第2章 核燃料サイクル
(参考)諸外国の動向

(4)放射性廃棄物処理処分

①米国
 使用済燃料を一定期間貯蔵したのち地層処分することが考えられている。DOE関係施設の高レベル廃液については,ガラス固化し,貯蔵した後,地層処分する計画である。他方で,種々の固化法についての研究開発も行っている。DOE関係施設からの廃液を処理するサバンナリバーのガラス固化施設は,すでに建設が終わっており,ハンフォードの固化施設は現在設計中である。他にウェストバレーの商用再処理工場の廃液を処理するガラス固化施設は現在,試験運転中である。これらの施設は,いずれも,ガラス固化法としてLFCM法を採用している。
 商業用原子力発電所からの低レベル放射性廃棄物は,バーンウェル,リッチランド,ビィティの3つの民間の処分施設において陸地処分を行っているほか,DOE関係施設からのものは,主に連邦政府運営の処分施設において陸地処分を行っている。DOE関係施設からのTRU廃棄物については,廃棄物隔離パイロットプラント(WIPP)において地層処分される計画となっている。
 また,1982年核廃棄物政策法(1987年12月一部修正)が成立し,米国における高レベル放射性廃棄物対策の基本枠組が示された。
 DOEは,2010年の地層処分開始を目標としたネバダ州ユッカマウンテンにおけるサイト特性調査を行うことを計画している。

②フランス
 使用済燃料を再処理し,高レベル廃液は,ガラス固化し,貯蔵した後,地層処分する計画であり,ガラス固化法としては,AVM(Ate11erVitrificationdeMarcoule)法□が実用段階であり,マルクールにおいて,1978年よりガラス)固化体を製造し貯蔵している。また,ラ・アーグでは,実用規模の固化プラントが完成し,1989年より運転を開始している。
 地層処分については,政府の放射性廃棄物管理局(ANDRA)が責任を負い,ANDRAは,1987年2月~3月に4つのサイト試験候補地(岩種は,花崗岩,粘土岩,結晶片岩,岩塩の4種類)を選定していたが,1990年2月,同候補地での試験を1年間凍結し,今後の処分の進め方について検討することとされた。
 低レベル放射性廃棄物は,ラ・マンシュ貯蔵センターで陸地処分を実施している。また,ラ・マンシュ貯蔵センターに次いで第2処分場として,オーブ県スレーヌにおいて,オーブ貯蔵センターが現在,建設中であり,1991年より操業開始を予定している。

③英国
 使用済燃料を再処理し,高レベル廃液は,ガラス固化して,貯蔵した後,地層処分する方針であり,AVM法を採用したガラス固化施設をセラフィールドに建設し,1990年8月に運転を開始した。
 低レベル放射性廃棄物は,ドリッグ処分場にて陸地処分を行っているほか,海洋処分の実績も有している。
 また,1982年7月,NIREX□□(Nuclear Industry Radioactive Waste-Executive)と呼ばれる低・中レベル放射性廃棄物の処理処分を実施する新たな機関を設立した。1991年7月,NIREXは低・中レベル放射性廃棄物の処分場候補地としてセラフィールドを決定した。


*AVM法:フランスが開発したガラス固化法で,高レベル廃液をロータリーキルンでか焼し,ガラス粉末を加えて溶融炉で高周波加熱により溶かした後,キャニスターに封入する方式である。
* *NIREX:原子力産業放射性廃棄物執行部。
英国原子力公社(UKAEA),英国核燃料会社(BNFL)及び電気事業当局(CEGB,SSEB)により,それらの代理機関として設立され,低・中レベル廃棄物の処理処分を実施する。

④ドイツ
 高レベル廃液のガラス固化体は,貯蔵した後,ゴアレーベン(岩塩)に地層処分する計画であり,処分の責任は連邦放射線防護局(BfS)が負う。
 ガラス固化法としては,LFCM法□□(Liquid Fed Ceramic Melter)が開発され,ベルギーと共同でプラントが運転されている。
 低レベル放射性廃棄物については,AsseII(岩塩坑)において1967年から1978年まで陸地処分を実施した。
 低・中レベル廃棄物についてコンラッドを新処分場として現在許認可審査中である。


***LFCM法:高レベル廃液を濃縮し,ガラス原料を加えてセラミック製の溶融炉で直接通電により溶かし固化する方法であり,動力炉・核燃料開発事業団が,建設してい固化プラントにおいても採用されている。

⑤スイス
 使用済燃料は,すべて外国で処理し,返還されるガラス固化体を国内で地層処分する計画である。処分の責任は,電力会社と連邦政府の共同出資で設立された放射性廃棄物全国処分組合(NAGRA)が負い,NAGRAはスイス北部の花崗岩地帯および堆積岩地帯を高レベル廃棄物処分のための研究サイトとして調査を実施している。
 一方,処分のための研究は南アルプスのグリムゼル岩盤研究所で進めており,動力炉・核燃料開発事業団が研究参加している。また,低・中レベル廃棄物については,4カ所の処分場候補地が選定され,現在,調査が進められている。

⑥スウェーデン
 使用済燃料のままで,地下式集中貯蔵施設において40年間程度貯蔵の後に地層処分する計画である。処分は,4つの電力会社が出資して設立したスウェーデン核燃料・廃棄物管理会社(SKB)が行うことになっている。
 ストリパ鉱山(現在,廃坑)を使って,高レベル放射性廃棄物の地層処分に関するプロジェクト(ストリパ計画)が,OECD/NEAの枠組みの中で進行中である。また,1990年よりオスカーシャム近辺に地下研究施設計画が開始されており,その建設段階より我が国からは動力炉・核燃料開発事業団が参加している。

⑦カナダ
 放射性廃棄物の処理処分については,カナダ原子力会社(AECL)が中核となり研究開発を行っている。
 使用済燃料を最終的に直接処分するか,再処理してガラス固化体にするかはまだ決まっていない。AECLはマニトバ州ピナワに,地下研究施設を設置して,高レベル放射性廃棄物の地層処分の研究開発を実施している。我が国との研究協力については,日本原子力研究所及び動力炉・核燃料開発事業団とAECLの間で,高レベル放射性廃棄物の処理処分に関する研究協力が行われている。

⑧ベルギー
 使用済燃料は,フランスに再処理委託し,その返還ガラス固化体を国内で地層処分する計画である。
 放射性廃棄物の処理処分の研究開発については,モル原子力研究センター(SCK/CEN)を中心に行われている。一方,放射性廃棄物の処理処分の実施については放射性廃棄物・核分裂性物質国家機関(NIRAS/ONDRAF)が1980年に設立されている。動力炉・核燃料開発事業団とモル原子力研究センターの間で高レベル放射性廃棄物地層処分に関する研究協力が行われている。

⑨オーストラリア
 高レベル廃液の処理方法として,合成岩石中に放射性核種をとじ込めるシンロック固化法について研究開発を行っている。1984年5月には我が国との研究協力に関する口上書を交換しており,オーストラリア原子力科学技術機構(ANSTO)と日本原子力研究所を中心とした研究協力が行われている。


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