第1章 原子力発電
4.軽水炉技術の向上

(2)軽水炉の高度化

 今後,長期にわたって原子力発電の中核を担うと考えられる軽水炉については,現状に甘んじることなく,時代のニーズに応じた一層の高度化を推進していくことが必要である。この軽水炉技術高度化のあり方について検討を行うため,1984年2月に総合エネルギー調査会原子力部会の下に,軽水炉技術高度化小委員会が設けられ同小委員会は,1986年3月に「21世紀への軽水炉技術高度化戦略」を取りまとめた。
 さらに,その後の国内外の原子力発電を巡る情勢の変化を踏まえ,1991年6月に報告書を取りまとめた。それによると,今後の軽水炉技術の開発に当たっては,経験の蓄積を積極的に活用し,安全性の原則を再認識し,新しい知見・技術を取れ入れていくことが重要とし,安全性確保の更なる取り組みとして,故障・トラブル対策の高度化,ヒューマンファクターに係る対策の高度化,安全設計の高度化,静的安全性の可能性の追求及び廃炉対応の高度化を挙げている。さらに,ウラン資源の有効な利用として,ウラン燃料の有効利用及びプルトニウム・回収ウランの利用基盤の確保を挙げ,長期的な視点に立った柔軟性の確保として,燃料・炉心機能の高度化及び立地技術の高度化を挙げている。また,1987年4月,軽水炉技術の高度化に資する国及び民間で行われている研究について総合的に評価・検討を行い,国が支援すべき施策についても検討する場として,軽水炉高度化推進委員会が設置された。本推進委員会では,既存型軽水炉の高度化の追求,次世代軽水炉の評価・検討,中小型軽水炉の調査・検討,高燃焼度燃料,ウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)燃料の評価・検討等が進められている。


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