第I部 総論
第1章 核燃料リサイクルに関する内外の情勢と原子力開発利用長期計画の改定に向けた取組

3.原子力開発利用長期計画の改定に向けた取組

 原子力委員会は,原子力開発利用を国民の理解と協力の下に計画的かつ総合的に遂行していくため,原子力開発利用に関する指針の大綱と基本的な施策の推進方策を記した原子力開発利用長期計画(以下「長期計画」という)を1956年以来,ほぼ5年ごとに数次にわたり策定してきている。
 現行の長期計画は,1987年6月に策定されたものであるが,原子力委員会においては,青森県六ケ所村における核燃料サイクル事業を始めとした我が国の原子力開発利用の着実な進展,東西冷戦の終了,核兵器の拡散に対する懸念の高まり,地球環境問題に対する意識の向上等原子力をめぐる内外の情勢が大きく変わってきていることにかんがみ,1992年7月,長期計画の見直しを行うことを決定し,原子力委員会の下に長期計画専門部会を設置した。
 同専門部会の下には,基本分科会,第一分科会(軽水炉利用),第二分科会(核燃料リサイクル),第三分科会(核不拡散と国際貢献)及び第四分科会(技術開発)の5つの分科会を設置することが決められ,さらに,第一分科会と第二分科会合同で放射性廃棄物対策,第三分科会に核不拡散対応,第四分科会に原子力船,高温工学試験研究,原子力人材問題の各ワーキンググループが設置され,現在,これらの分科会等において検討を行っている。
 また,核燃料リサイクルをめぐる内外情勢等を背景として,原子力政策について国民的関心が高まっている状況にもがんがみ,長期計画の策定過程において原子力分野以外の学識経験者等から原子力開発利用について広く意見を求め,長期計画に反映させることが有意義であると考えられる。現在,長期計画専門部会に原子力の専門家以外の有識者から構成される長期計画懇談会を設置し,我が国の原子力開発利用の在り方について,今回の長期計画の改定をめぐって審議を行っている。
 長期計画の見直しに当たっての主要検討事項は,
・21世紀を展望した長期的かつ整合性ある原子力開発利用体系の構築・東西冷戦後の新たな世界秩序における核不拡散と原子力平和利用との両立
・原子力の技術先進国の一員としての国際貢献,科学技術立国にふさわしい先導的プロジェクト,基礎研究・基盤技術開発の推進
・エネルギー問題,地球環境問題等の世界的課題に取り組む上での原子力の必要性等に対する国民の理解の増進等である。
 これらは,総合的な視点に立った今回の長期計画の見直しにおける検討事項であるが,核燃料リサイクルという観点から,重要と思われる検討課題としては,
・2.(2)で述べたような核燃料リサイクルの必要性とその意義を再確認すること
・高速増殖炉開発計画を始め全体として整合性を持った合理的な核燃料リサイクル計画を示すこと
・核不拡散をめぐる国際情勢等を踏まえ,内外の理解を得られるよう透明性に配慮して核燃料リサイクル計画を示すこと
 等を挙げることができる。

 本章において述べたように激動する国際情勢の中,原子力基本法の理念に則って,国民的また国際的理解を得つつ核燃料リサイクルを始めとする原子力開発利用を推進し,エネルギー安定供給の確保と先端的な科学技術の振興を図るとともに原子力の更なる可能性を切り開き,原子力平和利用先進国として国際社会に積極的に貢献していくために,今回の長期計画の見直しは極めて重要なものである。
 原子力委員会は,21世紀を見据え,時代環境に即応した我が国が採るべき原子力開発利用の基本方針及び具体的推進方策としての新長期計画の策定に向けて,各界の意見に耳を傾けつつ,全力を挙げて取り組む所存である。


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