第1章 新しい長期計画の策定
3.新長期計画に基づく当面の原子力政策の展開

(核不拡散への取組)

 我が国が原子力をめぐる国際情勢に的確に対応しつつ,平和目的の原子力開発利用を着実に進めるに当たっては,核不拡散体制の維持・強化は特に重要である。我が国として今後ともこれに最大限の努力を払い,NPTの下での我が国としての義務を厳格に履行するとともに,国際社会における核拡散の懸念を生じさせかねない動きについては毅然たる態度をとっていくことが肝要である。
 とりわけ,北朝鮮の核兵器開発疑惑は,我が国にとって重要な問題であり,その推移を引き続き注視する必要がある。10月21日に米国と北朝鮮の間で署名された合意が誠実に履行されることにより,北朝鮮がNPTにとどまるとともにIAEAとの保障措置協定が完全に履行されることが重要である。
 核不拡散体制の維持・強化の観点から当面する重要な課題として1995年4月に開かれるNPT再検討・延長会議への取組がある。原子力委員会はNPTの無期限延長の支持は妥当であり,延長会議に向けてNPTの普遍性をより高めていくことが重要であるとの考え方を1993年8月の原子力委員会委員長談話で表明し,新長期計画においてもこの考え方を改めて示したところである。さらに核兵器の究極的な廃絶を望む我が国としでは,NPTの無期限延長が核兵器国による核兵器保有の恒久化を意味するものであってはならず1995年のNPT再検討・延長会議に向けてすべての核兵器国がより一層の核軍縮の進展への努力を払うよう働きかけていくことが重要である。


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