第7章 基礎・基盤研究等
1.基礎研究の動向

(3)理化学研究所における基礎研究

 理化学研究所においては,原子力関係の基礎研究として重イオン科学分野の研究を総合的に実施している。
 これまで,陽子からヘリウムイオンまでを加速できる160cmサイクロトロン及び陽子からウランまでのイオンを加速できる重イオン線型加速器による重イオンビームを用いて照射研究を推進しており,多くの成果をあげてきている。また,1980年度にリングサイクロトロン(後段加速器)の建設を開始し,1986年度末には,リングサイクトロン本体の調整試験を終え,ファーストビームの取り出しに成功した。その後,前段加速器として,1988年度末にAV型入射器を完成させた。また,照射実験設備等付帯設備の建設を進めている。これが完成すれば,従来の加速器では困難であった重イオン核反応機構の解明,新しい超重元素の生成等の研究をはじめ,物理,化学,工学,生物,医学等の幅広い分野の研究に有効に利用されることになる。また,1985年度からは,赤外レーザによるウラン同位体の分離・濃縮に関する原理実証研究を実施し,これまでに理研が独自に開発した方式により従来の分子法の壁を超える分離係数を得,分子法に新しい展望を開いた。


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