第I部 総論
第2章 エネルギー情勢等と内外の原子力開発利用の状況

9.原子力施設の立地の促進

 我が国の総合エネルギー政策の指針である「石油代替エネルギーの供給目標」は,1990年10月,閣議決定を経てエネルギー対策閣僚会議において改定されたが,この中で,原子力発電の設備容量としては,2000年度に5,050万キロワット,2010年度に7,250万キロワットの設備容量とすることが目標とされている。一方,1993年9月現在,運転中のものが3,736万1千キロワット(46基),建設中のものが816万7千キロワット(8基),着工準備中のものが82万5千キロワット(1基)で合計4,635万3千キロワット(55基)を確保している。
 また,1986年に発生したチェルノブイル原子力発電所事故以降,国民全体に,原子力の安全性,放射能汚染等に対する不安,懸念が広がったこともあり,各種メディア,原子力モニター制度,説明会,パンフレットの配布等を活用して原子力の安全性,必要性等について地元住民を始めとする国民の理解と協力を得るための努力を重ねている。
 さらに,立地地域の振興対策の拡充を図るため,電源三法(発電用施設周辺地域整備法,電源開発促進税法及び電源開発促進対策特別会計法)の活用等が逐次図られており,1993年度には,新たに,電源三法による交付金により,放射線に対する理解の増進等を図るため,放射線利用試験研究推進のための施設整備を行うとともに,電源三法による補助金を利用した広報活動の対象地点に北海道幌延町が追加された。
 立地の促進策については,関係審議会においても検討がなされており,電気事業審議会では,「地域共生型発電所」という新しい概念を打ち出し,電源地域振興を推進することを提唱しており,これを具体化するための交付金制度が1993年度に創設された。また,電源開発調整審議会では,電源立地を「国をあげて支援すべきプロジェクト」と位置付けるとともに,電源開発調整審議会に上程される前の段階(初期段階)における取組が重要であるとし,1993年3月同審議会の下に電源立地部会を設置し,電源立地を促進するため,関係省庁の協力を得て,初期段階地点の状況の把握,地域振興計画に関する助言及び協力についての方策等の調査・審議が継続的に行われている。
 立地に関する最近の動向としては,1993年度の電力施設計画において,新たに6基の原子力発電所の立地計画が盛り込まれた。このうち,1993年度に電源開発調整審議会に上程予定のものは,東北電力(株)女川原子力発電所3号炉(沸騰水型軽水炉(BWR),82.5万キロワット)であり,また,1994年度に上程予定のものは,東北電力(株)東通原子力発電所2号炉(BWR,110万キロワット),東京電力(株)東通原子力発電所1,2号炉(BWR,110万キロワット×2基)及び東京電力(株)の2基(ABWR,135.6万キロワット×2基)である。
 また,1993年6月の総合エネルギー対策推進閣僚会議において,要対策重要電源として,新たに珠洲原子力発電所1・2号を指定するとともに,東通,女川及び志賀の3地点については,基数の追加が行われた。この要対策重要電源の制度は,1977年に創設されたが,新規指定が行われたのは,1986年以来である。
 新型転換炉実証炉については,1993年度に電源開発調整審議会に上程予定であり,2002年3月の運転開始を目指して,電源開発(株)が青森県大間町にて準備を進めている。
 核燃料サイクル関連施設については,これまで日本原燃(株)が青森県六ケ所村にて立地を推進してきたが,既にウラン濃縮工場,低レベル廃棄物埋設センターは操業を開始し,また,高レベル放射性廃棄物の貯蔵施設である廃棄物管理施設は建設を開始している。さらに,1992年12月の事業指定を受けて,再処理工場が1993年4月に着工したことにより,同社が計画しているすべてのプロジェクトが動きだしたことになる。


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