第II部 各論
第2章 安全の確保及び環境保全

3.原子力施設等の安全性実証試験等

 原子力発電施設の安全性及び信頼性に関する地元住民の不安を解消し,立地の円滑化に資するため,実規模又はそれに近い形で行う原子力発電施設等の安全性実証試験が,電源開発促進対策特別会計の委託費により日本原子力研究所,(財)原子力発電技術機構,(財)原子力安全技術センター等において実施されている。1992年度に実施された主な安全性実証試験の概要は以下のとおりである。

(1)配管信頼性実証試験
(実施機関:日本原子力研究所)
 軽水炉の冷却材圧力バウンダリ配管が受ける熱負荷に対する配管の耐性を明らかにし,配管の瞬時破断等の重大な事故の発生の可能性はなく,また,万一,原子炉に重大な事故が発生した場合においても安全性が確保されていることを実証するため,1975年度より配管試験体を用いて試験研究を実施している。1992年度は,軽水炉冷却系の配管内熱負荷挙動解析に関する調査を行い,解析コードの開発に着手した。

(2)大型再冠水効果実証試験
(実施機関:日本原子力研究所)
 軽水炉の運転中に一次冷却系配管が破断し,冷却水が流出したとき,炉心燃料は露出し,残留崩壊熱によって過熱することが予想される。
 この過熱を避けるため実炉では非常用炉心冷却系(ECCS)を作動させ,炉心を再び冠水させて,燃料を冷却するように設計されており,安全審査においてもその冷却効果は十分であると評価されている。本実証試験はECCSによる炉心冷却が十分効果的であることを実規模実験等により確認し,原子炉冷却材喪失事故時の安全性を実証するため,1976年度より試験研究を実施している。1992年度は,二相流動試験,最適評価コードの整備等を進めるとともに,今後の試験計画を検討した。

(3)再処理施設耐食安全性実証試験
(実施機関:住友化学工業(株),(社)日本溶接協会)
 再処理工程中,高濃度の沸騰硝酸を使用する酸回収蒸発缶及び溶解槽の実物大モデルを製作し,運転状態を模擬して長期間試験を実施し,その耐食性を実証するものであり,1992年度は,チタン合金製酸回収蒸発缶の模擬機を用いて試験を実施した。
 また,再処理施設で使用される異種材料の配管接合部について,実規模大の試験体を用いた腐食疲労試験等により,当該接合部が十分な耐食安全性を有することを実証することとし,1992年度は,接合体の応力解析及び小型試験体の接合を行い,硬さ及び元素分布,並びに腐食,疲労特性の測定等を行った。

(4)再処理施設換気設備安全性実証試験
(実施機関:日本原子力研究所,(財)原子力安全技術センター)
 再処理施設のセル換気系安全性について,万一の誤操作や故障等により爆発事故,あるいは火災を伴う爆発的な急激燃焼事故が発生してもセル換気系の健全性が維持されることを実証することを目的とし,1992年度は実証試験装置を用いて衡撃波減衰効果実証試験等を行った。

(5)再処理施設臨界安全性実証試験
(実施機関:日本原子力研究所)
 再処理施設において臨界安全管理が問題となる溶解槽,抽出器,槽類等について,模擬装置を製作して,臨界実験を行い,各機器の臨界安全上の裕度が十分大きいこと,さらに万一臨界事故が発生した場合においても発生する放射性物質に対する閉じ込め機能が十分維持されることを実証するものであり,1992年度は,実証試験装置の製作及び臨界安全データの収集・整備を行った。

(6)ガラス固化体閉じ込め安全性実証試験
(実施機関:日本原子力研究所)
 再処理施設から発生する高放射性廃液のガラス固化体についで,揮発・漏洩挙動等に関する試験を実施し,ガラス固化体外へ移行する放射能量が十分小さく問題がないことを実証することにより,周辺住民の不安を解消しようどするものであり,1992年度は5リットルガラス固化体試料を用いての揮発漏洩挙動試験等を実施した。

(7)再処理施設耐震安全性実証試験
(実施機関:(株)日建設計)
 再処理施設の主要な機器等のうち,セルライニング,小口径配管,中空円筒状貯槽,MOX粉末容器について加振試験等を行い,再処理施設の耐震性能の信頼性を実証するものであり,1992年度は予備解析,供試体の設計・製作及び加振試験等を実施した。

(8)再処理施設抽出工程安全性実証試験
(実施機関:日本原子力研究所)
 再処理施設の抽出工程においで,誤作動,誤操作に起因する臨界,火災等の異常事象について,事象の進展速度及び変化の幅等に関する試験及び解析を行い,時間等十分な余裕があることを示し,運転員対応等を含む拡大防止対策により抽出工程の安全性が確保できることを実証するものであり,1992年度は連結抽出システム試験装置を用いた試験,計算コードによる解析等を実施した。

(9)再処理施設プロセス機器安全性実証試験
(実施機関:三菱原子力工業(株))
 再処理施設のプロセス機器(溶液移送設備及び溶液貯蔵設備)についで,模擬設備を用いた安全性試験を行い,配管閉塞,異常発熱,誤操作等の異常事態が発生しても,種々の安全設備等により十分な安全性が確保されることを実証する。1992年度は,溶液移送・貯蔵予備試験,溶液移送試験設備の設計等を行った。

(10)再処理施設安全性実証解析等
(実施機関:(財)原子力発電技術機構)
 再処理施設の安全性について重要な事項を選定して,解析コードを用いて安全解析を行い,また,海外の再処理施設等で発生した事故・故障等について分析評価を行って,国内の再処理施設の安全性を実証するものであり,1992年度は大気拡散及び海洋拡散に関する被ばく評価計算を実施した。

7(11)新型動力炉原型炉機器等寿命信頼性等実証試験
(実施機関:(財)原子力安全技術センター)
 新型動力炉原型炉の機器,部材等について通常運転試験,起動・停止試験等を行うことにより,その寿命信頼性,健全性を実証するものであり,1992年度には,高速増殖炉「もんじゅ」の中間熱交換器支持スカートについて試験を行うとともに,評価システムの整備を実施した。

(12)研究開発段階原子炉施設安全性実証解析等
(実施機関:(財)原子力発電技術機構,(財)原子力安全技術センター)
 研究開発段階原子炉について,国が独自の安全解析コードを用いて,実施に安全解析を行い,その安全性を実証するとともに,国内外の原子力発電所で発生した事故について分析評価を行い,研究開発段階原子炉施設の安全性を実証する。1992年度は,新型転換炉原子炉「ふげん」について,事例解析等を実施した。

(13)放射性廃棄物輸送容器等安全性実証試験
(実施機関:(財)電力中央研究所)
 再処理施設をはじめとする核燃料サイクル事業施設の下北地区への立地に伴い高レベル固化体廃棄物を含む海外再処理返還廃棄物が廃棄物管理施設へ,また,原子力発電所で発生した低レベル放射性廃棄物が低レベル放射性廃棄物埋設施設へ大量に輸送されることとなる。
 本実証試験は,これら廃棄物のうち当面ガラス固化体の輸送を取り上げ,実規模の輸送容器を用いて落下試験,耐火試験等を行い,ガラス固化体の輸送容器についての信頼性を示して,周辺住民の不安を解消しようとするものであり,1992年度は落下,耐火等の試験及び解析等を実施した。

(14)燃料集合体信頼性実証試験
(実施機関:(財)原子力発電技術機構)
 実炉で照射される燃料集合体の,照射による挙動を調べる照射試験(1986年度終了),模擬試験体を用いて想定される最大限の熱負荷を課す最大熱負荷試験(1989年度終了),模擬管群体系内のボイド(蒸気泡)挙動を把握する管群ボイド試験,BWR新型燃料の8×8型燃料及び9×9型燃料集合体熱水力試験,BWR高燃焼度9×9型燃料照射試験及び混合酸化物燃料照射試験により燃料集合体の信頼性を実証するものであり,1992年度は,PWR燃料集合体管群ボイド試験の試験体製作・試験,BWR新型燃料集合体熱水力試験の8×8型燃料試験体製作・試験及び9×9型燃料基礎試験・設備製作,BWR高燃焼度9×9型燃料照射試験の基本設計,及び混合酸化物燃料照射試験の基本設計(海外調査等)を行った。

(15)溶接部等熱影響部信頼性実証試験
(実施機関:(財)原子力発電技術機構,(財)発電設備技術検査協会,(財)産業創造研究所,(財)電力中央研究所)
 原子力発電所の安全上極めて重要な原子炉圧力容器,配管等の溶接部の信頼性を実証するものであり,1992年度は実用原子力発電施設材料等信頼性実証試験,機器配管共用期間中健全性実証試験,発電設備溶接部信頼性実証試験及び実用原子力発電施設検査技術信頼性実証試験の調査・設備の設計製作,原子炉格納容器信頼性実証試験の調査・設備の設計製作・試験,除染部信頼性実証試験,インターナルポンプ溶接部等信頼性実証試験及び原子力発電所水質等環境管理技術信頼性実証試験の設備の製作・試験を行った。

(16)原子力発電施設耐震信頼性実証試験
(実施機関:(財)原子力発電技術機構)
 原子炉格納容器,一次冷却設備等の重要な大型設備について実物大又は実物に近い大きさの試験体を製作し,これらについて大型高性能振動台による振動試験を行い,耐震安全性・信頼性を実証するものであり,1992年度には,電算機システムの試験及び解析・評価を行った。
 さらに,原子炉停止時冷却系等試験設備及び主蒸気系等試験設備の設計・製作並びにコンクリート製原子炉格納容器試験設備の設計を行った。

(17)実用原子力発電施設安全性実証解析等
(実施機関:(財)原子力発電技術機構)
 国が独自に開発した安全解析コード等を用いた安全解析により原子力発電所の安全性を実証するとともに,実際に発生した事故について,各種の安全管理情報等を用いて分析評価することにより重大事故に至らないこと等を実証するもので,1984年度より実施している。


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