある事業を体系的に実施していくとともに,広報事業そのものの周知を図ることも重要である。

③青少年に対する正確な知識普及
 青少年に対する原子力についての正確な知識の普及は,より多くの人々が原子力に対する客観的な判断を持つようになる上でとりわけ重要である。青少年の原子力に関する学習機会を確保するため,科学館等における展示の充実や青少年にも分かりやすい資料の充実に努める必要があり,各地の科学技術館における原子力関連展示の充実や事業者の広報施設における青少年向け展示の充実が図られてきている。また,学校教育に原子力を取り上げることの重要性にかんがみ,関係省庁の緊密な連携の下,学校向け副読本の作成,現場のニーズに応じた教師の研修など具体的方策を拡充する。


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