第2章 我が国における原子力開発利用の現状
3.原子力研究開発の推進

(4)基礎研究及び基盤技術開発

 基礎研究は,研究者の自由な発想を重視することによって,画期的成果が期待し得るものであり,今後とも,より一層の充実を図っていくこととしている。我が国では,日本原子力研究所,大学,国立試験研究機関等が,炉物理・核物理に関する研究,放射線に関する生理学研究,燃料・材料の照射試験,放射性物質の環境中及び生態系中の移動に関する研究等を幅広く行っている。
 21世紀に必要とされる原子力技術体系の構築を目指し,創造的・革新的な技術を創出しようとする基盤技術開発が,日本原子力研究所,動力炉・核燃料開発事業団,理化学研究所及び国立試験研究機関において,1988年度から進められており,現在,原子力用材料技術,原子力用人工知能技術,原子力用レーザー技術,放射線リスク評価・低減化技術の4領域が取り上げられている。さらに,この各領域の中で,単独の研究機関では十分な成果が望めない技術要素から構成される研究のうち,複数の研究機関のポテンシャルを結集すれば効率的・効果的に進めることが可能な課題について,各研究機関の連携の下に「原子力基盤技術総合的研究」を1989年度から実施している。こうした基盤技術開発の推進により,1990年度より,日本原子力研究所,動力炉・核燃料開発事業団,金属材料技術研究所が連携して,原子力用材料開発。知見を体系的に取りまとめ,データの共有を図るデータベースの構築を始めるなど,多機関間の交流による研究開発が積極的に進められている。
 また,基礎研究,人材育成に関し,日本学術会議の原子力工学研究連絡委員会は,1991年6月「原子力工学教育に対する社会的要請と今後の研究課題」と題する報告書を取りまとめた。本報告書においては,大学における教育研究体制の問題点として,①教育設備の老朽化が著しく,劣悪な状態にあること,②教育研究体制が新しい時代の流れに対応し切れていない面があることを挙げるとともに,今後の教育研究体制について,①重点化研究の推進,②学外の原子力施設の活用等国内外における教育研究協力体制の整備を提言している。


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