第2章 核燃料サイクル
5.プルトニウム利用

 我が国においては,ウラン資源を有効に利用し,原子力発電の供給安定性を高めるため,安全性及び経済性を含め,軽水炉によるウラン利用に勝るプルトニウム利用体系を長期的に確立することが極めて重要である。このため,再処理により得られるプルトニウムを利用することとし,段階的に開発努力を積み重ねていくこととしている。
 プルトニウムの利用形態に関しては,ウラン資源の利用効率が特に高い高速増殖炉での利用を基本とし,高速増殖炉の実用化を目指すこととしている。また,我が国の原子力発電計画においては,当面,軽水炉が主流であることから,軽水炉自体によるリサイクル利用を図り,それによってエネルギー供給面での一定の役割を果たすとともに,併せて高速増殖炉の実用化に向けて,実用規模の核燃料リサイクルに必要な技術,体制等を整備していく。さらに,核燃料利用の面で融通性に富む新型転換炉において,その特徴を活かしつつ,プルトニウム利用を進めることとしている。
(1)軽水炉によるプルトニウム利用
 軽水炉によるプルトニウム利用(プルサーマル)については,現在の少数体規模での実証計画の成果をふまえつつ,最初の利用計画として,1990年代央に,80万キロワット級以上のBWR及びPWRそれぞれ一基において,その1/4炉心相当分をウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)燃料にする計画を経て,それに続いて,1/3炉心相当分のMOX燃料を装荷する100万キロワット級軽水炉に換算しで,1990年代末には4基程度,2000年過ぎには12基程度の規模にまで段階的かつ計画的に拡大し,本格利用へと移行することとしている。
 現在は,少数体規模での実証計画が進められており,日本原子力発電(株)敦賀1号炉(BWR)で1986年6月から1990年2月までMOX燃料2体を照射した。また,関西電力(株)美浜1号炉(PWR)で1988年3月からMOX燃料4体の照射を開始し,1991年12月に照射を終了した。
(2)プルトニウム燃料の加工
 使用済燃料の再処理により生ずるプルトニウムは,高速炉用MOX燃料及び熱中性子炉用MOX燃料への利用を図ることが可能である。
 高速増殖炉及び新型転換炉の開発の進展に応じて加工体制を整備していくとともに軽水炉への利用の要請に対応していく必要がある。
① プルトニウム燃料加工
MOX燃料加工の研究開発は,動力炉・核燃料開発事業団を中心として実施されてきており,その加工実績も1992年3月末までの累積で約113トンMOXに達しており,我が国は世界的にみてトップレベルにある。
現在の製造設備能力は,新型転換炉原型炉「ふげん」用燃料製造施設の10トンMOX/年及び高速増殖炉用燃料製造施設の5トンMOX/年である。また,新型転換炉実証炉用燃料製造施設(40トンMOX/年)の建設が予定されている。
② 硝酸プルトニウムの混合転換
MOX燃料の原料となるプルトニウム原料粉は,海外再処理で得られたもの及び東海再処理工場から得られた硝酸プルトニウムを動力炉・核燃料開発事業団が独自に開発した「マイクロ波加熱直接脱硝法」によって混合転換したものを使用している。
本技術の実用化を図るためのプルトニウム転換技術開発施設は,1983年4月からの試運転以後,1992年3月末までに約6,960キログラムの混合転換粉を製造している。

(3)高速増殖炉燃料再処理技術開発
 我が国における高速炉燃料の再処理技術開発は,動力炉・核燃料開発事業団において実施されてきている。現在,ウラン又は放射性同位元素を用いた再処理工程・機器の実規模モックアップによる開発試験とともに,高レベル放射性物質研究施設(CPF)において,高速実験炉「常陽」及び海外炉の照射済燃料を用いた実験室規模の再処理の試験が行われている。ここで回収されたプルトニウムが,1984年9月,「常陽」で初めてリサイクル利用された。また,工学規模でのホット試験によりプロセスエンジニアリングの確立を図るため,リサイクル機器試験施設(RETF)の安全審査が進められている。
 また,前処理工程技術,遠隔技術等の技術開発に関する米国との共同研究が行われている。


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