第2章 核燃料サイクル
7.放射性廃棄物の処理処分対策

(1)放射性廃棄物処理処分の現状

①低レベル放射性廃棄物処理処分
 原子力発電所等の原子力施設で発生する低レベル放射性廃棄物については,各事業者等が自ら処理しており,廃液等の低レベル放射性廃棄物については,蒸発濃縮等の減容を行った後,ドラム缶にセメント固化する等の処理を施し,敷地内の貯蔵庫に安全に保管している。
 なお,気体状放射性廃棄物及び一部の液体状放射性廃棄物については,法令に定められた基準値を下回ることを確認して,施設の外に放出している。
 低レベル放射性廃棄物は,1990年度には原子力発電所において200リットルドラム缶にして約5千本増加しており,累積で約47万2千本が貯蔵されている。また全原子力施設では,1990年度末の累積で約78万本となっている。

 低レベル放射性廃棄物の処分は,陸地処分及び海洋処分を行うことを基本的な方針としている。
 このうち,陸地処分については,青森県六ヶ所村において,1992年頃の操業開始を目途に,民間事業者が比較的浅い地中に処分する計画を進めている。
 具体的には,1984年7月に電気事業連合会が,核燃料サイクル施設の一つとして,低レベル放射性廃棄物埋設施設の立地協力要請を,青森県及び六ヶ所村に対し行い,1985年4月には県及び村が受け入れ表明を行っている。また,同年3月には,同施設の建設,運営等に当たる日本原燃産業(株)が設立され,1988年4月に同施設の廃棄物埋設事業の許可申請書が提出された。同申請に対しては,1990年11月に内閣総理大臣より事業許可がなされた。同事業許可における施設の埋設能力は,約4万m3(200リットルドラム缶換算約20万本相当)であるが,今後,逐次増設され,最終的には約60万m3(200リットルドラム缶換算約300万本相当)とする計画となっている。
 なお,低レベル放射性廃棄物のうち,貯蔵中の減衰により放射能レベルが十分に下がったもの,原子力施設の廃止措置により生ずるもともと放射能レベルが極めて低いもの等は,放射能レベルに応じて合理的な処分を行うこととし,このための基準について原子力安全委員会において,検討が進められている。
 また,海洋処分については,これまで所要の調査研究の実施,国内法令の整備,環境安全評価,国際協調の下にこれを進めるための国際条約の締結等,所要の実施準備が進められてきた。
 我が国としては,海洋処分については関係国の懸念を無視して行わないとの従来よりの方針の下に関係諸国とも協議しつつ対処していくこととしている。

②高レベル放射性廃棄物処理処分
 再処理施設から発生する高レベル放射性廃棄物については,その量は1990年度末現在,溶液の状態で約428m3であり,東海再処理工場内の貯蔵タンクに厳重な安全管理の下に保管されている。これらは,今後安定な形態に処理(ガラス固化)し,30年間から50年間程度冷却のため貯蔵した後,地下数百メートルより深い地層中に処分する方針である。また,英仏への再処理委託に伴い発生する高レベル放射性廃棄物は,ガラス固化体の形で返還され,青森県六ヶ所村に日本原燃サービス(株)が計画している再処理工場の敷地内で受け入れ,貯蔵することが計画されている。同社は,1989年3月に,廃棄物管理事業の許可申請を提出し,同申請については,1991年5月に科学技術庁による安全審査を終え,内閣総理大臣より原子力委員会及び原子力安全委員会へ諮問がなされた。
 なお,原子力委員会放射性廃棄物対策専門部会では高レベル放射性廃棄物の処分研究開発の進め方等について,1989年12月に報告書をとりまとめた。また,処分事業に係る費用の確保の考え方等についても検討を進めている。

③その他
 使用済燃料の再処理,ウラン,プルトニウム混合酸化物(MOX)燃料の加工の過程で発生するTRU(Trans-Uranium:超ウラン)核種を含む放射性廃棄物については,適切な区分と,その区分に応じた合理的な処分方策を確立することとしている。これをうけ原子力委員会放射性廃棄物対策専門部会において所要の検討が行われ,TRU核種を含む放射性廃棄物の処理処分に係わる,処分方策立案上の廃棄物の区分の一応の目安値,処分方策の具体化の進め方,研究開発課題等について,1991年7月に報告書がとりまとめられた。
 また,民間のウラン燃料加工事業所,動力炉・核燃料開発事業団のウラン濃縮施設等から発生するウラン廃棄物については,現在,安全に貯蔵されているが,その処分については,その特性に応じた方法を採り得ると考えられ,処分技術の研究開発を進めることとしている。


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