第II部 各論
第1章 原子力発電

2.原子力発電所の運転状況

(1)設備利用率
 実用発電用原子炉の設備利用率は1980年度に60%を超えた後,着実に上昇し,1992年度は74.2%と,1983年度に70%を超えて以来,10年間引き続いて70%台の高い率で推移している。残りの25.8%については定期検査期間の停止が23,8%,故障・トラブル等による損失分が2%である。1991年度に比較して,中間停止等による発電損失の割合が減少したことにより,0.4%増加した。
 炉型別の設備利用率は沸騰水型軽水炉(BWR)が74.1%,加圧水型軽水炉(PWR)が74.4%となっており,BWRは1991年度に比較して0.9%の減少,PWRは2%の増加であった。BWRの設備利用率が減少した主な要因は,故障・トラブルによる発電損失割合が増加したことであり,また,PWRの設備利用率が増加した主な要因は,定期検査による発電損失割合が減少したことである。なお,主要国の設備利用率と比較すると,ほぼ最高の水準を示している。
 このように設備利用率が近年高い水準を維持している要因としては,次のような点が挙げられる。
① 従来,定期検査期間を長期化させていた初期トラブル等の対策作業量が減少し,また,定期検査が効率的に実施されるようになった。
② 設備・機器の改良,品質管理の徹底等による信頼性の一層の向上,燃料設計の変更(濃縮度の上昇)等により運転期間を長期化することが可能になってきた。
③ 予防保全を重視した品質管理,内外の故障等に関する情報の活用等,故障の未然防止対策の徹底が図られるなど設備の信頼性の向上により,運転中のトラブルが減少してきた。

(2)故障・トラブル等
 実用発電用原子炉の故障・トラブル等は,「電気事業法」及び「核原料物質,核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(原子炉等規制法)」の規定に基づき,原子炉設置者が国に対して報告するよう義務付けられている。1992年度中に両法に基づき報告された故障・トラブル等の件数は20件で,ここ数年低い水準で推移している。
 なお,以上のいずれの故障・トラブル等についても周辺環境への放射能の影響はなかった。


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