第2章 我が国における原子力開発利用の現状
4.国際社会への主体的貢献

(2)核兵器の不拡散の強化と我が国の役割

 現在,原子力の平和利用と核兵器の不拡散に係る国際秩序を確立するため,二国間及び多国間の協議の場において,種々の検討が行われているが,我が国は,核不拡散を図りつつ,平和目的の原子力開発利用を進めていくとの立場に立って,国際的な核不拡散の枠組みの維持・強化について,積極的に国際協力を進めている。

①核不拡散体制の強化
 フランスとの間で1972年に締結された日仏原子力協力協定については,平和的非爆発目的使用の明記,機微技術に関する規定,核物質防護に関する規定等を盛り込んだ改正議定書が1990年7月に発効した。
 一方,多国間では,1970年に発効した「核兵器の不拡散に関する条約」(NPT)があり,1991年7月に開催されたロンドン・サミットの「通常兵器の移転及び核兵器・生物兵器・化学兵器の不拡散に関する宣言」においても,同条約の重要性を再確認するとともに,全ての非署名国に対し,同条約に署名するよう要請している。この条約には,その運用を検討するため,5年毎に締結国の会議を開催することが規定されており,これまで4回のNPT再検討会議が開催されている。第4回の再検討会議は,1990年8~9月にジュネーブで開催され,核軍縮については,合意が得られず,全体としては最終文書の採択に至らなかったものの,核兵器の不拡散及び原子力の平和利用に関しては,実り多い議論がなされ,実質的な各国の合意が得られたことは有意義であった。

②保障措置
 我が国はNPTを批准し,これに基づき1977年にIAEAとの間に保障措置協定を締結し,国内全ての原子力施設に対するIAEAの保障措置を受け入れている。
 近年,原子力開発利用の進展によるプルトニウム取り扱い量の増大に伴い,保障措置の実施と施設の円滑な運転を両立させるため,保障措置の効果的かつより一層の効率的適用を図ることが重要となってきている。
 このような観点から,我が国は1981年度より「対IAEA保障措置支援計画(JASPAS)」を行っており,また,1986年度からは,IAEAに対し特別拠出金を拠出し,商業用大型再処理施設に対する保障措置適用に関する検討を行うLASCAR(大型再処理施設保障措置)プロジェクトを,米国,イギリス,フランス,ドイツ及びユーラトムとの協力の下に進めるなど,IAEA保障措置体制の維持強化に積極的に貢献している。

③核物質防護
 核拡散防止上,核物質の不法な移転を防止することは重要な課題であり,IAEAにおいて検討されてきた核物質の防護に関する条約が1987年2月に発効した。同条約は,核物質の国際輸送中に一定の核物質防護措置が採られることを確保すること,このような措置の採られる保証のない核物質の輸出あるいは輸入を許可しないこと,核物質に係る一定の行為を犯罪とし処罰すること等を内容としている。
 我が国においても,我が国の原子力活動に対する国際的信頼を一層高めるとともに,原子力先進国としての責務を果たすためにも,国内の核物質防護体制の強化を図る必要があることから,「核原料物質,核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律」の一部改正を行い,国内体制を整備した上,1988年10月に同条約に加入書を寄託し,同条約は同年11月に我が国について効力を生じた。
 また,改正された原子炉等規制法に基づく政令及び規則等の整備が行われ,輸送中の核物質防護に係る規則については,1988年11月に,原子力施設の核物質防護に係る規則については,1989年5月にそれぞれ施行された。
 さらに,同条約は,その第5条1で核物質を防護する責任並びに盗取された核物質の回収,及び対応活動を調整する責任を有する自国の中央当局及び連絡上の当局を明らかにすることを義務づけている。我が国は,1991年1月,科学技術庁を中央当局,外務省を連絡上の当局として,IAEAに登録した。


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