第6章 放射線利用
3.工業への利用

 工業における放射線利用としては,製品製造工程等における各種測定・分析,高分子材料の合成・改質,医療用具の滅菌等がある。

(1)測定・分析
 放射性同位元素がトレーサーとして,エンジン部や機械部品の摩耗測定に利用されている。また,工程管理のための厚さ計,密度計,液面計等並びに環境汚染物質等の分析のためのイオン分析,ラジオクロマトグラフィー装置に線源として放射性同位元素が利用されている。
 さらに,鉄鋼,機械,造船,航空機製造等の業種において,外観上はわからない内部の欠陥を物体を壊さないで調べる非破壊検査法にも放射性同位元素が線源として利用されている。

(2)高分子材料の合成・改質
 高分子材料の合成では,原料のモノマーへの放射線照射による重合反応を利用して,ウッドプラスチックの製造や塗装塗膜の硬化等が行われている。
 高分子材料の改質では,主に電子線を利用して,放射線照射による高分子の架橋反応(分子が編目状の橋かけ構造になること)を利用して,電線被覆材の耐熱性・絶縁性等の向上,発泡ポリエチレンの加工,熱収縮フィルムチューブの製造,タイヤへの加硫等が行われている。

(3)医療用具の滅菌
 コバルト60からのγ線により,人工腎臓,注射針,注射筒,手術用手袋,メス,縫合糸などの医療用具の滅菌が,有害残留物の心配がない,最終包装形態で処理できる等の利点により着実に普及している。


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