第II部 各論
第9章 国際協力活動

2.開発途上国等との国際協力

(1)lAEA/BCA
 我が国は,1978年8月,「原子力科学技術に関する研究,開発及び訓練のための地域協力協定」(RCA協定)を締結した。同協定は,アジア・太平洋地域のIAEA加盟国間の原子力科学技術,特に放射線・放射性同位元素(RI)の利用に関する研究開発及び訓練の推進・協力を目的とするものであり,我が国を含むアジア・太平洋地域の国が締結している(なお,1987年には同協定を改定した「1987年のRCA協定」,1992年には「1987年のRCA協定」を延長する協定(我が国はいずれも締結)が,それぞれ発効している)。
 我が国は,これまで,このRCA計画に,資金・技術両面にわたり域内の原子力先進国として積極的に協力を行ってきており,現在,特に,工業利用・環境計画,医学・生物学利用計画(いずれも放射線・RIの利用分野)及び放射線防護分野の計画に関し,原子力先進国として中心的な立場で,各種のワークショップ,セミナー,研修生の受入れ,専門家派遣等を通じた協力を行っている。

(2)日韓原子力協力取極の締結
1990年3月の韓国の李科学技術処長官(当時)来訪の際,大島科学技術庁長官(当時)に日韓原子力協力取極締結の申出があり,協議の結果,原子力の平和的利用の分野における協力のための日本国政府と大韓民国政府との間の書簡の交換が,1990年5月25日に行われた。この取極により,安全性に関連する規制に関する情報の交換,科学者の交流等の政府機関等の協力を行う枠組みが整備され,原子力の平和的利用の分野における日韓両国間の協力が一層促進されることとなる。

(3)日ソ原子力協力協定の締結
 原子力の平和的利用の分野における日ソ両政府間の協力は,1991年4月14日に署名された原子力の平和的利用の分野における協力の協定の下で行われている。この協定により,原子力発電所の活動における安全性,RI等の利用,放射性廃棄物の処理処分等の分野において情報の交換,専門家の交流,共同研究等の政府機関等の協力を行う枠組みが整備され,原子力の平和的利用の分野における日ソ両国間の協力が一層促進されることとなった。1991年12月のソ連崩壊後,ロシアは本協定を継承した。
 本協定の枠組みの下,ロシアの原子力発電所の安全性向上のための支援として,運転中異常検知システムの設置及び原子力発電運転技術センターの整備に関する協力が行われている。

(4)開発途上国協力の展開
 近年,中国,韓国及びアセアン諸国等は,各国においてその進展の度合いには相当差があるものの,総じて原子力開発利用の推進に高い意欲を有しており,アジアで最も進んだ原子力先進国である我が国に対して放射線・RI利用,研究炉利用,原子力発電等の原子力平和利用分野での協力に対する期待が高まりつつある。
 1984年12月には原子力委員会が「原子力分野における開発途上国協力の推進について」を決定し,特に開発途上国のニーズに応じ,技術協力の一層の促進に加え,人材交流を中心とした研究交流が重要である旨の方針を明らかにしている。
 これを受けて,科学技術庁では,1985年度に日本の研究所と開発途上国の研究所間で研究者の交流を行う研究交流制度を創設し,年々,交流の規模を拡大してきているところである。また1987年度には,開発途上国の原子力関係の中堅行政官を招へいして,日本の原子力分野の経験を修得することを目的とする原子力関係管理者研修を創設した。また,通商産業省では原子力発電分野の協力のため,総合エネルギー調査会原子力部会報告(1986年3月)に基づき,官民協力して開発途上国への技術協力に当たっているところである。
 1987年6月には,原子力委員会は,原子力開発利用長期計画を改定したが,3つの基本目標の1つとして「国際社会への貢献」が取り上げられており,開発途上国協力についても,二国間対応,近隣地域対応を主体的,能動的に実施していくよう提言されている。これを受けて,原子力委員会では,近隣アジア諸国の原子力関係者が一堂に会し,各国の原子力開発利用の現状等について相互に情報交換を行うとともに,地域協力の在り方について意見交換を行うため,1993年3月,第4回アジア地域原子力協力国際会議をそれぞれ東京で開催した。第4回会議では,各国の原子力平和利用の政策の発表,研究炉の共同利用等の4つの分野に関して具体的な協力テーマ及び協力計画について意見交換が行われた。
 他方,政府ベース技術協力の一環として実施している国際協力事業団による研修員受入れにおいては,「アイソトープ・放射線の医学・生物学利用(核医学)」,「原子力基礎実験」,「原子力発電」,「原子力安全規制行政セミナー」,「放射線安全管理実務者」,「環境放射能分析」及び「医療放射線技術」の各集団研修コースを実施したほか,個別研修においても研修員を受け入れている。また,1992年度は,放射線医学の専門家を11名派遣した。

(参考)第4回アジア地域原子力協力国際会議の結果について
1.開催日時
 1993年3月2日(火)~4日(木)
2.開催場所
 日本海運倶楽部国際会議場(東京・平河町)(3月2日)
 ホテル・グランドパレス(東京・飯田橋)(3月3日,4日)
3.実施体制
(1)主  催:原子力委員会
(2)後  援:科学技術庁,外務省,厚生省,農林水産省,通商産業省
(3)協  賛:日本原子力研究所,動力炉・核燃料開発事業団,国際協力事業団,(社)日本原子力産業会議
4.趣 旨
 近隣アジア諸国の原子力関係者が一堂に会し,各国の原子力開発利用の現状等について相互に情報交換を行うとともに,地域協力の在り方について意見交換を行う。
5.参加国
 オーストラリア,中国,インドネシア,韓国,マレイシア,フィリピン,タイ,日本
6.本会議において合意された事項
(1)1993年度より地域協力活動として,以下の活動を開始する。

① 研究炉利用
1993年度は,1992年度に策定された協力計画に基づき,引き続き,中性子ビーム実験,RI生産,放射化分析の3テーマについてワークショップを開催する。
② 放射線の医学利用
1993年度は,地域協力グループにおいて,今後の進め方について検討を行うとともに,放射線治療セミナーを開催する。
③ 放射線の農業利用
1993年度は,昆虫不妊化のフィージビリティ・スタディ委員会による現地調査及び委員会開催を行うとともに,植物の品種改良技術ワークショップを開催する。
④ パブリック・アクセプタンス(PA:原子力に関する理解の増進)
1993年度は,原子力広報セミナー及びコンタクトパーソン会合を開催するとともに,現在,試行的に実施しているPA情報交換ネットワーク (AsiaNNet)事業は有益であり,継続して実施する。
(2)次回会議は1994年度中に開催することとし,その場所および議題については,参加国間で協議し,決定すること。


目次へ          第2部 第9章(3)へ