第II部 各論
第3章 核燃料サイクル

1.ウラン資源

(1)世界のウラン資源量と日本のウラン確保量
1990年の旧西側諸国の1キログラム当たり130ドル以下で回収可能な確認資源量は,約200万トン(ウラン量トンU,以下同じ。)である。
 1990年の旧西側諸国のウランの需要量は約4万トンUで,ウラン生産量は,約2万8千トンUであった。1987年以降,需要量が生産量を上回る状況が続いており,その差分については過去の在庫の取り崩しや東欧諸国からの輸入で補われていると考えられている。1992年の日本のウラン需要量は,約8,000トンUで,世界のウラン需要量の約20%を占めている。現在,我が国のウランはすべてカナダ,オーストラリア,英国等から輸入している。我が国の電気事業者は,カナダ,英国,オーストラリア等から主として長期契約等により約15万2千トンU,また,ニジェール及びオーストラリアの開発輸入分として約2万7千トンU,計約18万トンUの天然ウランを確保している。
 このように,日本は世界のウラン資源のかなりの量を消費していることから,海外のウラン鉱山から製品としてウランを購入するのみではなく,自主的な調査探鉱活動を通して,世界のウラン資源量の増大と市場の安定化に貢献することが重要である。

(2)ウラン資源の調査探鉱
 海外における我が国のウラン資源の調査探鉱活動は,動力炉・核燃料開発事業団及び民間企業が実施している。動力炉・核燃料開発事業団は,1992年度には,カナダ,オーストラリア,アフリカ諸国及び中国等において単独又は海外企業と共同による調査・探鉱を実施しており,カナダ,オーストラリア及びジンバブエにおいて有望な成果が得られつつある。
 また,我が国の民間会社もカナダ及びオーストラリアにおいて活動を行っている。出光興産(株)は,1982年からカナダのシガーレイク地区でフランス,カナダ等の鉱山会社と調査探鉱を行っており,高品位の鉱床を発見し,現在,企業化調査を実施中である。

 さらに,同社は,西オーストラリア州のパターソン地区においても外国企業と共同調査を実施中である。

(3)製錬・転換技術の開発
 ウラン鉱の製錬・転換技術に関しては,動力炉・核燃料開発事業団において,ウラン鉱石からイエローケーキを経ずに,一挙に四フッ化ウランを製錬する技術が開発され,さらに,これに続けて六フッ化ウランまで転換する技術が開発され,その実用化のために製錬・転換パイロットプラント(六フッ化ウラン製造能力200トンU/年)の試験運転が,主要な試験を1988年3月まで行われた。またその後はこの施設を活用して回収ウランの転換試験が行われており,1993年3月までに44トンUが処理される計画である。


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