第8章 国際協力活動
2.開発途上国等との国際協力

(4)開発途上国協力の展開

 近年,中国,韓国,アセアン諸国等は,各国においてその進展の度合いには相当差があるものの,総じて原子力開発利用の推進に高い意欲を有しており,アジアで最も進んだ原子力先進国である我が国に対して放射線・RI利用,研究炉利用,原子力発電等の原子力平和利用分野での協力に対する期待が高まりつつある。
 1984年12月には原子力委員会が「原子力分野における開発途上国協力の推進について」を決定し,特に開発途上国のニーズに応じ,技術協力の一層の促進に加え,人材交流を中心とした研究交流が重要である旨の方針を明らかにしている。
 これを受けて,科学技術庁では,1985年度に日本の研究所と開発途上国の研究所間で研究者の交流を行う研究交流制度を創設し,年々,交流の規模を拡大してきているところである。また1987年度に,開発途上国の原子力関係の中堅行政官を招へいして,日本の原子力分野の経験を修得することを目的とする原子力関係管理者研修を創設したところである。また,通商産業省では原子力発電分野の協力のため,総合エネルギー調査会原子力部会報告(1986年3月)に基づき,官民協力して開発途上国への技術協力に当たっているところである。
 1987年6月には,原子力委員会は,原子力開発利用長期計画を改正したが,3つの基本目標の1つとして「国際社会への貢献」がとりあげられており,開発途上国協力についても,二国間対応,近隣地域対応を主体的,能動的に実施していくよう提言されている。これを受けて,原子力委員会では,近隣アジア諸国の原子力関係者が一同に会し,各国の原子力開発利用の現状等について相互に情報交換を行うとともに,地域協力のあり方について意見交換を行うため,1990年3月,第1回アジア地域原子力協力国際会議を東京で開催した。その後1991年3月,第2回会議を東京で開催した。本国際会議は,今後とも毎年開催されることとされており,既存の地域協力との調和を図りつつ,1991年度には,研究炉の共同利用等の4つの具体的な協力テーマについて専門家会合が開催されることとなっている。
 他方,政府ベース技術協力の一環として実施している国際協力事業団による研修員受入れにおいても,「アイソトープ・放射線の医学・生物学利用」,「原子力基礎実験」,「原子力発電」,「原子力安全規制行政セミナー」,「放射線安全管理」の研修コースを実施している。


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