第1章 原子力発電
4.軽水炉技術の向上

(1)軽水炉の改良標準化
 軽水炉の改良標準化計画は,国,電気事業者,原子力機器メーカー等が一体となり,自主技術による軽水炉の信頼性,稼動率の向上及び従業員の被ばく低減等を目指し,1975年度より1977年度にかけて第1次改良標準化計画が,また1978年度より1980年度にかけて第2次改良標準化計画が実施され,1981年度より1985年度にかけて第3次改良標準化計画が実施された。
 既に,第1次及び第2次の成果は1984年2月に運転を開始した東京電力(株)福島第二原子力発電所2号炉(BWR),また1984年7月に運転を開始した九州電力(株)川内原子力発電所1号炉(PWR)等に反映されている。
 第3次改良標準化計画は第1次,第2次の成果を基に機器・システムはもちろん炉心を含むプラント設計全体を対象に,我が国の自主技術による信頼性,稼働率,運転性,立地効率の向上,従業員の被ばく低減等の一層の改良を図ることにより,改良型軽水炉の開発が進められた。この改良型軽水炉を採用することとなった東京電力(株)柏崎刈羽原子力発電所6号炉及び7号炉(電気出力は各々135万6千キロワット)は,世界初の改良型BWRであり,それぞれ1991年9月及び1992年2月に着工した。なお,営業運転の開始は6号炉が1996年12月,7号炉が1997年7月の予定である。
(2)軽水炉の高度化
 今後,長期にわたって原子力発電の中核を担うと考えられる軽水炉については,現状に甘んじることなく,時代のニーズに応じた一層の高度化を推進していくことが必要である。この軽水炉技術高度化の在り方について検討を行うため,1984年2月に総合エネルギー調査会原子力部会の下に,軽水炉技術高度化小委員会が設けられ同小委員会は,1986年3月に「21世紀への軽水炉技術高度化戦略」を取りまとめた。
 さらに,その後の国内外の原子力発電をめぐる情勢の変化を踏まえ,1991年6月に報告書を取りまとめた。それによると,今後の軽水炉技術の開発に当たっては,経験の蓄積を積極的に活用し,安全性の原則を再認識し,新しい知見・技術を取れ入れていくことが重要とし,安全性確保の更なる取組として,故障・トラブル対策の高度化,ヒューマンファクターに係る対策の高度化,安全設計の高度化,静的安全性の可能性の追求及び廃炉対応の高度化を挙げている。さらに,ウラン資源の有効な利用として,ウラン燃料の有効利用及びプルトニウム・回収ウランの利用基盤の確保を挙げ,長期的な視点に立った柔軟性の確保として,燃料・炉心機能の高度化及び立地技術の高度化を挙げている。また,1987年4月,軽水炉技術の高度化に資する国及び民間で行われている研究について総合的に評価・検討を行い,国が支援すべき施策についても検討する場として,軽水炉高度化推進委員会が設置された。本推進委員会では,既存型軽水炉の高度化の追求,次世代軽水炉の評価・検討,中小型軽水炉の調査・検討,高燃焼度燃料,ウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)燃料の評価・検討等が進められている。


目次へ          第1章 第5節へ