第1章 原子力発電

(参考)諸外国(地域)の動向

①概況
 世界の原子力発電設備容量は,1992年6月末現在,運転中のものは418基,3億4,155万キロワットに達しており,建設中,計画中のものを含めると総計564基,4億7,747万キロワットとなっている。
 現在,欧米等の先進諸国を中心として原子力発電所の運転が行われているが,原子力発電国(地域)は,ソ連の崩壊に伴い従来の25か国(地域)から28か国(地域)へと変更になった。その他開発途上国等においても原子力発電所の建設あるいは計画が進められており,これらの国を合わせると36か国(地域)に上っている。
 運転中のものについてみると,米国が全世界の原子力発電設備容量の約31%を占めており,フランス,旧ソ連,日本がそれに続いている。
 炉型別では約8割が軽水炉で占められており,このうち,約7割が加圧水型軽水炉(PWR),残り約3割が沸騰水型軽水炉(BWR)となっている。
 チェルノブイリ原子力発電所事故の影響等により,一部の国では,原子力発電から撤退する方針もとられているが,近年のエネルギー需要の急激な伸びの中において,原子力は,石油代替エネルギーの中核として,その供給安定性と優れた経済性及び環境保全の観点より注目されている。

② 各国(地域)の動向
 米国は,世界第1位の原子力発電設備を有し,1992年6月末現在,110基,1億501万キロワットの原子力発電所を運転している。1991年には,約6,126億キロワット時を原子力発電所により発電し,総発電電力量の約22%を供給している。また,1991年の年間設備利用率の平均も過去最高の70.2%であった。
 米国では,過去数年間,新規電源開発の立ち後れや電力供給体系の不備から,夏期や冬期の電力需要のピーク時には電力需給の逼迫が深刻化し,一部地域では電力供給制限や停電の発生がみられるなど電力供給体制の信頼性確保に懸念が生じていた。しがし,最近になって,米国経済が低迷していることや,電力会社が積極的に需要側管理を推進しているため,当面電力供給力不足は顕在化しないとの見方が多くなっている。
1991年2月,ブッシュ大統領は2010年を目標年度にエネルギーの自立達成に向けて,「国家エネルギー戦略」を発表した。同戦略は,長期的な政策目標として,①国内石油生産の増大,原子力発電開発の拡大,②再生可能エネルギー源の開発,③エネルギー効率の改善等を掲げている。特に,原子力発電については,国産エネルギー資源であり,化石燃料の使用抑制や地球環境問題等へ貢献できることから,今後も積極的な活用を期待している。そのため,①原子力発電にかかわる許認可手続きの簡素化,②高レベル放射性廃棄物処分場の立地,許認可の推進,③新型軽水炉の標準化設計の推進等を挙げている。同戦略で提案されている諸対策の法制化については,既に議会では,同戦略とほぼ同趣旨の1991年国家エネルギー安全保障法案がジョンストン,ワーロップ両議員から上院に提出されていたが,同法案は1992年1月に一部修正の上,新たな法案として提出され,同年2月上院本会議で可決された。また,同年5月下院本会議において,同様の内容を持つ包括的エネルギー法案が可決された。両法案の内容には若干の差異があるため,両院協議会で調整が行われている。
 原子力規制委員会(NRC)は,1991年11月,原子力発電所の運転延長許可に係る最終規則を承認し,これにより現行40年の運転認可期間が20年を越えない範囲で延長可能となった。しかし,運転期限延長を求める申請の第1号として,関係者より期待されていたヤンキーロー発電所(18万5千キロワット,PWR)は,経済的要因等を理由に,1992年2月,閉鎖されることが決定した。また,ランチョセコ発電所(96万6千キロワット,PWR)も1992年より廃止措置のための具体的作業に着手した。
1991年7月,8月に実施された世論調査(ギャラップ社)によると,回答者の73%が原子力は米国の今後のエネルギー需要を満たす上で「重要な役割」を果たすべきであると考えている。また,71%が「原子力が温室効果ガスの放出や大気汚染を減らすならば,我々は原子力を更に利用すべきである」との意見を支持している。
 カナダは,従来から自国の豊富なウラン資源と自主技術にょるカナダ型重水炉(CANDU炉)を柱とした独自の原子力政策を一貫してとっている。1992年6月末現在,19基,1,390万キロワットのCANDU炉が運転中で,1991年には約801億キロワット時を発電し,総発電電力量の約16%を供給している。
 一方,CANDU炉を供給しているカナダ原子力公社(AECL)は,CANDU炉の輸出にも力を入れており,アルゼンチン,韓国,インド及びパキスタンで同炉が運転されている。1992年9月には,韓国と月城原子力発電所3,4号機の受注契約を締結した。また,新型軽水炉(ABWR,APWR)に対抗する新型炉として,モジュラー型のCANDU-3型炉の開発にも力を入れている。
 オンタリオ州議会は1990年11月,新規電源に関する環境評価が終了するまで,少なくとも3年間原子力の開発を一時停止することを決定したが,現在建設中の原子力発電所は,予定どおり運転開始させることとしており,1992年末から1993年にかけてダーリントン1,3及び4号機が運転開始する予定である。
 オンタリオ・ハイドロ社は,1989年12月にエネルギー開発25か年計画を発表し,2014年までにCANDU炉(88.1万キロワット)10基を建設することを提案していた。しかし,州政府の指示により長期電源開発計画の見直しを行い,1991年12月,新規原子力発電所の計画を含む長期電源開発計画を撤回した。
 フランスは,エネルギー資源に乏しく,エネルギー自給率を改善するため原子力発電を積極的に導入し,1992年6月末現在,54基,5,760万キロワットの発電所を運転中である。1991年には約3,149億キロワット時を原子力発電により発電し,総発電電力量の約73%を供給している。現在,6基の原子力発電所が建設中であり,そのうちパンリー2号機は1992年中に運転開始が予定されている。
 フランス政府は,1991年第10次経済社会発展計画の一環としてまとめたエネルギー計画「エネルギー見通し2010年」を発表した。同計画は,省エネルギー,原子力開発,エネルギー供給源の多様化という従来のエネルギー政策を再確認するものである。1992年のヨーロッパ共同体(EC)市場統合に伴う「域内単一エネルギー市場」構想を受け,フランスとしての対応策を検討したものとなっている。最近のエネルギー需要は,同計画で想定している3つのシナリオのうち「高めシナリオ」に近いため,1992年末又は1993年初めに原子力発電所1基の発注が予定されている。
 このような積極的な電源開発をもとにフランスは,近隣欧州諸国への電力輸出にも力を入れており,総発電電力量の約12%にあたる534億キロワット時をスイス,イタリア,英国,ドイツ等の国々へ送電している。
 フランスは,高速増殖炉開発においても先進的な地位にあり,既に,原型炉フェニックス,実証炉スーパーフェニックスを運転開始している。しかしながら,両炉とも,トラブルにより1990年から運転停止状態にあり,運転再開に向けて準備が進められてきた。スーパーフェニックスについては,1992年7月3日までに運転が再開されない場合は,許認可の取り直しになるため,政府の運転再開に関する決定が注目されていた。政府は1992年6月,安全当局の報告書等をふまえて,運転再開には安全性確保のための対策の実施と,施設の安全性についての公聴会の開催が必要として,スーパーフェニックスの運転再開を延期するとの決定を行った。
 また,スーパーフェニックスに続く商業炉として,フランス,ドイツ,英国の設計研究,及び関連研究開発等を統合して,経済性を重視した「欧州高速増殖炉」(EFR)計画が進められており,高速増殖炉の実用化に向けての努力が引き続き行われている。
 英国では,1992年6月末現在,ガス冷却炉(GCR)及び改良型ガス冷却炉(AGR)を中心に,37基,1,316万キロワットの原子力発電所が運転中である。1991年には,約620億キロワット時を原子力発電により発電し,総発電電力量の約21%を供給している。これらのうち,運転経験が20年を越えたGCR22基については,原子力施設検査局(NI)が定例的に長期運転評価作業を実施している。
 現在建設中・計画中の原子力発電所は,すべて加圧水型軽水炉(PWR)であり,その初号機サイズウェルBは順調に工事が進められている。サイズウェルBに続く,ヒンクレーポイントCについては,1990年9月,政府は建設計画を承認したが,建設資金の承認については,サイズウェルBの完成後の1994年に予定される,新規原子力発電所計画に関する再検討作業が実施されるまで留保することとした。同検討会で,今後の英国の原子力開発方針が決定されることになるが,原子力の継続が認められるためには,原子力に経済性のあることを証明することが必要である。そのため,国有原子力発電会社(ニュークリアエレクトリック社)はコスト削減,稼動率向上に向けて努力している。
 ドイツは,1990年10月,東ドイツが西ドイツに統合され,新たにドイツ連邦共和国がスタートした。1992年6月末現在,21基,2,363万キロワットの原子力発電所が運転中であるが,そのすべてが旧西ドイツ分である。1991年には,1,400億キロワット時を原子力発電により発電し,総発電電力量の約28%を供給している。旧東ドイツのノルト原子力発電所1-4号機(VVER-440/230)は1990年に既に閉鎖することが決定されていたが,5号機(VVER-440/213)も,1991年9月,安全性調査結果を受け閉鎖が決定された。また,6,7及び8号機も建設工事を進めないこととなった。
1991年12月「統一ドイツのエネルギー政策」が閣議決定された。同政策では,統一ドイツのエネルギー政策上の優先的課題として,エネルギー面での旧東ドイツの早急な統合,CO2排出の削減,バランス取れたエネルギー構造のための条件整備及び旧ソ連・東欧との協力強化を挙げている。地球環境問題等の現状を踏まえ,石炭・褐炭利用は継続するものの,特に褐炭利用については,新技術(ガス化)導入と有害排出物の削減に努めることとしている。また,原子力については,原子力に代わる安定的な代替エネルギー源がない限り,引き続き電力生産における重要な役割を果たすことを指摘している。その場合,安全性が経済性に優先することがあわせて指摘されている。
 スウェーデンでは,12基,1,037万キロワットの原子力発電所が運転中であり,1991年には過去最高の735億キロワット時を発電し,同国の総発電電力量の約52%を供給している。スウェーデンは,1980年に,2010年までの原子力発電所全廃を決議し,また,1988年には,その第1歩として1995年から1996年にかけて2基を廃止するという決議がなされていた。しかし,1991年1月に,社会民主党,自由党,中央党の3党は,従来のエネルギー政策の見直しを前提に検討を行い,1988年に議会で決定した原子力発電所2基を廃止するという計画を放棄することを含めた3党合意を発表した。この3党合意をもとに,新しい国家エネルギー政策が議会に提出され,1991年6月,議会で正式に承認された。この新エネルギー政策に基づき,スウェーデンでは,今後,エネルギー節約,エネルギーの効率的利用,新エネルギーへの投資の5ヶ年計画を進め,その進捗状況により原子力廃止計画を決めていくことになる。しかし,同国における原子力発電の貢献度,環境問題等を考えて,2010年までの原子力発電全廃の可能性が低くなったと指摘する向きもある。
 スイスでは,1992年6月末現在,5基,308万キロワットの原子力発電所が稼動中である。1991年には,総発電電力量の40%に当たる217億キロワット時を原子力発電で賄っている。スイスは,豊富な水力を背景にした電力輸出国であるが,水力発電電力量が少なくなる冬の電力供給不足を補うため,フランス,ドイツから電力を輸入している。1990年9月の国民投票の結果,「今後10年間に原子力発電所の建設許可を発給しない」(モラトリアム)ことが決定された。火力,原子力については,環境問題・モラトアム等の理由から新規発電所建設計画はなく,水力も環境問題から開発は困難な状況である。現在は,電力輸出国であるが,2000年頃には,電力輸入国になると予想されている。
 旧ソ連は,1992年6月末現在,48基,3,699万キロワットの原子力発電所が運転中で,1991年には約2,121億キロワット時を発電している。旧ソ連で運転中の原子力発電所は,主としてソ連型加圧水型炉(VVER),黒鉛減速軽水冷却沸騰水型炉(RBMK等)である。各共和国の内訳は,ロシア31基(そのうちVVER12基,RBMK11基,沸騰水型炉(BWR)1基,高速増殖炉(FBR)1基,その他6基),ウクライナ14基(そのうちVVER12基,RBMK2基),リトアニア2基(RBMK),カザフスタン1基(FBR)である。旧ソ連では,チェルノブイリ原子力発電所事故後においても原子力発電を同国の重要なエネルギー源と位置付け,原子力開発を着実に進めていく方針は変わっていない。しかしながら,チェルノブイリ原子力発電所事故に加え,最近の急激な政治的変化等により開発がスローダウンし,原子力開発の将来は不透明となっている。その一方,電力不足,環境問題等を背景に,ロシア,カザフスタン等の一部の地域の人民議会において,新規原子力発電所建設賛成の決議がなされるといった動きもある。
 ロシアにおいては,1992年1月,旧ソ連原子力発電・産業省がロシア原子力省に移管された。また,1992年4月,原子力発電所の運転組織として,ロシア原子力発電コンツェルンが発足した。他の共和国との協力については,原子力発電所のあるリトアニア,ウクライナについては両国に専門家がいないため支援を行っていく予定であり,リトアニアについては,既に支援を行うことが両国間で決定されている。
 また,アルメニアからも,現在閉鎖されているアルメニア原子力発電所(VVER,2基)の運転再開のための支援要請があり,ロシアとしては支援を行うこととしている。
 ウクライナは,1990年にチェルノブイリ1,2及び3号機(RBMK)を1995年までに閉鎖することを決定していた。1991年10月の2号機の火災事故発生により閉鎖時期を早め,2号機は即時閉鎖,1,3号機はそれぞれ1992年,1993年までに閉鎖することを決定した。深刻なエネルギー・電力不足のため,閉鎖が実際に行われるか否かは不確実視されていたが,1992年5月,1,3号機を年内にも閉鎖することを決定した。
 リトアニアでは,電気出力150万キロワットのRBMK-1500型2基を有するイグナリナ原子力発電所が運転中であるが,チェルノブイル原子力発電所事故後改良が加えられ,135万キロワットで操業されている。1991年8月,国有化され,リトアニア共和国エネルギー省により管轄されることとなった。
 カザフスタンでは,電力不足解決のため,5~6基の原子力発電所建設に向けたフィージビリティスタディが実施される模様である。
 RBMK型炉については,チェルノブイル原子力発電所事故以来西側諸国より安全性に対する懸念が表明されていたが,1991年10月,RBMK型炉の安全性改善に関する国際会議が開催され,国際プロジェクトによる評価作業が開始された。プロジェクトの第1フェーズは1年の予定で,RBMK型炉の安全性の欠点を明確にするとともに,改善計画を勧告することとなっている。
 第1世代の加圧水型炉(VVER-440/230)の安全性評価,安全性改善のためのプロジェクトも国際原子力機関(IAEA)を中心に既に進められている。本型式の炉は,ロシア共和国のノボボロネジとコラの2か所の発電所で2基ずつ運転中である。安全評価は1992年2月に終了し,ロシア及び東欧の関係各国は安全性向上対策を施した上で運転を継続していく計画である。
 1992年のミュンヘン・サミットにおいても,旧ソ連型原子炉の安全性は重大な懸念材料であるとして,安全性向上のための支援を多国間の行動計画の枠組みの中で提供することを決定した。行動計画は,即時的措置として運転上の安全性改善,安全性評価に基づく短期の技術的改善,及び規制制度の強化を含んでいる。また,長期的な安全性向上のための基礎を築くため,代替エネルギー源の開発,エネルギーの効率的利用,新型原子炉の改修の可能性にも言及しており,更にこれらを補完するものとして,原子力の安全性に関する条約の早期締結を目指すこととしている。次回の東京サミットにおいてこの行動計画の進渉状況が審査される予定である。
 ブルガリアでは,コズロドイ原子力発電所で1~4号機(VVER-440/230)及び5,6号機(VVER1000)が運転中で,総発電電力量の30%以上を供給している。IAEAは,運転管理調査団(OSART)の調査結果に基づき,1991年6月声明を発表し,コズロドイ原子力発電所は多くの安全上の欠陥があり,早急に対策を取る必要があると指摘した。IAEA,欧州共同体(EC),世界原子力発電事業者協会(WANO)等の援助,協力により同発電所の安全性評価,及び改善作業が進められている。1991年7月,ドイツの呼びかけにより,IAEA本部で安全性問題に関する国際会議が開催された。同会議において,ECの援助により3,4号機の安全水準を高めたうえで1,2号機と運転を交代するという具体策について合意に達した。1991年の9月,11月に,1,2号機は運転停止し安全性改善作業に入り,3,4号機がこれに代わって運転を再開している。
 チェコ・スロバキアでは,安全性への懸念より,ボフニチェ1,2号機(VVER-440/230)の運転を停止するよう,オーストリアより再三要請されていた。政府は独自の調査に基づき改善策を実施し,1995年以降も運転を継続することを認めている。ただし,1995年以降の運転のためには更に広範な改修作業を行う必要がある。
 中東欧の原子力安全性向上に関して,IAEA,経済協力開発機構原子力機関(OECD/NEA)等の国際会議で行動の要請が相次いでいる。また,国際金融機関等も原子力発電所の安全性向上や原子力開発計画への投資に関し前向きな姿勢を示している。
 韓国では,1992年6月末現在,9基,762万キロワットの原子力発電所が運転中であり,1991年には535億キロワット時を発電し,同国の総発電電力量の約48%を供給している。同国は,エネルギー資源に乏しく国際的なエネルギー情勢の不確実性に対処するためには,長期的に原子力主導の電源開発を引き続き推進すべきであるとしている。
 韓国動力資源部と韓国電力公社は,1991年10月に,長期電力需給計画を取りまとめた。同計画は,1989年策定の計画を改訂したものであり,建設中・発注済みの5基を含めて18基を2006年までに開発し,2006年の原子力発電規模を現在の約3倍の2,320万キロワットとすることとしている。18基のうち,12基は100万キロワットの改良型加圧水型軽水炉で,6基はカナダ型重水炉(CANDU炉)を計画している。
 また,韓国原子力委員会は,1992年6月,原子力技術の自立を目標として,「原子力研究開発中・長期計画(1992年~2001年)」を発表した。
 それによると,今後10年間にわたり技術開発を行い,軽水炉の改良,高速増殖炉の開発等を行うこととしている。
 台湾は,原子力発電所6基,514万キロワットの設備容量を有し,総発電電力量の約38%を賄っている。韓国と同様にエネルギー資源に恵まれない台湾では,原子力発電に大きな期待を寄せている。特に,同国では,近年の電力需要の増大に伴い新たな電源確保が急務となっている。7,8号機目に当たる第4原子力発電所の建設計画は,1986年に立法院が凍結していたが,1991年10月に台湾原子力委員会が条件付きながら承認,1992年2月に経済部および行政院も建設再開を承認し,立法院も現在凍結中の準備予算への支出を承認した。7号機は2000年,8号機は2001年の運転開始が予定されている。
 インドでは,1992年6月末現在,7基,147万キロワットの原子力発電所が運転中であり,建設中が7基,計画中が2基ある。建設中のナローラ2号機は,1991年10月臨界に達し,1992年中に運転開始する予定である。
 中国は,深刻な電力不足から発電設備の増強に力を入れており,原子力発電にも積極的に取り組んでいる。現在,3基の原子力発電所を建設しており,このうち同国で最初の原子力発電所秦山1号機については,自主開発により建設が進められてきたが,1991年12月に初送電に成功した。1992年末に全出力運転に到達する予定である。現在建設中の3基に続き,今世紀中に更に5基の建設が計画されている。
 インドネシアは,石油や石炭等のエネルギー資源に恵まれているが,石油については輸出商品として温存する必要性,石炭については地球環境問題からの制約等を考慮し,2015年までに700万キロワットの原子力発電所の建設を計画している。1991年よりジャワ島中部のムリア半島で立地調査が開始された。


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