第2章 我が国における原子力開発利用の現状
3.原子力研究開発の推進

(3)原子力船

 原子力船の研究開発は,原子力船に関する技術,知見,経験等の蓄積,涵養を図るため,日本原子力研究所において原子力船「むつ」による研究開発及び舶用炉の改良研究を実施している。
 原子力船「むつ」は,1990年3月,関根浜定係港岸壁において出力上昇試験を開始し,その後4次にわたる航海によって,同年12月,出力上昇試験及び海上試運転をすべて終了した。これらの試験の結果,1991年2月,原子炉等規制法に基づく使用前検査合格証及び船舶安全法に基づく船舶検査証書が交付され,原子力船「むつ」は日本初の原子力船として完成した。現在,海洋環境下における振動,動揺,負荷変動等が原子炉に与える影響等に関する知見を得るため,概ね1年の実験航海を5回程度の航海により実施している。出力上昇試験から第3次実験航海までの原子動力航行距離は合計約64,OOOkmとなっている。実験航海終了後「むつ」は関根浜定係港において解役する予定である。

 舶用炉の改良研究については,「むつ」により得られる実験データ等の成果を活用しつつ,舶用炉の経済性,信頼性等の向上を目指し,研究を実施している。


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