第2章 我が国における原子力開発利用の現状
2.放射線利用の現状と今後の展望

(4)放射線利用分野における国際協力

 近年,近隣アジア諸国等においては,生活向上に直接役立つ放射線利用に関して強い関心を有しており,技術的基盤の充実,人材の養成を目的とした我が国の協力が強く望まれている。放射線利用の分野における主な国際協力として以下のものがある。

①IAEA/RCA
 「原子力科学技術に関する研究,開発及び訓練のための地域協力協定」(RCA)は,アジア,太平洋地域の国際原子力機関(IAEA)加盟国間の放射線利用,放射性同位元素の利用を中心とする原子力科学技術の研究開発及び教育訓練の推進・協力を目的とするものであり,現在14カ国が加盟している。RCA計画では,現在,国連開発計画(UNDP)との工業利用プロジェクト等12のプロジェクトが進められているが,我が国は,非破壊検査・放射線加工・工程管理に関する放射性同位元素・放射線工業利用,医学・生物利用及び放射線防護の3分野に対して積極的な協力を行っている。

②二国間協力
 日本原子力研究所が中心となり,インドネシア原子力庁との間で天然ゴム改質に関する研究,タイ原子力庁との間で放射線による汚泥処理に関する研究,マレーシア原子力庁との間でオイルパーム廃棄物の放射線利用に関する研究がそれぞれ行われている。

③原子力研究交流制度に基づく協力等
 科学技術庁では,1985年より日本の研究所と開発途上国の研究所間で研究者の交流を行う研究交流制度を実施している。本制度により,放射線の医学利用,高分子材料の放射線加工,排煙・排水・汚泥の放射線処理等の分野で,研究者の受け入れ,派遣等の研究協力が行われている。
 この他,1989年から,国際協力事業団により,マレーシアにおいて電子加速器の建設を含む電子線による医療器具の滅菌等の放射線利用研究プロジェクトが実施されている。


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