第3章 我が国の先導的プロジェクト等の開発利用の状況と今後の原子力開発利用の進展に向けて

2.基礎研究・基盤技術開発

 我が国の原子力開発利用の基本目標は,①原子力の基軸エネルギーとしての確立,②原子力分野における創造的科学技術の育成,③国際社会への貢献であり,このような基本目標に向けて着実な原子力開発利用の進展を期すためには,国内に確固たる技術的基盤を構築していくことが肝要である。このため,基礎研究・基盤技術開発について,原子力開発利用の基盤を形成する技術及び革新的なブレークスルーをもたらす先導的な研究開発を産学官の密接な連携・協力の下に推進している。
 原子力基礎研究については,研究者の自由な発想を重視し,今後ともより一層の充実を図っていくこととしており,日本原子力研究所,大学,国立試験研究機関等が,炉物理,核物理,放射線化学に関する研究,放射線に関する生理学的・生物学的研究,燃料・材料の照射試験等,幅広く,創造的成果に向けた研究を行っている。
 現在,原子力関連の研究開発に携わっている国公立機関(特殊法人を含む)は36機関,大学等の研究所は58機関を数え,その他約80機関の公益法人等が研究開発,あるいはその支援業務を行っている。また,我が国は,日本原子力研究所,大学等を中心に12基の研究及び教育のための原子炉を有し,昨年概ね一年間に国内の学会誌等に掲載された原子力関連論文数は2,700件余に達している。
 原子力基盤技術に関しては,21世紀に向けて原子力技術体系のブレークスルーを目指した基盤技術開発が1988年度から進められている。現在,日本原子力研究所,動力炉・核燃料開発事業団,理化学研究所及び国立試験研究機関を中心に,原子力用材料技術,原子力用人工知能技術,原子力用レーザー技術,放射線のリスク評価・低減化技術の4領域の技術開発が行われている。
 また,これら基盤技術開発のうち,多岐にわたる技術要素から構成されており,複数の研究機関のポテンシャルの結集が必要な研究については,「原子力基盤技術総合的研究」(原子力基盤クロスオーバー研究)というシステムにより,関係研究機関の連携・協力による効率的・効果的な研究開発が行われている。


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