第2章 我が国における原子力開発利用の現状
2.放射線利用の現状と今後の展望

(3)放射線利用の安全確保

 以上のように放射線の利用は,多くの利便性があり国民生活の向上に寄与するものであるが,放射線の取扱いに当たっては安全の確保に十分な注意が必要である。
 国際放射線防護委員会(ICRP)では放射線防護の観点から放射線の利用において守るべき3項目を勧告している。①正当化:いかなる行為も,その導入が正味でプラスの利益を生むのでなければ採用してはならない,②最適化:すべての被ばくは,経済的及び社会的な要因を考慮にいれながら,合理的に達成できる限り低く保たなければならない(ALARA),③線量当量限度:個人に対する線量当量は,ICRPがそれぞれの状況に応じて勧告する限度を超えてはならない,ということである。
 我が国においては,線量基準等の放射線防護基準を策定する際にはICRPの勧告を尊重することとし,放射線審議会が,その国内法令への取り入れについての検討を行い,これを踏まえた法令が施行されている。
 放射性同位元素等の取扱いに伴う安全性の確保については,「放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律」(放射線障害防止法)等に基づき許認可等の厳正な審査,立入検査,監督指導等所要の規制が行われている。
 放射性同位元素取扱事業所で発生する極低レベルの液体状及び気体状の放射性廃棄物については,必要に応じ適切な処理を施し,法令に定められた基準値を十分に下回ることを確認したのち,環境中に放出している。また,液体状及び固体状の放射性廃棄物のうち,各事業所で処理することが困難なものについては,一時,各事業所の保管廃棄設備に保管された後,(社)日本アイソトープ協会により,集荷・処理されている。


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